Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ウクライナの作曲家 シルヴェストロフ

2022年03月19日 | 音楽
 ロシアのウクライナ侵攻以降、ウクライナの作曲家ヴァレンティン・シルヴェストロフValentin Silvestrov(1937‐)の消息が気になっていた。わたしが情報を得る手立てはシルヴェストロフ自身のFacebookしかないので、毎日覗いていたが、更新されない日々が続いた。

 やっと3月11日に更新された。3月10日にキーウ(キエフ)からベルリンに着いたとのこと。3日以上かかったそうだ。84歳の高齢なので疲れただろう。Facebookにはベルリンの室内でピアノを弾く動画がアップされた。ベルリンに逃れる途中、バスの中や車の中で、また国境で長時間待たされるあいだに、シルヴェストロフの頭の中では平和で穏やかな音楽が鳴っていたそうだ。動画はその音楽を弾く姿だった。

 シルヴェストロフといっても、日本ではあまり馴染みがないかもしれない。グバイドゥーリナ(1931‐)、シュニトケ(1934‐98)、ペルト(1935‐)などと同世代の作曲家だ。若いころは前衛的な作風のためにソ連作曲家同盟から除名されたりした。後に調性的な要素を導入して、抒情的・瞑想的な音楽を書くようになった(※1)。

 シルヴェストロフは2017年に来日したことがある。武蔵野市民文化会館で80歳記念ガラ・コンサートを開催した。わたしはそのコンサートがあることを知っていたが、会場が遠いので、行かなかった。いま思えば、貴重な機会だったので、行けばよかった。

 来日した折に音楽ジャーナリストの林田直樹氏がおこなったインタビューがMikiki(クラシック、ロック、ジャズなどの音楽情報サイト)に掲載されている(※2)。そのインタビューでシルヴェストロフはこう語っている。

 「私にとっては6番の交響曲がピークです。4番以降はわりとそうなのですが、5巻からなる本をぎゅっと1巻に凝縮したような感じかもしれません。
 私の交響曲はショスタコーヴィチやプロコフィエフと違って、ポスト・シンフォニー、つまり交響曲の後に来るもの。発展しつくしたジャンルとしての交響曲の後に来るもの。交響音楽のコーダのようなものかもしれません。」

 ハイドン以降、ベートーヴェン、マーラー、ショスタコーヴィチと続いた交響音楽のコーダという表現は、シルヴェストロフの音楽を的確に言い表しているように思う。交響曲第6番の音源は複数存在するが、YouTubeでゲルギエフ指揮マリンスキー劇場管弦楽団のライブ録音を発見した(※3)。皮肉なことにプーチンの盟友・ゲルギエフの指揮だ。演奏の集中力と繊細さがすごい。

(※1)エレーヌ・グリモーが弾くバガテル第3番(YouTube)
(※2)シルヴェストロフのインタビュー記事
(※3)ゲルギエフが指揮する交響曲第6番(YouTube)
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