「企業と政治の癒着が第一」の悪代菅政権公約
参院選を1週間後に控えて9党首による討論が実施された。
公開討論への出席を渋った菅首相もようやく出演要請に応じた。
しかし、番組の時間配分に大きな問題がある。各党均等に時間配分をしなければ、公正で公平な討論は不可能である。
国会における議席数に比例して発言時間を付与すると、小政党では発言時間がほとんどなくなってしまう。
参院選の争点を改めて列挙する。
①庶民大増税=消費税大増税の是非
②対米隷属外交の是非
③大企業と政治権力の癒着の是非
④官僚天下り利権温存の是非
が主要争点である。
5月28日に鳩山前首相は普天間基地移設問題で日米合意を発表した。
昨年8月の総選挙で、鳩山前首相は「最低でも県外」と明言し、政権発足後も、その方針を貫いた。5月末までに、この公約に沿った結論を示すことを国民に約束したが、5月28日の日米合意は、国民との契約を破棄する裏切りの合意だった。
社民党は連立政権から離脱し、沖縄県民は鳩山政権の不誠実な対応に憤慨した。鳩山内閣が総辞職に追い込まれた最大の理由は、普天間基地移設問題で日本の主権者国民でなく、米国の言いなりになって合意を決めたことにある。
鳩山内閣が総辞職し、菅内閣が発足した。この経緯を踏まえれば、日米合意の見直しが新政権の最初の任務になるべきである。
ところが、菅首相は「日米合意を踏まえる」ことを新政権の出発点とした。主権者国民の意思、沖縄県民の意思を踏みにじることを継承することを宣言した。
したがって、参院選では菅政権の対米隷属外交の是非がまずは問われねばならない。この争点が意図的にぼかされている。
マスメディアは米官業政電=悪徳ペンタゴンの一味であるから、日本が米国による支配から脱却しようとすることに対して、これを封じ込めることを任務としている。このため、普天間問題を含む日本外交のあり方が選挙の争点に浮上することを意図的に阻止していると考えられる。
菅首相の発言をきっかけに、突如、参院選の最大の争点に浮上したのが消費税大増税問題である。民主党のマニフェストには、
「税制の抜本改革を実施します」
と明記された。「検討します」ではなく、「実施します」と表記されたことの意味を十分に認識しなければならない。
菅政権が2~3年以内に消費税大増税実施に踏み切る可能性が極めて高いのだ。
総選挙で民意を問い、そのうえで消費税増税を実施するとされているが、この言葉を鵜呑みにできない。
次の総選挙では、消費税大増税実施、あるいは実施決定について、民意が問われることになる公算が大きい。
自民党や立ちあがれ日本などが消費税大増税に賛成していることにも十分な警戒が必要だ。
民主党と自民党が結託すると、消費税大増税が決定されてしまう。
三つの重大な問題がある。
第一は、歳出改革が雲散霧消することだ。「事業仕分け」などが実施されているが、現状は「学芸会」の域を出ていない。公開の場でパフォーマンスが演じられているだけだ。最終的な結果が問われるのであって、途上のプロセスで女性議員が強い口調で仕分け先を問い詰めても、そのこと自体に意味があるわけでない。
肝心かなめの「天下り根絶」がまったく進展していない。
「天下りあっせん」を禁止しても意味がないことを民主党は野党時代に主張してきた。ところが、与党になった途端、「天下り根絶」が消え、「天下りあっせん禁止」にトーンダウンし始めた。
第二は、菅首相が提示している税制改革の方向が、庶民大増税=大企業優遇であることだ。
下記グラフは主要税目の税収推移を示した財務省公表データだ。
1990年度から2009年度にかけて、経済規模を示すGDPは451.7兆円から476.0兆円へ小幅増加したが、税収は60.1兆円から36.9兆円に減少した。そのなかでの法人税と消費税推移は、
法人税 18.4兆円 → 5.2兆円
消費税 4.6兆円 → 9.4兆円
となった。
法人税が1990年度と比較して約4分の1に激減したのに対して、消費税は2倍強に増加した。
このなかで、菅首相は4分の1に減少した法人税をさらに減税する一方で、低所得者ほど負担感が重くなる消費税について、税率を2倍にする大増税方針を示している。単純に計算すれば9.4兆円増税だ。
民主党は企業が海外に逃避しないために法人税減税が必要だと言うが、政府税制調査会は法人税率について、2007年11月発表の
『抜本的な税制改革に向けた基本的考え方』
に、
「課税ベースも合わせた実質的な企業の税負担、さらに社会保険料を含む企業の負担の国際比較を行った試算において、我が国の企業負担は現状では国際的に見て必ずしも高い水準にはないという結果も得た」(17-18ページ)
と明記している。
つまり、「日本の法人税負担は国際比較でみて高くない」というのが、日本政府の公式見解なのだ。
にもかかわらず、菅政権は法人税を減税し、消費税を大増税しようとしている。「国民の生活が第一」ではなく「政治と企業の癒着が第一」の政策だ。
第三は、世界経済、日本経済の現状を踏まえたときに、いまこのタイミングで消費税大増税を提唱することが、あまりに現実感覚を失っていることだ。
『金利・為替・株価特報』2010年6月25日号=111号に詳述したが、世界経済、日本経済は、2010年後半kら2011年に向けて、再び大きな波乱に向う危険に近づいている。
昨年11月末にも大きなリスクが浮上した。鳩山政権の2010年度予算が日本経済を破壊するリスクを持ち始めたのだ。主因は菅直人副総理が2009年度第2次補正予算規模を3兆円に留めようとしたことにある。
このときは、国民新党の亀井静香代表が強く主張して、補正規模が7兆円に増額された。これらの措置により、日本経済の二番底への転落が回避された。
菅直人首相が示す政策路線は、財務省主導の財政再建原理主義であり、かつて、橋本政権や小泉政権が進み、日本経済を破壊した道筋である。
日経平均株価は7月1日に9191円にまで下落したが、9050円を下回れば、株価の下落トレンド入り確定の可能性が高まる。この状況下で大増税を提唱する菅首相には、経済政策を仕切る能力がないと言わざるをえない。
参院選では民主党内の小沢一郎前幹事長グループに属する候補者のみを支援し、政党としては国民新党と社民党を支援することが賢明だろう。