平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

それでも、生きていく~満島ひかり、すごい女優さんが現れたものである

2011年07月09日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 双葉役の満島ひかりさんがすごい。
 映画「川の底からこんにちは」で、独特の雰囲気を出せる女優さん(以前はFolder5というエイベックスのアイドルグループのメンバーだった)だなと思っていたが、それがこの作品で上手く活かされている。
 柄本明さんも瑛太さんも見事だったが、彼女の演技に魅入られてしまう。

 双葉というのは難しい役である。
 深見達彦(柄本明)、洋貴(瑛太)の痛み・苦悩も、加害者の兄を持つ人間として理解できる。申し訳ないと思える。
 一方で、自分たちは兄の起こしたことで中傷被害を受けているが、それは兄のしたことで自分たちには関係ないことと、事件を少し引いて見ることも出来る。
 また、兄への憎しみと愛情もある。
 洋貴たちや自分たち家族をどん底に陥れた憎むべき兄だが、兄への愛情も残っている。
 双葉はそんな相反する心の葛藤を抱えている。
 非常に不安定。状況によってどちらにでも傾いてしまう。
 今回のラストは、お葬式で姿を見て、兄への愛情が噴き出してしまった。
 歩道橋で洋貴の足に絡みついて「お兄ちゃん、逃げて!」と叫ぶ。

 洋貴との会話のやりとりも独特の距離感、ズレ方があって、非常に見応えがある。
 洋貴は少し心を病んでいる感じだ。
 箱からアダルトビデオが出て来た時のリアクションは「15年延滞したら(延滞料金は)どれくらいになるんだろう」。普通は死んだ妹のことを思い出したり、双葉に見られて恥ずかしいと思ったりするはず。
 おにぎりのことで双葉が「シャケがいい」と言い出すと、「すみません。シャケに気づかなくて」と返す。
 ファミレスで双葉が「タンドリーチキン」を頼むと、「タンドリーとか好きなんですか?」と尋ね、双葉が同じ系列のファミレスでバイトしていたことを知ると、「その店もここと同じように空いているんですか?」と尋ねる。
 洋貴はリアクションが微妙にずれている。
 そのズレたせりふに双葉はせりふと表情で、独特の距離感をもって返す。
 これを下手な女優さんがやったら、あの雰囲気は生まれない。
 <距離感><雰囲気>。
 非常に抽象的な言葉だが、こういう言葉でしか、あのやりとりを表現できない。

 満島ひかり。すごい女優さんが現れたものである。


コメント (2)
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