日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著) 全文 1-2 究極の“裏帳簿”特別会計
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投稿者 たけしくん 日時 2009 年 8 月 17 日 11:36:58: IjE7a7tISZsr6
(回答先: 日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著) 全文 1-1 利権財政の御三家―特別会計、財投、補助金 誰も知らない日本 投稿者 たけしくん 日時 2009 年 8 月 17 日 11:35:50)
日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)
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第一章 利権財政の御三家―特別会計、財投、補助金
第二節 究極の“裏帳簿”特別会計
闇の世界で三三〇兆円を動かす特別会計
現在ある特別会計を網羅したのが図表1-7である。特定の事業を行う「事業
会計」が一〇、特殊な保険を管理する「保険会計」が二、特定のものの管理や
需給調整を行う「管理会計」が八、など合計三八もある。
このうち、とくに公共事業関係の特別会計に問題が多い。国営土地改良事業
特別会計、港湾整備特別会計、空港整備特別会計、道路整備特別会計、治水特
別会計の五つが代表的である。
これら三八ある特会の予算規模の合計額の推移を図表1-8に示した。いまや
年間予算規模は三三六兆円で、一般会計のちょうど四倍である。しかも「一般
会計」の過半は特別会計に入ってしまぅのだから、何といっても国の予算の黒
幕はまさに「特別会計」なのだ。ということは、わが国の財政制度は国民の福
祉のための財政ではなく、憲法に違反する政府の投資事業、すなわち官制経済
のための会計が主体となっているといえるのである。
図表1-7 特別会計一覧
会 計 名 所管省庁 設置年 職員数(人)
事業会計 郵政事業 総務省 1949 293,578
郵便貯金 総務省 1951 -
造幣局 財務省 1871 1,408
印刷局 財務省 1871 5,796
国有林野事業 農水省 1947 6,166
国営土地改良事業 農水省 1949 3.093
道路整備 国交省 1958 8,402
治水 国交省 1960 8,751
港湾整備 国交省 1961 2,361
空港整備 国交省 1970 7,391
保険会計 簡易生命保険 総務省 1944 -
地震再保険 財務省 1966 6
厚生保険 厚労省 1944 11.315
船員保険 厚労省 1947 262
国民年金 厚労省 1961 5.656
労働保険 厚労省 1972 10,888
農業共済再保険 農水省 1944 106
森林保険 農水省 1937 7
漁船再保険及漁業共済保険 農水省 1952 43
貿易再保険 経産省 1950 35
自動車損害賠償責任再保険 国交省 1955 99
管理会計 登記 法務省 1985 10,698
外国為替資金 財務省 1951 39
国立学校 文科省 1964 134.120
国立病院 厚労省 1949 49,950
食糧管理 農水省 1921 7,867
農業経営基盤強化措置 農水省 1946 -
特許 経産省. 1984 2,489
自動車検査登録 国交省 1964 2,939
融資会計 財政融資資金 財務省 1951 418
産業投資 財務省 1953 10
都市開発資金融通 国交省 1955 -
整理会計 交付税及び譲与税配付金 内閣府、総務省、財務省 1954 -
国債整理基金 財務省 1906 -
電源開発促進対策 財務省、文科省、経産省 1974 94
石炭並びに石油及びエネルギー 需給構造高度化対策 特定国有財産整備 財務省、厚労省、経産省 1967 321
財務省、国交省 1957 -
(出所:財務省) (注)1.職員数は2001年度末の予算定員である。
2.アルコール専売事業は民営化に伴い、2000年度限り廃止。
図表1-8
特別会計の予算額(当初歳出ベース)(単位=億円)
1960年度 35,491
1970年度 169,883
1980年度 897,706
1990年度 1,754,857
2000年度 3,364,896
一般会計から特別会計への繰入額(総額)(単位=億円)
1960年度 5,412
1970年度 38,501
1980年度 213,013
1990年度 411,600
2000年度 516,192
財政投融資貸出残高
1973年度末 290,584
1980年度末 936,633
1990年度末 2,283,115
2000年度末 4,178,139
図表1-9 特別会計に投入される特定財源
税 目 課税開始年 使 途
揮発油税 1949 道路整備
地方道路税 1955 道路整備
石油ガス税 1966 道路整備
自動車重量税 1971 道路整備(公害補償対策)
航空機燃料税 1972 空港維持・整備
電源開発促進税 1974 電源立地・多様化対策
石油税 1978 石油及びエネルギー 需給構造高度化対策
特別とん税 1957 港湾施設設置市町村の財源
原油等関税 1955 石炭対策
(出所:財務省)
「国の予算」というと一般会計と思われているのが通常で、特別会計(以下、
特会と略称)といってもその存在すら意識しない人が大半かもしれない。しか
し特会に投入される税は、国民誰もが支払っている。五一兆円を超える一般会
計からの繰り入れを別にしても、クルマに乗る人は揮発油(ガソリン)税や軽
油引取税を、電気を使う人は電源開発促進税を、石油を使う人は石油税等を払
う。
図表1-9に示したように、これらを含め九種類の税金は一般会計を素通りし
て (一部はいったんくぐつてから) 特会に入れられる。また、会社に勤め
る人が納める雇用保険と労災保険、さらには国民の年金保険料や郵便貯金、健
康保険、電信電話の株式売却益なども特会の財源となる。
マスコミも特会や財投についてあまり報道しようとしない。政府は「知らし
むべからず」で、詳細な内容を示したがらない。マスコミは調査に手間がかか
るし、それぞれ複雑な仕組みなので、読者・視聴者に説明しにくい。マスコミ
が報道しないのにはじつは記者クラブ制も影響している。特別会計の実態を探
ることは省庁の権益を傷つけることになり、官僚からの情報に依存している新
聞社などにとっては自殺行為にもなりかねないからである。しかし実際には財
投や特会、それに特殊法人予算など「隠された大きな財布」を見なければ、税
金の使われ方はわからない。
特会が大規模なものになるのには理由がある。特会は財投と同様、基本的に
各省庁が予算編成権を持っているので、省庁の自由裁量で事業予算を決めるこ
とができる。そのため、特会を持っている省庁は、お手盛りで予算を膨らまそ
うとするのである。
他方、政治的公共事業や官営ビジネスが増えすぎて、一般会計では到底合理
性を貫くことができない規模になっている。そこで国民の監視の目が光ってい
る一般会計については一見もっともらしくカムフラージュし、本体は特別会計
に隠蔽(いんぺい)するという形になる。
意外に知られていないことだが、国家公務員の五割以上は特会から給与をも
らっている。これも一般会計をきれいに見せようというつまらない見栄か、あ
るいは官僚ビジネスの人件費を公然と一般会計から受け取りにくいので裏帳簿
にしたのか。いずれにしても釈然としない。
逆マネーロンダリング、一般会計予算の大半は特会へ
「マネーロンダリング」とは、麻薬売買など犯罪で儲けた汚いカネをきれいな
ものに見せかけるための「洗浄」行為をいう。日本の財政では、それと逆のよ
うな操作が行われている。
税金や社会保険料として集めたお金が「きれいなカネ」であることはいうま
でもない。それを使うにあたって、その大半を特別会計という裏帳簿に入れ
る。つまり税や保険料の大半を、見えない裏帳簿に入れ、「汚染」させて使う
のである。
これを平成一一年度の予算でみると、なんと一般会計の七割を特別会計に繰
り入れた。一般会計予算は八一兆八六〇〇億円であった。そのうち特別会計を
通して使われた五八兆円の内訳は国債償還費二〇兆円、前年度不足分一兆六〇
〇〇億円、地方交付金一三兆五〇〇〇億円、公共事業費九兆八〇〇〇億円、社
会保障等の補助金一六兆円のうちの一三兆円、などとなっている。
いったん特会のトンネルをくぐった公共事業費、社会保障費などは、大部分
が補助金の形で地方公共団体や特殊法人、公益法人などを通して業者へと流れ
ていく。それらの経路はすべてにおいて政治家とつながっており、金の流れは
本流から傍流へ、傍流から支流へと消え去っていく。
なお、特会を通らない補助金もあり、これは各省庁から直接に特殊法人、公
益法人、業界団体へと配られる。一部は直接業者に行くが、いずれも政治献金
と天下りがつきものであることに変わりはない。
以下、いくつかの特会について、実際の運用がどうなっているのかを詳しく
見ることにする。特会がいかに利権の温床として重要な役割を果たしているか
が明らかとなろう。
利権の巣窟 - 道路特別会計
道路整備特別会計は、高規格道路と国道・県道など一般道路整備事業を扱う
ものとされている。財源の中心となるのはガソリン税(揮発油税) である。
道路特会をめぐるカネの流れをまとめたのが図表1-10である。ガソリン
税、軽油引取税などの特定財源を四つのルートに分けて、また一つの所に集め
るという奇妙な仕組みをとっていることがわかる。
ガソリン税収は年間三兆円弱で、その四分の一が直接、道路特会に入る。残
りの四分の三はさらに二ルートに分かれる。いったん一般会計に入れ、そこか
ら道路特会へ入るのが一つ。もう一つは交付税特会に入ってから一般会計経由
で道路特会に入る。石油ガス税もガソリン税とは別に二分割で道路特会に入
る。さらに軽油引取税、自動車取得税、自動車重量税が道路事業に使われる。
NTT株売却益を使った産業投資特別会計からの無利子融資もこの特会に入る。
目的税としてのガソリン税などと道路特会がある限り、道路整備事業は自動
的に、無限に続いていく仕組みになっているわけだ。
道路特会の予算規模は四兆四七六〇億円だが、中には受託工事や附帯工事
費、貸付け・償還といった「通り抜け」経費もあるから、実質規模は約四兆二
〇〇〇億円である。この予算はどう使われているのか。
一部は特殊法人である日本道路公団等への出資金、利子補給金に当てられて
いる。高速道路事業を中心とする道路公団とファミリー企業群は利権の巣窟と
いわれている。他は道路建設費などに支出されるが、地方公共団体を通して回
っている金が建設地点でドッキングし、道路事業関係のゼネコンを中心とした
業界団体から公益法人、第三セクター、政治団体へと連結している。道路予算
全体は、この他に道路公団、地方事業分など併せて年間一三兆円の巨額にのぼ
る。これが、土建業界と政治家を潤わせる。
誰かが潤っているということは、誰かがその分を負担しているということだ
が、いうまでもなく、ガソリン税などを納めている国民全員の負担である。
この負担は結局、運輸、流通、製造など多くの産業分野にかかってくる。す
なわち、これらの産業で使うガソリン代や通行料などが、世界に類例のない高
価格のものとして直接国民生活に跳ね返る。他方では、高いガソリンは生計費
を押し上げるから、従業員の給与水準も引き上げなければならず、それが物価
に反映されるという側面もある。
つまり、ガソリン税を道路の特定財源とするシステムによって、政治屋と官
庁の天下りだけが潤い、政治系土木業者が喰いつなぎ、それ以外のすべての産
業が犠牲をはらうという構図になっている。これが日本経済全体にとって大き
なデメリットになっていることはいうまでもない。
日本が貧しかった時代、確かに基礎的社会資本は生産性の向上に役立った。
しかしいまや社会資本も高い水準に達した。とりわけ日本的利権構造の下で
は、政府が行う社会資本整備はむしろ極端に経済的社会的コストを高進させて
しまう。わが国の国土面積当たりの道路延長は、アメリカの一七倍、ドイツの
一・七倍である。高規格道路のみで比較すると、ドイツに次いで第二位となっ
ている。日本は国土の三分の二が山地なのだから実質ドイツ以上である。
わが国で道路整備に使われる予算額は、平成一二年度で約一三兆円というべ
らぼうな数字である。ちなみに一キロあたり建設費の単価は、首都高速道路で
一〇〇〇億円、東京湾横断道で九五〇億円となっている。山の中の高速道路で
も一〇〇億l一〇〇億である。日本の高速道路は、カネを敷きつめているベル
トだといってもいい。