北陸新幹線長野金沢1時間に要した18年の歳月
3月14日、北陸新幹線の長野-金沢間が開業した。
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高崎-長野間が開業したのが1997年10月1日。
長野-金沢の距離は228キロメートル(営業距離)。
この延伸に17年半の時間を要したことになる。
これまで金沢-東京間は、鉄道利用の場合、新潟県上越市の犀潟駅(さいがたえき)と上越新幹線の越後湯沢を結ぶ北越鉄道を経由する特急はくたか号と越後湯沢-東京間を結ぶ上越新幹線を乗り継ぐルートが最短であった。
4時間20分ほどの時間を要していたが、北陸新幹線の開業で、金沢-東京間が最短2時間28分に短縮された。
北陸-首都圏が日帰り圏内になり、また首都圏から北陸への観光客が急増することが予想され、北陸三県ではその大きな経済効果に期待が寄せられている。
長野-金沢間は最短で65分で接続されることになったが、この1時間の路線開業に要した時間が18年ということになる。
日本有数の豪雪地帯を通過することから、積雪対策に多くの技術が必要であったし、また山岳地帯を通過する部分が多く、トンネル工事にも多大な費用と労力が求められた。
18年の歳月を経て、ようやく実現した金沢延伸であるが、時間がかかり過ぎたとの印象は否めない。
中国では首都北京と最大都市上海とが京滬高速鉄道(けいここうそくてつどう)で結ばれている。
全長1318キロメートルの距離は、長野-金沢間の228キロのちょうど5倍に該当する。
この高速鉄道建設が着工されたのが2008年4月で、2011年6月には開業された。工事着工から開業までの期間が、わずか3年余りであった。
両者の時間の開きには改めて驚かされる。
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新幹線のようなインフラの特徴は、その社会資本=インフラが効用を発揮する期間が長期にわたる点にある。
完成して実用に供されれば、長期にわたって価値を発揮するのである。
道路も、港湾も、空港も、そして鉄道も、作るのは大変だが、作ってしまえば大きな価値を発揮し、しかも、その価値発揮の時間が非常に長い。
生活に関連した社会資本も同じだ。
生活の利便性を飛躍的に高める、電気、ガス、水道などの、いわゆる「ライフライン」と呼ばれる社会資本も、敷設には時間と労力、そして財源を必要とするが、敷設されてしまえば大きな価値を発揮して、しかも、長期の利用を可能にするものである。
財政政策の運営を考える場合には、「投資」が持つ、こうした特性を十分に踏まえることが大事なのである。
財政運営ではとかく「財政赤字」の問題だけが前面に出されやすい。
巨大な財政赤字を計上して、債務を累積させれば、財政破綻に対する懸念が拡大するとともに、累積債務の利払い費などの経費が財政運営をさらに圧迫することなどが警戒される。
このことから、緊縮財政が唱えられ、とりわけ、「公共投資」に対する抑制圧力が強まるのである。
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しかし、例えば、新幹線のような「投資」を考えるときに、膨大な費用がかかるからと言って、毎年の投資支出を抑制すれば、投資が完了して、投資資産が実用に供される時期は大幅に先送りされる。
日本はいま人口減少を加速しているが、完成したときには利用する国民がほとんどいなくなってしまうということも考えられる。
家計における「実物投資」の最大のものは「住宅建設」だろう。
「家を買う」、「家を建てる」と言うのは、家計の支出行動のなかでの最大イベントと言っても良いだろう。
この住宅建設を考えるときに、「財政規律」だけを優先するとどのようなことが起こるだろう。
「財政規律」の「原理主義的発想」は、
「借金は良くない」
というものである。
「借金は不健全」
「借金は悪」
というのが財政規律重視の「原理主義」的な考え方である。
これを「家を買う」ことにあてはめると、「家を買う」時期は大幅に先送りされる。
「家を買う」費用を確保できるのは、恐らく退職直前、あるいは、退職して退職金を獲得したときに、初めて「家を買う」費用を確保できるということになるだろう。
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そして、「家を買って」、まもなく死去するのである。
これに対して、就職して間もない時期に住宅ローンを組んで家を買ってしまう。
退職時点で退職金を得て、ローンは完済される。
この人は、若年の時期から死去するまで、ローンで購入した「持家」に暮らすことができ、退職時点ではローンを完済して、負債を残さない。
どちらの行動が、より「賢明」と言えるだろうか。
先を見越して、「家を建てる」決断がある場合には、早い時期に借金をして「投資」を行ってしまう方が、はるかに「賢明」であることが分かるのだ。