Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

沖澤のどか/京響

2023年09月25日 | 音楽
 今年4月に京都市交響楽団の常任指揮者に就任した沖澤のどか。さっそく東京でのお披露目公演が開催された。1曲目はベートーヴェンの交響曲第4番。なんの衒いもなく、自分の中の自然なベートーヴェンを演奏した感がある。肩肘張らずに、音楽的に充実していることは、沖澤のどかの実力の証明だろう。

 だが、今まで聴いてきた読響や日本フィルとの演奏にくらべると、音色の魅力に欠けることは言っておかなければならない。モノトーンで単調な音色だった。加えて、読響や日本フィルのときに聴かせた微妙なテンポの揺れや細かいニュアンスは(それらの点は沖澤のどかがアシスタントを務めたキリル・ペトレンコ譲りのように思えた)、今回は影をひそめた。京響との呼吸はまだ合っていないのかもしれない。それは仕方がない。むしろこれから期待すべきことだろう。

 話が脱線するが、京響は広上淳一の長期政権のもとで黄金時代を築いた。それは賞賛すべきことだが、後を託される指揮者は大変だろう。前任者がダメだった場合のほうがやりやすいだろう。なので、普通なら、沖澤のどかには大きなプレッシャーがかかると思うが、今回の演奏を聴くかぎりでは、自然体で臨んでいるように見える。精神力が強いのだろう。

 2曲目はギヨーム・コネソン(1970‐)の「コスミック・トリロジー」。「スーパーノヴァ(超新星)」(1997)、「暗黒時代の一条の光」(2005)、「アレフ」(2007)の3曲からなる。どの曲もカラフルな色彩感に満ちた曲だ。ベートーヴェンから一挙に照度が上がったような感覚だ。全体は宇宙の始原を描く。変な感想だが、ホルストの「惑星」は昭和の時代の曲だったのだなと思う。それが21世紀にアップデートされたようだ。

 「スーパーノヴァ(超新星)」は、ゆったりした導入部とアレグロ。「暗黒時代の一条の光」は緩徐楽章(多少長く感じた)。「アレフ」は歓喜のダンス音楽。全体を通してエンターテインメント性にとんだ楽しい曲だ。「スーパーノヴァ(超新星)」と「アレフ」では変拍子で盛り上がる部分にストラヴィンスキーの「春の祭典」からの影響を感じる(とくに「生贄の踊り」を)。案外「春の祭典」は現代のエンターテインメント性のルーツかもしれない。沖澤のどかはオーケストラを鮮やかに鳴らした。

 上述したように、コネソンは1970年生まれだ。日本人の作曲家では、望月京(1969‐)や藤倉大(1977‐)と同世代だ。3人とも過度に刺激的な音を使わずに、聴きやすい音でエンターテインメント性のある音楽を書く。世界的な傾向だろうか。その上でコネソンはダイナミックな盛り上げ方で頭一つ抜きんでているかもしれない。
(2023.9.24.サントリーホール)
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