かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

小説連載って今更ながら大変なんですが、楽しいこともまた盛り沢山です。

2010-04-10 23:08:35 | Weblog
 異様に暖かかった今日は、とりあえず布団を干してみました。花粉も飛んでいないようですし、取り入れの時はそれなりにはたいておきましたので、今夜は安心してヌクヌクと眠りにつけることでしょう。いい夢が見られたらそれに越したことはないのですが、さて。

 連載小説、長々続いた第2章「悪夢の後継者」も今日で終わりです。もっとも、ここまで書いて思ったのですが、これは2章に分けるべきだったかもしれません。多分来年早々のコミトレには、加筆修正の上で新刊として出したいと思っているわけですが、その時にはこの章は分割など相当に手をいれることになりそうです。
 まあ先々のことはともかくとして、これでお話としては起承転結の「起」が終了、次の話に進めることになります。色々調べたりしておきたいことがありますし、時節柄飲み会の類も多く、夜の時間も潰れ勝ちなので、果たして予定通り来週続きをアップ出来るかちょっと心配しているのですが、なんとか切れることのないよう頑張りたいと思います。まあ、断片的には頭の中に浮かんではいますので、多分何とかなる、と思うのですが、それでなんとか第3章をこなしたとして、その次の展開をどう描いてクライマックスへの道を拓くか、という辺りが、実は一番不安です。やってみたいことは色々あるんですが、それまでにある程度話をふくらませないと、唐突に何の脈絡もなくやりたいことを描くわけにも行きませんし、と言って冗長に本筋でもない話を続けるわけにも行かず、連載というのは、そういうお話の流れをつかんで適度に制御するのに1冊書き下ろす時より遥かに気を使う必要がある、と最近富みに思うようになってきました。出来ればこの連載を通じて、そういう能力も鍛えていって、次のお話を書くときのタシにしたいところです。
 
 さて、来週からは、死夢羅博士が教頭先生を演じる南麻布学園初等部を舞台に、榊、鬼童、円光が悪ガキトリオとなって新・アッパレ4人組と暴れるハズなのですが、主人公麗夢ちゃんをどういう立場でこの『悪夢』に取り込むか、少しまだ迷っています。まあ選択肢はそれほど無く、今は2つの内どちらを捕るかで迷っているだけなのですが、その扱いはこの後の話の流れを大きく左右するので、慎重の上にも慎重に行きたいです。と言いつつ、いっそ先々のことなど考えずに、えいやあ!と話を進めて、その先のことはまたその時になってから考える、という行き当たりばったりも悪くないかも? とも思います。まあそんなことをしたら、なんでもっとちゃんと考えておかなかったのか、と未来の私から非難轟々となるかもしれませんが。

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02.悪夢の後継者 その6

2010-04-10 12:56:55 | 麗夢小説『夢の匣』
「でも……、でも、それじゃああの闇の皇帝はどうなの? あれは原日本人の信仰する神様じゃないの? それに夢守の民だって」
「あれはね麗夢ちゃん」
「あれは?」
「よくわかんなーい」
 まさに一点の濁りもない朗らかな皐月の答えに、麗夢の膝が一瞬がくっと力を失った。
「わ、わかんないって、それじゃあ答にならないじゃない!」
「まあそれはそうだけど、日本人だって八百万も神様を信仰してたじゃない。そのうちの一人だって思えば納得できない?」
「……皐月。神様は一人じゃなく、一柱」
「そ、一柱よ」
 琴音の指摘に、皐月がすまし顔で訂正した。
「そんなことより!」
「……神様の数え方は、大事」
 畳み掛けようとした麗夢の言葉を、琴音が静かに遮った。ぼそっとしたけして大きくはない声なのに、まるで何か特別の力が宿っているかのように場を圧することができる不思議な声だ。麗夢は気圧されている自分を意識しつつ、言葉を継いだ。
「わ、分かったわ。まだ納得出来ないところもあるけど……。それじゃあ答えて頂戴。復讐が目的じゃないなら、あなた達は何をしたいの?」
 すると、皐月、琴音、紫、星夜の4人が、一斉に麗夢を見つめた。
「私たちのやりたい事は、一言でいうとリセットよ」
「リセットって、どういう意味?」
「それはね……」
「誰だ! 廊下にパチンコ玉など撒きおったのは!」
 答えようとした皐月の言葉を、しわがれた怒声が切り裂いた。
「ヤバイ! シニガミだ!」
「逃げろ!」
 その声を聞いた途端、今までじっと4人の少女らの後ろに控えていた少年たちが、一斉に廊下に飛び出した。
「またお前たちか! いたずらばかりしおって! 今日こそ許さんぞ!」
 憤慨して腕を振り上げた一人の老教師が、驚きの余り声が出なくなった麗夢を見て言った。
「ん? 何だ、高等部の生徒が何故初等部の校舎にいるんだ?」
「教頭先生、早くしないと、榊君達、逃げちゃいますよ?」
 皐月がすまし顔で指摘すると、老教師は、そうだった、と我に帰ったように、再び少年たちを追って駆け出した。
「こら! 廊下を走っちゃいかん! 待たんか! 榊! 鬼童! 円光!」
 たちまち廊下を走り去り、階段に消えたその背中を見送って、麗夢は今度こそ自分はどうにかなってしまったんだ、と確信した。あの男が……、闇と恐怖と悪の権化が、なんで「教頭先生」なんて呼ばれているのだ? そして死神が追っていった少年たちの名前は? あまりの衝撃に思考がフリーズした麗夢に、皐月が言った。
「驚いた? もちろんソックリさんじゃないよ? あの3人も、もちろん名前が同じだけじゃない。麗夢ちゃんのよーく知ってる人たちだから」
 呆然とする麗夢の耳に、皐月の声が流れていく。そう言えば、なんとなく予感はあったのだ。あの顔立ち、目元やあごのラインに、青年2人と壮年1人のよく見知った男達の面影が。でも、これまでは理性がその直感を完全に否定していた。それが今、崩れ去ろうとしている。
「でもやっぱりルシフェルさんはすごいね。あの3人はちゃんと思った通り小学生になったのに、結局姿形は変えられなかったもん」
 ……姿形を、変える? 麗夢は、今初めて自分を見つめる少女たちに鳥肌が立つのを覚えた。
「でも麗夢ちゃんだってすごいよ。こんなに時間が立っているのに、まだ自分を見失わないんだから。ひょっとしたら、夢守の民には、ちょっとばかり抵抗力があるのかも知れないね」
 そうか、抵抗力が……、だからまだ、南麻布女学園の記憶が、榊、鬼童、円光が立派な大人でルシフェルが死神だった記憶が、頭に残っているのか。でも、それもそろそろ限界かもしれない……。
「それじゃあ、麗夢ちゃんはどうしようかな? 何になりたい? 私たちの同級生かな? 今ならリクエスト聞いてあげてもいいかも?」
 荒神谷皐月の話が聞こえてくる。聞いてはいけない。今すぐここを離れないと、取り返しの付かないことになる。麗夢の崩れかけの理性は、必死に赤信号を点滅させ、その足を動かそうと頑張った。だが、多分この校舎に入ったところから、麗夢の理性は絡み取られていたのであろう。いや、それを言うなら、あの古代史研究部の部室でこの4人と会った時からかもしれない。麗夢は、痺れたまままともな判断ができなくなりつつあることに、かつてない恐怖と戸惑いを覚えながら、荒神谷皐月の最後通牒を聞いた。
「何もないの? それじゃあ私の希望通りでいいね? まあ返事はどっちでも一緒だけど」
 荒神谷皐月が、ずっと手にしていた箱を改めて胸の前に掲げると、その蓋をずらした。するとたちまち白い煙が箱から沸き立つように流れ出し、初等部校舎4階を満たした。
「それじゃあ、おやすみなさい麗夢ちゃん。次会った時は、もーっと一杯遊びましょうね」
 白い煙に巻かれ、徐々に薄れて行く荒神谷皐月が、満面の笑顔でバイバイと手を振っている。麗夢は結局、その姿が煙に隠れるまで、意識を保つことができなかった。
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