No. 1273 米国要求にNOと言えるか
投稿日: 2019年12月15日
「桜を見る会」において、主催者である安倍首相が自らの支援者を公費で供応したとして国会で問題になっていた時、米外交誌フォーリン・ポリシーは、トランプ政権が日本政府に対して今年7月、在日米軍を駐留させる経費負担を約4倍に増やすよう要求していたことを報じた。
米軍基地内で働く日本人の人件費や基地内の光熱費、水道費などの「思いやり予算」として、日本政府は年間約1900億円を負担している。トランプ政権は2021年以降、この負担を約80億ドル(約8700億円)に増やすよう求めたという。
2016年の大統領選挙の時から、トランプ大統領が在外駐留米軍の削減に言及していたことを振り返れば、この要求はサプライズではない。日本だけで約5万4千人の米兵が駐留し、その半数は海兵隊など、沖縄の米軍基地にいる。トランプ大統領は駐留する兵士の人件費や燃料の費用を全て負担することを主張しており、今年3月には、韓国やドイツに対しても駐留経費の全額負担とさらにその50%を追加で払うよう求める考えを明らかにしている。
最初に金額をつり上げ、そこから下げていくというのは不動産業で慣らしたビジネスマンの交渉術かもしれないが、米軍基地を置いている国がこの負担増を受け入れる可能性は少ない。5兆円を超す防衛予算で米国製の旧式兵器を購入し続けている安倍首相でも、駐留費を4倍増にすれば「桜を見る会」以上の問題になることは間違いないだろう。
増額要求に応じない場合、トランプ大統領が次に言い出すことは米軍撤収だといわれているが、あり得ない話ではない。去る10月、トランプ政権はシリア北東部に駐留する米軍部隊の撤退開始を発表した。実際はその後、米軍の急襲作戦でIS指導者のバグダディ容疑者が死亡し、米軍はその後もシリアの石油を手に入れるために撤収せずに残っている。石油のない東アジアに米軍が基地を置くのは、もちろん日本を守るためなどではない。沖縄に駐留する2万人の海兵隊の役割は、有事の際に米国の大使館の防護および米国の民間人の保護・救出であって、日本の防衛ではないのである。
日本と同じく在韓米軍の駐留経費の分担を巡り米国との協議が決裂し、増額に関して世論の反発が強まる韓国は、地域の安定と安全保障において中国と協力することで合意、という報道もなされている(英テレグラフ紙)。要求をのまなければ在韓米軍を撤退するというトランプ大統領の脅しに、韓国は中国と手を組むことで自国の防衛を確保しようとしているようだ。
自由と民主主義という理念を掲げて、米国は世界の国々で民主的に選ばれた政権の転覆工作を行っている。最新鋭の無人機や無人潜水艦の時代に、時代遅れの米国製兵器を購入し続ける日本政府は、米国の要求にノーと言えるのか。それとも100兆円を超す財政赤字を抱える米国に貢ぎながら、共に衰退の道をたどるしかないのであろうか。