No. 1271 中国経済減速は自然な現象
投稿日: 2019年11月25日
中国政府が10月に発表した2017年7~9月期のGDPが前年同期比6%増しか伸びず2期連続で減速したことを受けて、中国経済が懸念すべき段階に達したという悲観的な報道がなされている。
中国の四半期ベースの成長率としては1992年以降で最も低い水準にあり、米国との貿易摩擦が長引く中で、年内には6%を割り込むとみるエコノミストもいる。しかしこれまで中国はあまりにも急速に成長を遂げ、国民の所得水準を向上させてきたため、減速は自然な現象であると私はみている。それでも、中国の成長の衰退を大きくみせたいメディアは、過剰なほど中国経済の危機を報じる。
米国のペンス副大統領も、ワシントンのシンクタンクで演説を行い、クリントン政権時代に米国が行った投資のおかげで中国は繁栄を手にしたが、トランプ政権の経済政策によってこれからはそうはいかない、と述べた。しかし一方で、米中貿易協議が合意を見ることをトランプ大統領は希望している、という矛盾する言及もあった。米国にとって中国はもはや一方的に関係を断ち切れる相手ではないということなのだろう。
少し前にNBA(全米プロバスケットボール協会)のチームのゼネラルマネジャーが香港で起きているデモに対し、デモ隊を支持する反中的な言葉をツイッターに投稿して中国のメディアから批判を浴びた。NBAにとって中国は大切な市場であるため、ツイートは個人の意見でNBAは関与していないとすぐに謝罪した。米国にとっては「言論の自由」だが、中国はこれを「内政干渉」だとしたのである。
貿易摩擦で成長が鈍化しても、人口14億人の大国は国内消費で経済を回していくことができるため、米国の顔色をうかがう必要はない。また、欧米のメディアは中国の負債を問題視するが、米国政府の負債と中国の負債は同じように扱うべきではない。なぜならウォール街を牛耳り富を占有する超富裕層が政府を握っている米国と違い、中国は社会主義政府が経済の長期的な責任を負っている。したがって金融市場の混乱を恐れることなく不良債権処理をいつどのように進めるか決めることができるのだ。
さらに中国と米国では経済の目的が違うため、負債の性質も異なる。近年、中国では過剰な先行投資により過剰な生産能力と住宅在庫増がもたらされた。中国でもほとんどの企業がレバレッジ(他人の資本を使うことで自己資本に対する利益率を高めること)をしているが、中国の大企業や大銀行はその多くが国営である。
例えば3兆ドルをかけた高速鉄道網は、土地、債券、道路の権利、駅、あらゆるインフラや開発は公共のものであり、中国全体の公益のために運営されている。これらの投資は雇用を創出し、所得と税収の増加をもたらし、経済活動を促進する。高速鉄道ができても古い路線は貨物列車が利用すれば、世界最大のEC市場である中国のオンラインショッピングも加速して経済が活性化する。つまり中国では投資の別名が負債になる。だからこそ米国の圧力に対して脆弱ではないのである。
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