日米関係を不安定化させる安倍政権凋落が加速
2012年12月に発足した安倍政権与党は、2013年7月参院選で参院での過半数議席を確保したことにより、独裁的な政治運営を展開している。
内閣総理大臣には強大な権限が与えられており、法令の定めを吟味せずに、単に権限だけを無節操に行使すると、民主主義の根幹が揺らいでしまうことになる。
日銀人事、NHK人事、裁判所人事でこれらの問題が顕在化している。
法案等の審議についても、衆議院における与党の3分の2占拠に依拠して「数の論理」を振りかざせば、まさに独裁が実現してしまう。
特定秘密保護法の制定は、こうした乱暴な政権運営を象徴する事象だった。
さらに、安倍晋三氏は憲法解釈変更を独裁的に実行しようとしている。
憲法解釈変更の閣議決定が国会審議の前か後かという、頓珍漢な論議が繰り広げられているが、憲法の運用は条文に従うまでであって、条文の解釈など、ひと通りにしか存在しない。
解釈改憲という表現に矛盾があるわけで、これまでの憲法解釈の範囲を超える行動を実現しようとするなら、憲法を変える以外に道はない。
したがって、安倍晋三氏がこれまでの憲法解釈の範囲を超えた行動を合法化するためには、憲法を変えるしかないわけだ。
安倍晋三氏がそれを求めるなら、堂々と憲法改定を提案すればよいのである。
その改定案を提示するためであれば、閣議決定を行なえばよい。
国会では民主党の岡田克也氏が憲法の解釈改憲の閣議決定の前に国会審議を求めているが、こうした頓珍漢な対応が国の未来を誤らせることになるのだ。
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安倍晋三氏は鳩山政権が日米同盟を不安定なものにしたと強く非難していたが、いまの安倍政権の方が、はるかに日米関係を不安定にしている。
少なくともオバマ大統領と鳩山由紀夫首相との間には、一定の信頼関係が存在した。
しかし、いまの安倍政権はオバマ大統領と信頼関係を構築できていない。
安倍晋三氏は懸命に米国に媚を売る行動を示してきたが、それにもかかわらず、日米関係はこれまでにない不安定なものになっている。
その理由は、安倍晋三氏がアジア諸国との友好関係を構築できていないからである。
米国のオバマ政権は、東アジアで軍事的な緊張が高まることを望んでいない。
米国の産軍複合体は、世界のどこかで大規模戦争が生じないと、産業として存続できないから、東アジアでの戦乱を希望している面があり、これと結託する売国者たちが東アジアの緊張を高めようとしている面はある。
しかし、こうした産軍複合体の意向とオバマ政権の意向は同一ではない。
米国は安倍首相と安倍首相の「お友達」が提示する一連のメッセージに対して、極めて冷淡な反応を示しているのである。
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NHKの籾井勝人会長は従軍慰安婦問題について、
「韓国だけにあったと思っているのか。戦争地域にはどこでもあったと思っている。ドイツやフランスにはなかったと言えるのか。ヨーロッパはどこでもあった。なぜオランダには今も飾り窓があるのか。
韓国は日本だけが強制連行をしたみたいなことを言うからややこしい。お金をよこせ、補償しろと言っているわけだが、日韓条約ですべて解決していることをなぜ蒸し返すのか。おかしい。」
と述べた。
安倍晋三氏が抜擢したNHK経営委員の百田尚樹氏は、
「米国は東京大空襲、広島長崎の原爆の大虐殺をごまかすために東京裁判をやった。
南京大虐殺など存在しなかったのに、アメリカ軍は自分たちの罪=大虐殺をごまかすために東京裁判でこれを持ち出してきた」
と述べた。
米国は戦没者を慰霊するアーリントン墓地と靖国神社とは異なるとの判断を持ち、昨年11月にケリー国務長官とヘーゲル国防長官が訪日した際に、わざわざ、千鳥ヶ淵の戦没者墓苑に足を運び献花した。
安倍首相の靖国参拝を牽制するためであったことは明白だ。
靖国神社はA級戦犯を合祀しており、戦前の日本の行為を正当化する資料館を持つ施設である。
このことから、米国は日本の首相の靖国参拝をサンフランシスコ講和条約以降の国際秩序の否定につながる行為であると理解している。
単に中国や韓国が反対しているということだけでなく、米国自身が安倍首相の靖国参拝に対して強い懸念を有している。
これが「失望」の表現のひとつの背景である。
同時に、安倍首相の靖国参拝は中韓の対日批判を拡大させる重要な要因になる。その結果として生じる東アジア情勢の不安定化を、少なくともオバマ政権は望んでいないのである。
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日本国内で安倍首相の言動を支持する主権者が存在することは事実である。とりわけ、若年層にその傾向が強まりつつあることは重大な事象である。
しかし、他方で、この安倍政権の暴走を止めなければならないと考える主権者国民が多数存在することも、また事実なのである。
問題は、その勢力が分散、分裂、分立してしまって、安倍政権の暴走を確実に止める防波堤の役割を担えない状況が生じていることである。