平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

海がきこえる~思春期の心の嵐

2011年07月21日 | コミック・アニメ・特撮
 この作品、 杜埼の視点で描かれているから、ヒロイン・里伽子の気持ちが伝わりにくいんですよね。
 高知に自分の居場所を見出せない孤独、父親のこと、見栄、プライド、恋愛かどうかよくわからない杜崎に対する気持ち。
 落ち込んだり、イライラしたり、悲しかったり。
 実は里伽子の心の中には、思春期のフクザツな嵐が吹きまくっている。
 その渦巻く嵐が里伽子を輝かせ、杜崎や松野は、その輝きに魅きつけられている。

 杜崎と里伽子の距離感が面白い。
 里伽子は杜崎を、唯一<自分を受け止めてくれる存在>だと考えている。
 だから彼にわがままを言い、甘えてしまう。
 しかし、プライドの高さゆえか、一歩踏み出して正直な気持ちをぶつけることが出来ない。
 一方、杜崎も里伽子のことが気になっているが、友人・松野のことなどがあり、距離を縮められない。

 そんなふたりが一歩踏み出すのには時間が必要だった。大人になる必要があった。
 思春期の心の中の嵐はやがて収まる。
 あの時代を客観的に見られる様になる。
 あの時、見えなかったことが見えて来る。
 終盤の同窓会での居酒屋のシーンは、そういうシーンだ。

 見事な青春映画である。
 フツーの青春映画だと、主人公とヒロインはすぐに理解し合い、安易にハッピーエンドになったりするのだが、それがない。
 杜崎たちが大人になる時間を置いた所がいい。
 通常は劇的に盛り上げようとして、主人公はヒロインのもとに走ったりするのだが、そのあざとさがなくて、それがリアル。
 まあ、ラストは吉祥寺の駅で杜崎は少し走りますが。

 それともうひとつの主人公。
 四国・高知の風景。
 アニメの背景で描かれると現実とは違う雰囲気を醸し出す。
 絵画を見ている様な癒される感じ。
 里伽子たちの心の嵐を、風景がしっかり受け止めている様な印象を受ける。

 原作は氷室冴子。
 里伽子たちの気持ちが氷室先生の筆でどの様に描かれているか楽しみだ。
 ぜひ原作を読んでみたい。


コメント (4)
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