Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パーヴォ・ヤルヴィ/N響

2021年09月12日 | 音楽
 リニューアルされたN響Cプロ。その第一回となる9月定期はパーヴォ・ヤルヴィの指揮でバルトークの組曲「中国の不思議な役人」と「管弦楽のための協奏曲」が演奏された。

 NHKホールが改修中なので、東京芸術劇場で開催されたが、音が飽和状態になりやすい同劇場が、N響の音の粒子で満たされ、その一粒々々が目に見えるようだった。それは壮観といってもいいほどだ。とくに音がぎっしり詰まった「中国の不思議な役人」は、まるで精密機械が超高速で安定稼働を続ける光景を見るような演奏だった。

 一方、「管弦楽のための協奏曲」は「中国の不思議な役人」とくらべると音の数が少ないので、音と音との間が透けて見えるような感覚だったが、それぞれの音が拮抗し、たしかな輪郭を備えた音たちがバランスをとって存在するような演奏だった。

 パーヴォ・ヤルヴィがN響で成し遂げた成果は、驚くべき水準だ。首席指揮者としての最後のシーズンを迎えたパーヴォは、読響でのカンブルランがそうであったように、最高の状態で任期を終えようとしている。今回の演奏は末永く記憶に残りそうだ。

 さて、リニューアルされたCプロだが、初めてそれを体験した感想はどうだったか。まずリニューアルの内容をおさらいすると、(1)休憩なしの60~80分の公演、(2)1日目(金曜夜の公演)の開演時間の夜7時半への繰り下げ、(3)開演前の約15分のミニコンサートの開催の三本柱となっている。

 「休憩なしの60~80分の公演」だが、これは意外に疲れるものだと思った。今回は「中国の不思議な役人」(組曲版)が約20分、「管弦楽のための協奏曲」が約40分なので、演奏時間は約60分だ。それをじっと息を詰めて聴くと、終演後は思いがけず疲労感が残った。演奏会には休憩が必要な要素らしい。

 次に「開演前の約15分のミニコンサート」だが、今回はブラームスのクラリネット五重奏曲から第2楽章が演奏された。秋の気配にふさわしい選曲だが(そして演奏もよかったが)、抜粋演奏ではやはり物足りない。また、たとえ抜粋演奏でなくても、ミニコンサートがショート・プログラムの本公演の補てんになるとは思えなかった。

 「1日目(金曜夜の公演)の開演時間の夜7時半への繰り下げ」は、たしかに一定のニーズがあるだろう。それをふくめて、リニューアル全般への評判はどうなのだろう。たぶんN響事務局には多くの声が届いていると思う。多様な意見があるだろう。それらに丹念に耳を傾けてほしい。
(2021.9.11.東京芸術劇場)
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