Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

グバイドゥーリナ&坂本龍一

2010年04月14日 | 音楽
 佐渡裕(さどゆたか)指揮の兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオーケストラ)の東京公演。地元の神戸での定期演奏会は3日公演で、ほとんど満席状態らしい。すごい人気だ。一度きいてみたいと思っていたが、その機会が訪れた。プログラムも意欲的。
(1)グバイドゥーリナ:樹影にて(箏:沢井一恵)
(2)プロコフィエフ:バレエ組曲「ロミオとジュリエット」より抜粋
(3)坂本龍一:箏とオーケストラのための協奏曲(箏:沢井一恵)

 グバイドゥーリナの曲は1998年のN響委嘱作品とのこと。翌年、沢井一恵の箏独奏、デュトワ指揮N響によって初演され、アメリカ・ツァーにも持って行かれたそうだ。箏は、十三絃箏、十七絃箏、ツェン(中国箏で二十一絃)の三面を使う。
 独奏は、激しく、攻撃的でさえある。後半に出てくるコントラバスの持続音に乗ったツェンや十七絃箏のカデンツァなど、息を呑むようだ。
 オーケストラの弦楽器群は二分され、一方は通常のピッチだが、他方は4分の1音低く調弦されているとのこと。その結果、独特の浮遊感が生まれる。またグリッサンドが、まるで電子音楽のように、長い弧線を描いたりする。
 総体的に、いかにも最近のグバイドゥーリナらしく、曲の潜在的な可能性を描き尽くそうとする気迫のこもった音楽。

 次のプロコフィエフをきいて、私はこのコンビの人気のわけが分かる気がした。冒頭の「騎士たちの踊り」からして熱い音が噴出してくる。ダイナミックな音楽作りと奔放なドライブ感はこの指揮者の持ち味だが、それに加えて、在京のオーケストラを振ったときには感じられない、人間性むき出しの本音の音楽がある。それが地元の人々をひきつけるのだろう。
 このオーケストラは世界各地でオーディションをおこなって若い人材を集めているというが、たしかに外国人が多い。それがよいのかもしれない。日本人にはない体温の高さが伝播しているように感じた。

 坂本龍一の曲は新作。4部に分かれていて、それぞれ冬、春、夏、秋を表している。
 冬は、弦楽器群の最弱音のハーモニーに乗って、ティンパニィの皮をブラシでこする音とゴングの両面を柔らかいマレットで打つ音がリズムをきざみ、ヴィブラフォーンのトレモロがかぶさる。その静寂の世界を背景に、箏の点描的な音形が続く。
 春と夏は、耳に快い音楽。ネイチャー映像のBGMのような感じ。秋は、詠嘆調のコラールが繰り返される。これはいかにもアルヴォ・ペルト風の音楽。
 坂本龍一は私と同世代なので、問題意識を共有する音楽を期待したが、ひらりとかわされてしまった。
(2010.4.13.東京オペラシティ)
コメント
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