Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ブルックナー随想(1):ザンクト・フローリアン訪問記

2025年01月09日 | 音楽
 2024年はブルックナー(1824‐1896)の生誕200年だった。1年遅れだが、ブルックナーの随想を。まずはブルックナーの聖地ザンクト・フローリアンの訪問記から。

 ザンクト・フローリアンを訪れたのは2015年8月のことだ。ザルツブルク音楽祭に出かけたついでに訪れた。ザルツブルクから電車に乗ってリンツまで約1時間。リンツからバスに乗って約30分でザンクト・フローリアンに着いた。

 リンツを出たバスはしばらく市内を走る。なんの変哲もない地方都市だ。20分くらいたつと風景が変わる。のどかな農村地帯だ。すると間もなくザンクト・フローリアン。小さい村だ。ガストホーフが何軒かある。テラスで男たちがビールかワインを飲んでいる。のんびりした光景だ。

 ブルックナーがいた修道院(写真↑。Wikipediaより)は村の中心にある。小さい村には似つかわしくない威容を誇る。修道院に入るとすぐにレストランがある。ちょうどお昼時だったので食事をとった。古色蒼然としたレストランだ。ブルックナーもこのレストランで食事をとったり、ビールを飲んだりしたのだろうか。

 食事を終えて奥に行くと礼拝堂がある。オルガン奏者が曲をさらっている。じっと耳を傾けた。ブルックナーが弾いたオルガンの音だ。至福の時とはこのような時をいう。頭の中が空になった。だれかに声をかけられた。振り返ると、年配の女性がいた。「申し訳ないが、これからオルガン・コンサートがある」と。謝ってチケットを買った。年配の女性は笑顔を見せた。何人かの聴衆が集まった。プログラムにはブルックナーの曲は入っていなかった。なぜだろう。ハッと気が付いた。ブルックナーはオルガン曲をほとんど残していないからだ。

 コンサートが終わってバスでリンツに戻った。まだ時間が早い。欲が出て、ブルックナーの生地アンスフェルデンに行ってみようと思った。駅の構内の路線図を見ると、アンスフェルデンという駅がある。インフォメーションで尋ねると、電車が出るところだ。急いで飛び乗った。アンスフェルデンは10分程度で着いた。駅前には何もない。ザンクト・フローリアン以上に田舎のようだ。

 アンスフェルデンとザンクト・フローリアンから見ると、リンツは都会だ。そしてウィーンは国際都市だ。ブルックナーがザンクト・フローリアンからリンツへ、そしてウィーンへと進出したときには、どれほど緊張したことか。ブルックナーはウィーンに移ってからも、折に触れてザンクト・フローリアンの修道院を訪れた。その際にはオルガンを弾いた。ブルックナーはザンクト・フローリアンにいると安心できたのだろう。
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