かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

09 亀裂 その2

2009-07-05 11:10:50 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』


「やっぱりお祭りは浴衣じゃないとね」
 まずお姉さまが飛び込んだのは、駅に隣接した大きなデパート。その三階にある日本の民族衣装のお店だった。
 時ならぬ外国人の来店にお店の人は仰天していたが、私が日本語が出来ると判ると途端に愛想が良くなって、お姉さまの求めるままに、色んな柄の浴衣というその民族衣装を次々と奥から引っぱり出してきた。
 お姉さまは嬉々として、私と自分を着せ替え人形にしてその衣装をあてがっていく。
 結局取っ替え引っ替えした末、お姉さまは薄くぼけた赤い格子入りのピンク地に、帯という名の赤い幅広のベルトを締め、私には水色に白い水玉模様の入ったものを着せて、濃紺の帯を巻き付けてくれた。
 靴も脱いで、草履というサンダルをあてがわれる。
「どう?」
 お姉さまは恥ずかしがる私の肩を押し出し、店の入り口で所在なげに待っていた円光さんに聞いた。円光さんは私達が近づいてくるのに見とれていたのだろうか? お姉さまの声にようやく我に返ったように、しどろもどろになりながらもよく似合っているとほめてくれた。
 続いて再び駅に向かい、さっきとは違う、オレンジ色の電車に乗る。車内を見回すと、大勢の女の子が私達と同じ様な格好をして明るくはしゃいでいる。
 今度はほんの10分も乗らないうちに、目的地の駅に着いた。
 「桜之宮」と言うきれいな名前のその駅は、既に信じがたい大勢の人でごった返していた。
 蠢く無数の人の群にめまいを起こしかけたほどだ。
 まさに想像を絶する光景。
 さっきの電車の中の光景が、そのまま地平線まで続いているのではないか、と私は本気で疑った。
 その隙間無く並んだ人々が、今度は電車の中と違って皆一つの方向に向けて動いていく。
 見ているだけで気分が悪くなりそうなのに、お姉さまは私の手を引いてどんどんその激流の最中に乗り込んでいく。
 もうどこをどう歩いているのかなんて私には理解することなど到底不可能だった。
 途中、ずらりと並んだ屋台の前を通り抜けているうちに、お姉さまは綿菓子やトウモロコシと言った食べ物や、水と空気の入った大きなリンゴほどの大きさのゴム風船などを次々と屋台から手に入れてきては、私にあてがって笑いかけた。
 そうしてお姉さまは縦横無尽に私の手を引いて周り、私が気づいたときには、いつの間にか川縁の公園に立っていた。
 空はようやく暗くなってきていたが、公園には煌々と明かりが灯され、私の周りには相変わらず人が大勢いる。目の前の川にも大小さまざまな船が浮かび、目が痛くなるような派手な飾り付けをして、大勢の人を乗せていた。
 でも、少し開けた、緑多いその場所は、私に久々の落ち着きを与えてくれた。
「シェリー殿、少し顔色が悪いようだが、大事ないか?」
 気遣わしげに問いかけてくれた円光さんに、私はなんとか笑顔を作って答えた。
「ええ、大丈夫。ちょっと目が回っちゃって」
 するとお姉さまが言った。
「良かった、間に合って」
 何? と聞こうとした私の耳に、突然、空気を圧する爆発音が飛び込んできた。
 ひっと思わず息を呑んだ私の耳に、周り中の人の歓声が飛び込んでくる。同時に頭上が明るく輝き、思わず見上げた私の目に、巨大なオレンジの花が飛び込んできた。
 次の瞬間、また同じ爆発音が体を揺さぶった。
 さっきよりも左よりの空高く、今度は緑の花が開く。無数の火の粉が色あせながらゆるゆると落ちかかると、それを待っていたかのように次の爆発音が鳴り響き、違う色の花が空に広がる。
 その後は規則正しく音が空にこだまし、そのたびに大きさも色も異なる様々な花が空を焦がした。
 花火だ。
 花火はフランケンシュタイン公国でもお祭りの時によく打ち上げる。ただ私はまだ見たことがなく、音だけを楽しみ、その光景を想像していた。
 でもこの花火の巨大さはどうであろう。
 音一つとっても今まで聞いたことのない迫力で、赤青緑オレンジ黄色とめくるめく豊かな色彩や、空一面を覆い尽くすばかりな巨大さは、まさに言葉を失う迫力だ。
 気が付くと、お姉さまが私の肩を支えてくれていた。
 私は花火に圧倒されて足もとから崩れそうになっていたらしい。がくっと膝から力が抜けた瞬間を目ざとく見て取って、咄嗟に手を貸してくれたのだ。おかげで私は、安心してその夏の夜の夢の光景を、気絶することなく堪能することが出来た。
 それがいつまで続いたか、私には記憶がない。
 目の前の光景に呑み込まれた私には、時間なんてあっても無いのと同じだった。
 そのうちに花火は、最後のクライマックスを迎えていた。
 間髪を入れず続けざまに打ち上げられた花火が次々と炸裂する、絢爛豪華な狂乱の渦だった。
 その最後の一発が今開き、無数の火炎が名残惜しげに散りながら、白煙が満ちる夜の空をちらちらと落ちてくる。周囲の人々も、ほうっと誰ともなしに同時に溜息をついてしばし音と光を失った空を見上げ、やがてめいめいが動き出した。
「終わりましたな」
「ええ」
 私は、全てが完了した気怠い満足感を覚えつつ、円光さんのしみじみした声に答えた。
 でも、私の考えは甘かったらしい。私の肩を抱いていたお姉さまは、いきなりくるっと私の体を半回転させると、元気良く宣言した。
「なーに言ってるの! お楽しみはこれからよ!」
 ええーっ!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

またまた徹夜でカラオケに!

2009-07-04 05:05:42 | Weblog
 昨夜は6月いっぱいで退職された方と、7月1日付けで当職場に配属された方の歓送迎会を行い、2次会で例によってカラオケ屋さんに行って、結局徹夜で歌い通し、今(午前5時)ようやく帰宅いたしました。どうもこのところカラオケづいているようで、昨日から今日にかけてもたっぷりと歌うことが出来ました。残念ながら記憶がかなりあやふやなのですが、アニソン中心に私だけでも20曲は歌っていると思います。さすがに喉も疲れました。続きはゆっくり休んでから書こうと思います。明日の連載小説更新の準備もしなくちゃいけませんしね。




・・・というわけで、目が覚めたので昨夜歌った曲目一覧を追記します(笑)。
残念ながら順番まで正確に覚えていませんし、1,2曲抜けているかもしれませんが、ほぼ完全に網羅できた、と思います。

アニソン関連
Let'sフレッシュプリキュア!(フレッシュ プリキュア!OP)
ハリケンジャー参上! (忍風戦隊ハリケンジャー OP)
ガオレンジャー吼えろ! (百獣戦隊ガオレンジャー OP)
戦え!ポリマー (破裏拳ポリマーOP)
夢迷宮~光と闇のダンス~(夢使いOP)
ヒカリ(いぬかみっ! OP)
とまどいビターチューン(乃木坂春香の秘密 OP)
ひとさしゆびクワイエット! (乃木坂春香の秘密ED)
緋色の空 (灼眼のシャナ OP)
グロウアップ(学校の怪談 OP)
虚空の迷宮(MAZE☆爆熱時空 OP)
逆転イッパツマン(逆転イッパツマン OP)
シビビーン・ラプソディ(逆転イッパツマン ED)
冒険でしょでしょ? (涼宮ハルヒの憂鬱 OP)
NEXT LEVEL(仮面ライダーカブトOP)
スーパーきんぎょ(きんぎょ注意報! ED)
おジャ魔女メドレー1(おジャ魔女どれみOP/ED集)
あなたの一番になりたい(南央美・機動戦艦ナデシコ 劇中歌)
pastel pure(マリア様がみてる OP)
ふわふわ時間(けいおん! 劇中歌)
ウルトラマンガイア!
girls in trouble! DEKARANGER(特捜戦隊デカレンジャー ED)
GO! GO! トリトン(海のトリトン OP)
草原のマルコ(母をたずねて三千里 OP)
ロックリバーヘ(あらいぐまラスカル OP)
ハヤテのごとく!(ハヤテのごとく! OP)
ツインテールの魔法(Yes! プリキュア5 GoGo! 劇中歌)
君色思い(赤ずきんチャチャ OP)

アニソン以外
蝋人形の館(聖飢魔II)
恋のダイヤル6700(フィンガー5)
叫べ(RADWIMPS)

合計31曲。思っていたより多かった(汗)。
よくまあ歌ったものです。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日食の正しい観測方法について

2009-07-02 21:15:52 | Weblog
 とりあえず暴れ梅雨の大雨は一山越えたようですね。前線が南下したためなので、そう遠くないうちに前線が北上を開始、それが過ぎれば夏本番、という順番でしょう。四国の早明浦ダムは現在貯水率35%程度ですから、もう一雨二雨欲しいところ。こちらとしては大雨はごめんこうむりたいですが、水不足に悩むところのことを考えると、そうそう雨など降らないで、とも言えません。

 さて、三週間後の7月22日、日食というなかなか魅惑的な天体イベントが全国的に観察され、南の方では皆既日食が観測できるというということで、普段は鄙びた沖合いの島に大勢の観光客が押し寄せ、宿だけでは到底足らず、にわかにテントやら簡易トイレやらが設置され、生活用水が確保できるかどうかも真剣に悩む、なんていうような時ならぬ騒ぎになっているそうですが、国立天文台が、日食を観測する方法、と題して、やってはいけないことを写真入りで説明するページを公式サイトに公開しました。http://www.nao.ac.jp/phenomena/20090722/obs.html

 こうしてみると、さすがに直接太陽を見たり望遠鏡で見たり、なんてことはしませんが、昔々児童と呼ばれていた頃にあった部分日食の時は、色つき下敷きやすすをつけたガラスなどで観察していたような記憶があります。特に煤を付けたガラスは理科の教科書にも載っていたような気がするのですが、ありゃ、これは駄目だったのか、とちょっと驚いてしまいました。
 まあ結局は太陽の光エネルギーとそれを受け止める目の耐久力の関係ということで、観察時間も大きく影響する話なのでしょうが、たとえまぶしく見えなくても、赤外線はあまりさえぎらないような材質のものの場合、それで網膜を灼いてしまうことがあるのだそうですから、注意が必要です。

 その下に正しい観測方法が載っていますが、中でも気に入ったのが木漏れ日を見る方法。木漏れ日の光が全て欠けた太陽を象るところなどは実に興味深く、見られうものなら是非見てみたいです。7月22日の天気がどうなるか、普通なら夏休みが始まったばかりの安定した晴の日になるところなのでしょうが、ここ数年の異常気象とやらで果たして晴れた空が確保できるかどうかはそのときになってみないと判りません。願わくば、是非綺麗な青空の下で楽しめるよう、今から心地よい木漏れ日の射す樹を探しておいた方がよさそうですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マリみて新刊! ついでに週刊西洋絵画も

2009-07-01 22:00:15 | マリア様がみてる
 今日は天気予報がしっかり当たって、夕方から雨が降り出し、暗くなってからとんでもなく強い降りに変化してきました。しばらくして小康状態となりましたが、気象庁の予測を見る限り、今夜未明にもう一波ありそうです。真夜中なら雨音で目覚めるということもそう無いような気がしますが、雷でもなった日にはやっぱり目が覚めるかもしれませんね。新居に越して以来夜は比較的安眠が続いておりましたが、梅雨に入ってからこっち、雨音が意外に強く響き、そのために若干寝不足気味が続いています。こうなると、早く梅雨が明けてくれないか、と勝手なことの一つも言いたくなりますが、かつて過ごした香川県の水がめ早明浦ダムは、現在ようやく貯水率三割を超えたところで、夏を無事越すにはもっと雨が欲しいところです。うちはもういいから、四国の山にたっぷり水を落としていってもらいたいです。

 さて、今日は「マリア様がみてる」最新刊「リトルホラーズ」の発売日ということで、時間をやりくりして帰り道、本屋さんに立ち寄って参りました。前巻末尾に「了」と書いてあったのでてっきり完結か、と思い込んでおりましただけに、この発売はうれしい驚きでした。もっとも書き下ろし長編ではなく、これまでにもあった、既出の短編を書き下ろしでつなぐ形の短編集でしたので、この後いつまでマリみてを書き続けるのかは微妙なところです。出来れば祐巳のエピソードから始まったのですから、彼女の卒業までは話をつないで言って欲しいと思うのですが、果たしてどうなるでしょう。感想はまた例によって1週間ほどずらして書きたいと思いますが、途中の感想としては、「黄薔薇新姉妹、なかなかいい!」 ということで、書き記しておきましょう。

 本屋さんに寄ったとき、たまたま「西洋絵画の巨匠22 ブリューゲル」を見かけたので、ちょっと気になってぱらぱらめくっていたのですが、その内容に圧倒されて思わず買ってしまいました。そもそもブリューゲルという画家は知らなかったのですが、このシリーズの売りの原寸美術館なる一部原寸再現のページが、今回「バベルの塔」だったのが目を惹いたのでした。またゆっくりみて、感想を書こうと思います。でも、目を惹いただけあって「バベルの塔」は圧巻ですよ。必見の価値あり、と申せましょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする