Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

山田和樹/N響

2024年11月11日 | 音楽
 山田和樹が指揮するN響定期Aプロ。1曲目はルーセルの「バッカスとアリアーヌ」第1組曲。第2組曲は時々演奏会で取り上げられるが、第1組曲は珍しい。華やかで躍動的な音楽から始まる。演奏会のオープニングにふさわしい。その後も舞台上で生起するバレエの動きを彷彿とさせる音楽が続く。最後は静かに終わる。それは次の曲につなげる効果がある。その意味でも、演奏会の1曲目にふさわしい。

 山田和樹の明るくポジティブなキャラクターが全開した演奏だ。だがオーケストラがトゥッティで咆哮するときに、音が濁ることが気になった。それを澄んだ音で鳴らしてくれると、演奏が一段とレベルアップするのだが。

 2曲目はバルトークのピアノ協奏曲第3番。ピアノ独奏はフランチェスコ・ピエモンテージ。冒頭のピアノの音がクリアーに聴こえた。自分の音をもつピアニストだ。その後も一貫して音のイメージは変わらない。また同時に他のピアニストにくらべて音が1割か2割か大きめなことに気が付いた。ヴァイオリニストにもそういうタイプの人がいる。ピアニストにもいるのかと思った。

 オーケストラは、第2楽章の静謐な音楽で、神経の行き届いた演奏を聴かせた。だが1曲目のルーセルと同様に、両端楽章のトゥッティで鳴らす部分に濁りが混じる。それが気になった。なおピエモンテージはアンコールにシューベルトの即興曲作品90‐3を弾いた。リストのように甘い演奏だった。

 プログラム後半はまずラヴェルの「優雅で感傷的なワルツ」から。繊細な音にハッとする。羽毛のように優しい音だ。その音で音楽がしっかり構築される。1曲目と2曲目で感じた音の濁りは皆無だ。じっくり耳を傾けると、「マ・メール・ロワ」や「ラ・ヴァルス」の音楽が聴こえる。この曲はそういう曲だったのかと。

 最後はドビュッシーの「イベリア」。「優雅で感傷的なワルツ」から一転して、くっきりと輪郭をもった音だ。その対照が鮮やかだ。比喩的にいえば、ソフトフォーカスの「優雅で感傷的なワルツ」からピントが鮮明に合った「イベリア」への転換。いうまでもなく「イベリア」でも音の濁りはなかった。部分的には、第2部「夜のかおり」から第3部「祭りの朝」への移行部分で鮮やかなイメージが目に浮かんだ。

 N響恒例だが、カーテンコールのときに楽員から山田和樹に花束が贈られた。最近気づくのだが、以前は女性楽員が花束を贈っていたが、今は男性楽員が贈る。山田和樹はそんなことはないだろうが、有名指揮者の中には不心得者がいるので、わたしは大賛成だ。
(2024.11.10.NHKホール)
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