アニメ『乱歩奇譚』
江戸川乱歩の原作を上手くひねっていますね。
たとえば、『人間椅子』。
以下、ネタバレ。
原作の『人間椅子』は、美女の椅子になれたらどんなに素晴らしいだろう、という妄想・願望を綴ったものだが、アニメ『乱歩奇譚』では逆にしている。
すなわち、椅子になりたい被害者。
原作では加害者であるのに、アニメ版では、椅子になりたいのは被害者だ。
被害者は殺人犯の椅子になるために自らすすんで殺される。
殺人犯に永遠に愛されたくて、椅子になることを望む。
この<椅子になりたい願望>は乱歩のオリジナルだが、究極のマゾヒズム=物になりたい願望ですね。
乱歩の小説には、美少女を人形にするといったエピソードがしばしば登場するが、これもまた人間の物体化。
実は人間って、意思を持っていると劣等感や不安や孤独などに苛(さいな)まれてつらいから、意思をなくして物になってしまいたいものなのです。
誰かに完全に支配されたいとも思ってしまう。
原作の『影男』は、いくつもの名前を持ち、人間の裏面や秘密を暴き出すのを生きがいにしている男の物語。
これをアニメ版では、少女を悪から守る<少女趣味>の男として改変している。
原作との共通点は、少女・大曾根さち子を救うエピソード。
病気のさち子を救おうとする影男の心温まるエピソードが描かれるが、アニメ版では、ここを上手くふくらませている。
影男がさち子に語りかける原作のせりふ「君はまったく生まれ変わって、仕合わせな子になれるんだよ」なんかも巧みに引用されている。
それにしても江戸川乱歩ってすごい。
江戸川乱歩の作品はさまざまな形でリメイクされているが、これほど後の作家・クリエイターにインスピレーションを与えた作家っていないだろう。
発表当時は荒唐無稽な通俗小説とバカにされた作品群が、今ではどんな作家の作品よりも存在感があり、輝きを放っている。
乱歩の命日は1965年7月28日。
今年は没後50年で著作権が切れるが、さまざまな形で関連著作物が出て来るに違いない。
それともTPPが成立すれば、著作権切れは没後70年になるから、さらに延長されるのか?
いずれにしても人間の奥底にある心理を描いた乱歩の作品は、今後も読み継がれ、クリエイターにインスピレーションを与えていくに違いない。
江戸川乱歩の原作を上手くひねっていますね。
たとえば、『人間椅子』。
以下、ネタバレ。
原作の『人間椅子』は、美女の椅子になれたらどんなに素晴らしいだろう、という妄想・願望を綴ったものだが、アニメ『乱歩奇譚』では逆にしている。
すなわち、椅子になりたい被害者。
原作では加害者であるのに、アニメ版では、椅子になりたいのは被害者だ。
被害者は殺人犯の椅子になるために自らすすんで殺される。
殺人犯に永遠に愛されたくて、椅子になることを望む。
この<椅子になりたい願望>は乱歩のオリジナルだが、究極のマゾヒズム=物になりたい願望ですね。
乱歩の小説には、美少女を人形にするといったエピソードがしばしば登場するが、これもまた人間の物体化。
実は人間って、意思を持っていると劣等感や不安や孤独などに苛(さいな)まれてつらいから、意思をなくして物になってしまいたいものなのです。
誰かに完全に支配されたいとも思ってしまう。
原作の『影男』は、いくつもの名前を持ち、人間の裏面や秘密を暴き出すのを生きがいにしている男の物語。
これをアニメ版では、少女を悪から守る<少女趣味>の男として改変している。
原作との共通点は、少女・大曾根さち子を救うエピソード。
病気のさち子を救おうとする影男の心温まるエピソードが描かれるが、アニメ版では、ここを上手くふくらませている。
影男がさち子に語りかける原作のせりふ「君はまったく生まれ変わって、仕合わせな子になれるんだよ」なんかも巧みに引用されている。
それにしても江戸川乱歩ってすごい。
江戸川乱歩の作品はさまざまな形でリメイクされているが、これほど後の作家・クリエイターにインスピレーションを与えた作家っていないだろう。
発表当時は荒唐無稽な通俗小説とバカにされた作品群が、今ではどんな作家の作品よりも存在感があり、輝きを放っている。
乱歩の命日は1965年7月28日。
今年は没後50年で著作権が切れるが、さまざまな形で関連著作物が出て来るに違いない。
それともTPPが成立すれば、著作権切れは没後70年になるから、さらに延長されるのか?
いずれにしても人間の奥底にある心理を描いた乱歩の作品は、今後も読み継がれ、クリエイターにインスピレーションを与えていくに違いない。