Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

沼尻竜典&日本フィル

2011年06月18日 | 音楽
 原発事故の影響で来日中止の演奏家が続出しているが、日本フィルの首席指揮者ラザレフは、腰の手術を受けたため。代役は沼尻竜典さん。

 1曲目はストラヴィンスキーの交響的幻想曲「花火」。初期の習作のような曲で、めったに演奏されないが、最近聴いた記憶がある。一夜明けて調べてみたら、2009年6月に小泉和裕さん指揮の都響で聴いていた。花火がポンポン上がるような曲。都響のときはもっと乾いた音がしたが、今回はちょっと湿っていた。

 2曲目はチャイコフスキーの「ピアノと管弦楽のための幻想曲」。これは面白い曲だ。2楽章構成。第1楽章は提示部が終わるといきなりカデンツァになる。山あり谷ありの長大なピアノ独奏だ。これが終わると、いきなり再現部。こういう曲は聴いたことがない。第2楽章は前半が緩徐楽章。映画音楽にも使えそうな美しい音楽だ。後半がフィナーレ。終わりそうで終わらないコーダが、演奏者を奮い立たせる。

 ピアノ独奏は小川典子さん。知的で実力があり、華もあるこのピアニストの魅力全開の演奏だった。

 3曲目はショスタコーヴィチの交響曲第10番。沼尻さんの指揮に求心力があり、オーケストラをよく引っ張っていった。日本フィルにもこの曲に真正面から取り組もうとする真摯さがあった。

 事前にWikipediaの解説を読んだら、作曲家の吉松隆さんがこの曲とリストの「ファウスト交響曲」との関連を指摘しているという記述があった。そこで同氏のホームページを見ると、「ショスタコーヴィチ/交響曲第10番に仕掛けられた暗号」という論考があった。譜例付きの説明には目からうろこが落ちる思いだった。

 同ホームページには『「ショスタコーヴィチの証言」は偽書的「聖書」である』という論考もあったので、今日読んでみた。これは、今まで読んだなかで、「証言」の核心に触れた唯一の論考ではないかと思った。

 「証言」は偽書であるというのが定説だが、それで済ますわけにはいかない何かがあると思っていた。あるいは、仮に偽書だとしても、ショスタコーヴィチの作品の本質を言い当てた(と思われる)ヴォルコフという人物は何者だろうと思っていた。そういうモヤモヤが解消した。わたしなどが下手に要約するよりも、「証言」に興味をお持ちで、まだこれを読んでいないかたには、ぜひ一読をお勧めしたい。
(2011.6.17.サントリーホール)
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