鈴鹿市議会議員 中西だいすけの活動日誌

鈴鹿市議会議員として年齢も含め5期目のベテランになりました。日々の活動や感じたこと、議会での動きなどをつづります。

コロナ後を考える① ~財政面から

2021年04月05日 12時09分23秒 | Weblog

 少し前のブログで取り上げましたが、令和3年度予算について議案質疑を行い、1年間の鈴鹿市の収入となる歳入について大きな動きがあり、予算資料などでも簡易な説明はあったのですが押さえておきたいことと考え、あらためて問いました。そのことを踏まえながら、コロナ禍後の考えなどを書いていきます。

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■ 市税では、個人市民税と法人市民税、固定資産税を合わせ約17億円の大幅な減収が見込まれ、要因は新型コロナウィルス感染症の影響に加えて、個人市民税で納税義務者数を約3,000人減少、法人市民税は法人税割の税率引き下げの影響、固定資産税では地価の下落分の予想があるということでした。

 これらから言えることは、人口減少の影響が無視できなくなるのは目前に迫っているということです。次に掲載している資料は、学生インターンの受け入れの際、初日に使っているものの一部ですが、国立社会保障人口問題研究所が公表している将来人口推計と、2015年時点の個人市民税額をもとに、生産年齢人口の給与水準がそのままだったらどのようなことが考えられるかを、少し乱暴とは思いながらも取り上げたものです。

 ご覧いただくと、状況が今とそれほど変わらないと考えると、生産年齢人口の減少にともなって個人市民税の税収が大きく落ち込んでいくことがはっきりしていると思います。この4月から施行される高齢者雇用安定法の改正で、努力義務として70歳までの就業確保があり、その部分で税収があることは見込まれても、全体の人口減少の影響は避けられないでしょう。

 個人市民税で人口減少の影響を小さくするには、(1)人口を増やす、(2)一人あたりの収入が増える、の2つが選択肢です。

(1)の「人口を増やす」ためには、①出生数を増やす(自然増)、②市外からの移住者を増やす(社会増)が考えられ、実際には、2つを組み合わせる形で取り組むことになると思いますが、ここではシンプルに考えます。

 ①の出生数が増えるとして、生まれた子供が労働の場に出るには、仮に中学校卒業で働くとしても、どれだけ早くても15年かかることになり、自然増で増えるとしても、増え始めてから15年は生産年齢人口は少ないままで、人口減少の影響は避けられません。

 ②の市外からの移住者を増やすことについて、日本国内での人口移動は他の地域での人口減少と対になっていることは避けられませんし、外国からの移動に期待するのであれば、私たちと同じ権利や待遇を持つということが前提でなるでしょうし、そうでなければ文化の摩擦や軋みが大きな問題になるでしょう。

 ここで人口に関して、少し違った視点としてあるのは「交流人口」を増やすことでしょう。実際に居住する人を増やすということに直接つながることではないでしょうが、複数拠点で生活や活動を行っていく方や、観光・レジャーはもちろんスポーツ大会などを通じて、鈴鹿市に関係を持つ人を増やしていくことで、市内で消費して頂く方を増やすことで、市内産業の収益を増やし、そのような取組で人口減少に対応することも考えられると思います。

(2)の「一人あたりの収入が増える」ためには、国でも議論されているように最低賃金を引き上げることもあるでしょうが、1次から3次までのすべての産業で収益が上がることも必要なことは明らかです。ですが、産業構造が大きく変化することが予測され、日本国内であれば人口減少の影響もある中で、楽観的な予想のもとで「一人あたりの収入が増える」ことを期待することは、相当な覚悟がなければ難しいと考えます。

 これまで鈴鹿市は「ものづくりのまち」を標榜してきました。これまでは自動車産業を中心とした構成の中でその言葉が現実味をもっていたと思いますが、これから先の「ものづくり」とは何なのか、国任せではなく、自治体として真剣に取り組む必要に迫られていると考えています。

 「そんなわかりきったことを書いてどうする」と思われる方もいらっしゃるだろうと思います。あえて取り上げているのは、「知っている」や「わかっている」ではなく、危機感がどれだけあるのか、いま一度考えたほうが良いと思うからです。

 

■ 市の借金となる市債についてですが、国の財政が特例公債(赤字国債)の発行がなければ運営が非常に難しい状況をどう考えるかという視点も関係します。私は、国が今のような財政運営を続けることは、どこかで無理がきて持続的ではないだろうと考えています。

 市債ですが、公共施設の維持更新や建設、道路などのインフラの整備に関する普通債は、地方公共団体の判断の範囲で発行することができる一方で、市の支出で家計で言うところの生活費にあたる部分は発行できないことになっています。この辺りは、赤字国債を発行できる国と大きく違うところです。

 もうひとつは臨時財政対策債(臨財債)です。国からの地方交付税交付金が本来の算定上の金額より少なく自治体に配分される形になっているため、その差額分の範囲内で、自治体の生活費の部分にも充てられ、後年度に地方交付税に参入するとして、国が地方公共団体に発行認めているものです。

 鈴鹿市はこれまで、算定上の金額より少なく発行しながら、財政運営をしてきているのですが、令和3年度は前年より約11億円の発行増となっています。発行可能額全額で毎年の財政運営を行っていなかったことで、今回の対応ができていると考えられますが、この部分でも予断は許されないと考えています。ちなみに、現在の市債借り入れ残高は総額で479億6418万1千円となっていて、内訳は次のようになっています。「 普通債等 190億2303万5千円 + 臨財債 289億4114万6千円 」鈴鹿市の借金総額の約5分の3まで臨時財政対策債が積みあがっています。

 国からお金を持ってくるという表現をよく聞くところですが、そのことを否定するつもりはありませんが、補助金などの前に、臨財債の借入残高がこれだけの金額になっていることは、真剣に考えなければいけないことだと思います。このような地方と国の借り入れを合わせると約1200兆円となり、公債発行を除く税収が約60兆円という金額から考えると、大きな転換点があると考えるのが自然だと思います。

 

■ 市の貯金である各基金ですが、全体的に減少していて厳しくなっています。図は令和3年度当初予算資料からです。

 家計で言うところの普通貯金である財政調整基金は、リーマンショックや今回のコロナ禍、大きな災害などの際に重要なものであると同時に、年度間のお金の融通のためにも重要で、ある程度の金額がなければ予算編成に支障が出ます。残高については決算時に戻りがあるなどして、予算時の想定よりも多かったりするのですが、右肩下がりの状況になる可能性は非常に高いものです。令和2年度は9月の決算で額がはっきりしますし、令和3年度については令和4年の9月に確定してくることになります。

 財政調整基金に関して福井市での事例ですが、台風や雪などの自然災害でこの基金が底をつき、新年度の予算編成で職員給与をはじめとして大幅な支出カットが行われたことがありました。その後、危機的な状況は乗り越えられているようですが、財政再建計画を策定されています。このページの概要版を見て頂くとわかりやすく、そこで記述されていることは、鈴鹿市も他人事ではないと考えます。

※福井市財政再建計画(福井市ホームページより)

 次に特定目的基金があり、公共施設整備基金などを使い道が決められている市の貯金があります。この特定目的基金の残高は令和2年度に13億3699万4千円ありましたが、令和3年度予算時では中学校建設などの大きな建設があり、予算時点の残高は8億4933万3千円になっています。特にこの中の公共施設整備基金については大きく取り崩すことになっているため、今後の公共施設の維持修繕や更新を考えると非常に不安があります。

 公共施設やインフラに関しては、特定目的基金だけではなく財政調整基金を利用することもありますし、市債の発行も可能ですが、必要額を定めて手元に置いておかないと、将来に大きな不安を残すことになります。ですので、私は鈴鹿市にFМ(ファシリティマネジメント)基金を設置し、公共施設の維持修繕に遅滞が起こらないようにすることが必要ではないかと、一般質問で質問を行ったりしています。

 いわゆる公共施設マネジメントと言われる施策について、基金はもちろんですが全体の財政状況を踏まえて、これから鈴鹿市がどのように公共施設と向かい合うのか、それがわかりやすく記述されているものに、昨年4月に市議会全員協議会で報告されパブリックコメント経て、7月に公表された鈴鹿市公共建築物個別施設計画があります。

鈴鹿市公共建築物個別施設計画

 目を通して頂くと、私が不安を持っていることに共感頂けるかと思いますが、このような計画については、総論賛成各論反対という言葉が良く聞かれるところで、今後、計画で示されている内容について、各地域で議論が起こるのではと考えています。

 また、これまでの借金を返済するときに活用する基金として地方債減債基金があるのですが、平成29年度の残高29億2191万8千円から、令和3年予算時点で14億8041万9千円になっており、先行きが不透明な社会情勢の中で不安要素と考えます。

 

→ 以上のようなことから考えると、鈴鹿市では市長はもちろんですが議会も、現在の視点だけではなく、長期の視点を持って現在を評価して、選択すべき政策が何なのか、市民の皆さんも考えることを避けて通れないと考えます。

 そのためには、耳触りのいいこと、聞こえのいいことだけでなく、現実の厳しさを踏まえながら、部分だけでなく全体を俯瞰して考えること、その中で取捨選択を行うことも避けられないことだと考えます。福井市の計画のような議論と取り組みをする必要があると考えます。

 将来世代にどれだけの選択肢を残せるのか、引き算だけの選択肢にならないよう、鈴鹿市が持続的なまちであるように取り組むことが、今の大人、特に政治に関わる立場に問われていることだと思います。

コメント
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