前回の内容の中から、今回は公共施設の課題について考えたいと思います。
いわゆる公共施設マネジメントと言われる施策については、一般質問でさかのぼると2012年3月が取り上げはじめとなります。当時、このことに関心をもつ先輩議員もったことや、私自身も研修などを通じて重要な課題と認識して、まず東洋大で公開されていたソフトを用いて考えてはどうかという内容で質問しています。以降、重要な課題として一般質問だけではなく、常任委員会や議員勉強会、折に触れての意見交換などを通じて、行政とやり取りをしています。
※過去の一般質問
・2012年 3月「公共施設マネジメント白書づくり」、6月「公共施設白書の進捗」、12月「行革アクションプランについて」
・2013年 3月「新年度の課題を問う」、9月「進捗状況を問う」
・2014年 6月「まちの高齢化について」
・2015年 6月「公共施設マネジメントを問う」
・2016年 12月「学校施設維持更新の方向性について」
・2019年 12月「公共施設・インフラの維持更新について」
率直な自分の考えとして、ここまでの鈴鹿市の施策展開の中で、公共施設の維持修繕や更新に関する余地や選択肢は狭まっています。それは、市長の進める政策に係る事業費や、主に民生費での需要の増加によるもので、民意の反映の結果でもあります。例の一つとして、2015年から稼働されている第2学校給食センター(中学校給食)があるのですが、建設などの初期投資として約27億2千万円、1年あたりの運用費として約2億3千万円が支出されています。10年間運用と考えて約50億円、20年運用と考えて約74億円を投入することになります。学校体育館を全面改築するとだいたい3~5億円、学校全体であると約30億円強と考えると、金額との対比で考えて頂けるのではないでしょうか。
また公共施設に関係することとしては、市立体育館と市民会館の大規模修繕があったのですが、これらは長寿命化改修だったので、今から25年先を考えるとそれぞれの施設について、その時点で必要なのかどうかの議論は避けられないですし、それ以外にも文化会館や考古博物館、図書館の更新が可能かどうか、市役所本庁舎や第1学校給食センター(小学校)と第2学校給食センター(中学校)について大規模改修が想定されます。
そう考えると、特定目的基金の公共施設施設整備基金に20~30億円程度積み立てておかなければ、20年後の選択肢はほぼない状況になると考えられます。しかし、令和3年度予算での基金の状況と、途切れることのない学校施設の改修や、公民館などの維持修繕などの課題を考えると、基金を積み立てることは非常に難しいと考えます。財政調整基金にうまく積み立てができなければ、さらに状況は厳しくなるでしょう。
そこでもう一度ご覧いただきたいのが、昨年4月に市議会全員協議会で報告されパブリックコメント経て、7月に公表された鈴鹿市公共建築物個別施設計画です。
いろいろと気になる点があるかと思いますが、今年度に気がかりな点は、白子中学校、千代崎中学校、白鳥中学校の長寿命化対策がどのような形で進んでいくかということです。3校について、耐震補強はすでに終わっている校舎なのですが、年度末に対象となる校舎の鉄筋コンクリートから一部を取り出し、老朽化の度合いを調査しています。その結果によって、既存校舎をリフォームするような形になるのか、新しく建築したほうが良いのかなどの方針が検討されて、令和4年に向けて長寿命化事業が進められることになります。ただ、神戸・平田野・大木の3校のような全面改築はないという前提です。
ここでこれからの鈴鹿市の公共施設に関する取り組みで重要な点が、はっきりと浮かび上がっていると考えます。それは「合意形成」への取組です。新しくなることを期待する保護者の方々や地域の方々が、市の判断をどう考えるのか、また本当に納得して頂けるのか、古い校舎を構造を利用するとしても、今から50年近く前の構造ではなく現在にあった形にできるのか、どのような形が良いのか合意形成するために十分な時間を取って取り組むのか、計画にあることとして進めれば、以降の取組に禍根や課題を残すことになると危惧しますし、だからといって、その場の空気で変わる取り組みでは話にならないところで、現市政の姿勢が重く問われるところと考えます。
また、学校施設に関しては特に、「鈴鹿市学校施設長寿命化計画」が先だって策定されています。計画期間は2020年から32年間とされていますが、大人だけの話にせず、実際にそこで過ごすことになる児童や生徒、子どもの声を聴くこと、参画機会を確保するかということも問われる部分でしょう。私は子どもたちについて、十分な参画機会を取ったうえで学校改修に取り組むべきと考えます。
ここまでをまとめると、学校施設の維持修繕だけでも大きな課題であり、そこに25年先までを考えに入れると、市立体育館と市民会館をどうするのか、文化会館や考古博物館はどうするのか、図書館の更新はどうするのか、市役所本庁舎や第1学校給食センター(小学校)と第2学校給食センター(中学校)についての大規模改修など、ほぼ同時期に議論と判断を求められるものが出てくることに対して、「子どもから大人までの参画の上で議論を行い、合意形成に取り組む必要がある。」、「なにかを残す(つくる)のであれば、ビルドアンドスクラップで、なにかを整理する必要がある。」ということになるでしょうか。
こう書いてくると、どうしても暗い部分ばかりが目につきがちですが、考え方や見方を少し変えると、逆に次の時代に向けて可能性も含んでいると考えています。以下に端的に書きますが、実際はそれぞれにもっと広い事案が関わっているとお考えください。
ひとつは、施設を複合化する際などにPPPと略される公民連携の取り組みを進めることで、行政だけで物事を進めるのではなく、民間を私企業だけではなく広くとらえて、利用する人にとって価値の高い施設にすることです。公民連携の取り組みについて、民間と言うとすぐに私企業とつなげてアレルギー反応のように否定する方々もいらっしゃいますが、そうではなくより良い形に進むよう、その方々の視点を持って事業のチェックを行えばよいのではないかと思いますし、このような取り組みを進めながら行政側にも知見やノウハウを蓄積することで、それが他の事業にも応用されていくと思います。単にコストカットのために民間を使うのではなく、同じコストでもさらに良いサービスが市民のみなさんが享受できるほうがよいのではないでしょうか。
もうひとつは、公共施設は人が集まるものだということを考えると、施設の総量を減らす検討の過程で、機能を集約しながら、より災害リスクの低い土地に公共施設を配置することで、時間はかかるでしょうが、次の時代にあわせて住みやすい街になるよう、住民の方が徐々に住み替えなどを行うことで、まちの形が変わるようにすることが考えられるということです。
ただ、これらの議論をするためには、いわゆる成功事例としての他自治体の取り組みについて、表面的な手法だけをまねたりするのではなく、それを参考にしながら真剣に議論を重ねることと、そこに子どもから大人まで多様な主体が参画する合意形成が合わさることが、鈴鹿市にとって重要なことだと考えています。
公共施設に関係して行政担当課などで話していることはいろいろとあるのですが、老朽化の進む施設を利用している学童保育について、学校施設への複合化とあわせて考え方の転換も議論できる場を、関係する地域ではじめていったほうがいいのではないか、地域の方とコミュニケーションをとったほうがいいのではないかということがあります。
また、学校施設の老朽化に伴った校舎改修や改築にあたって三重県産の木材を活用できないか、内装に無垢材を用いて断熱とあわせた改修はどうか、改築が必要な校舎に関して個別の設計とするのではなく、木材を活用することを前提に設計を統一したものにして、資材調達も効率的にできるようにしてはどうかなどと話してきています。人事異動がありそのようなコミュニケーションも、またスタートからはじめないといけないことが残念な部分です。
鈴鹿市では今年から、これまで「政策経営部 行政経営課」という部署に技術系職員を配置して公共施設マネジメントを推進していたのですが、その部署を解体して「政策経営部 総合政策課」で公共施設等総合管理計画を担当し、「都市整備部 公共施設政策課」で公共施設個別施設計画を担当する形で政策を進めていくことになりました。個人的には、他の自治体での取り組みでも見られるよう公共施設に関しては一元化して、部まではいかなくても室という形で、資産活用などの視点も柔軟に取り入れながら進められるようにしたほうが良かったのではないかと考えています。
またこれまでは市議会では、総務委員会で公共施設マネジメント全体を取り扱う形だったものが、現時点で見えている形では、総務委員会と産業建設委員会にわかれる形になっています。また、学校施設の改修については教育委員会の事案ですので、文教環境委員会が所管の委員会となります。このように、公共施設の課題は複数の委員会にまたがることになりますから、政策として一貫性をもってチェックや議論ができる特別委員会の設置も視野に入るのではと考えています。