福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

御即位灌頂 冨田斆純(11代豊山派管長)等より・・・2

2018-09-02 | 法話
御即位灌頂 冨田斆純(11代豊山派管長)等より・・・2
第二章、即位御大礼の変遷
・・・即位の御大礼とは天皇陛下が萬世一系の皇位を継承したまへることを、皇祖皇宗に告げたまひ、並びに四海万民にその旨を宣したまふの大礼であって、大嘗会とは天皇陛下御位に即かせ給へる故、自ら新穀を以て天祖および天神地祇を請饗せらるる大祭である。古にありては践祚すなわち即位であって、即位の礼も重なる趣旨は、皇祖皇宗天神地祇に告げ祀るの旨で、いわゆる報本反始(本に報い始めに反る、出典, 『礼記』)の祭天の儀式であったのである。しかるに後には、践祚といふことは御位を継ぎ給ふ事、御即位は万民に宣し給ふこと、大嘗会は神を祀ることと相分れたのである。抑々御即位礼の起源は天祖天照大神が皇孫瓊瓊杵尊に「葦原千五百秋之瑞穂國、是吾子孫可王之地也。宜爾皇孫、就而治焉。行矣。寶祚之降、當與天壤無窮者矣。(日本書紀・天孫降臨の段にある天壌無窮の神勅。・・・豊葦原(とよあしはら)の千五百秋(ちいほあき)の瑞穂(みずほ)の國は、是(こ)れ吾(あ)が子孫(うみのこ)の王(きみ)たるべき地(くに)也。宜しく爾皇孫(いましすめみま)、就(ゆ)きて治(しら)せ。行矣(さきくませ)、寶祚(あまつひつぎ)の隆(さか)えまさむこと、当(まさ)に天壤(あめつち)と窮(きわま)り無かるべし。)豊葦原千五百秋の瑞穂の国はこれ吾子孫王たるの地なり。宜爾皇孫、就治矣行矣、寶祚の隆、まさに天壌と無窮ならん。」と仰せられて、八尺瓊勾玉・八咫鏡・天叢雲剣の三種の神器を授けられたのが起源である。故に皇位の継承と云ふことは三種の神器の継承ににあることは云ふまでもない。神武天皇が橿原の都に即位の御大礼をあげさせられたことが古語拾遺に記載されているが、(古語拾遺「・・神武天皇(じんむのすめらみこと)東(ひむがし)に征(ゆ)きたまふ年に逮(およ)び・・・都を橿原(かしはら)に建て、帝宅(おほみや)を経営(つく)る。」) その時はまず、斎斧・斎鋤を以て山林を伐採りて正殿を建立し斎部諸氏をして種々の神寶鏡玉矛盾木綿麻等を作らしめ、而して先祖の遺訓に従って天津神籬を立て、高皇産神以下八柱を忌られた。忌部の祖、天富命は諸の忌部を率いて神鏡剣璽を正殿に奉安し、中臣氏の祖、天種子命(あめのこやねのみこと)は天神(あまつかみ)の喜詞(よごと)を奉安し、物部の祖・可美真手命(うましまでのみこと)は内の物部を集め鉾盾をとりて威儀につき、大友氏の祖、道臣命(みちおみのみこと)久米氏の祖、大久米の命はともに大友部、久米部を率いて宮門を護衛し、威風凛然、四方の國をして天位の貴きを観ぜしめられたのである。この時の儀式なる者は後世の模範となるものであるがいはゆる報本反始(「礼記」郊特牲の「本に報い、始めに反(かえ) る」から。自然や祖先の恩恵に報いること)の祭天の儀式であったのである。その後の即位の御大礼は委しくこれを知ることができぬ。しかしこの時代は無論践祚すなわち即位であったから先帝が御崩御になれば新帝に三種の神器を傳献する、これがすなわち即位であったのである。二十一代雄略天皇の時代には「天皇、有司に命じて、泊瀬朝倉に設壇、即天皇位す」(日本書紀 巻第十四の一)
とあるも、その式辞はどうであったか今知る由もない。三十三代の推古天皇の朝に聖徳太子が出られて大いに我が国の文化が発達したは云ふまでもなく、孝徳天皇の大化維新に及んで、即位の大礼にも多少唐制の入来たったのであらう。一説には三十八代天智天皇の時に唐制に改まったと云ふが、四十一代持統天皇の即位の礼が矢張り祭天の古儀であるより考ふれば、実際に即位の礼が唐制に改まったのは稍おくれるのであらう。・・後三条天皇(第71代、11世紀)は真言密教の源意に依りて即位灌頂の印明を相伝せられ大日覚王の見地に立って、高御座壇上に神人一体の智拳印を結ばれたのである。のち此のことが先蹤といふことになって、その後はなんの変化もなくて七十八代高倉天皇(12世紀)に及んだのである。第百十四代後柏原天皇は御践祚あそばしたがその後二十余年間も御即位式をあげ給ふことができなかった。しかし幸いに永正十八年三月(1522年)に及んで漸く紫宸殿に御即位式を挙げさせ給ふに至った。これより以降孝明天皇(121代・19世紀)に至るまで十八代三百七十余年間御即位の大礼は紫宸殿に御挙行あそばされた。(明治天皇は慶応四年八月二七日紫宸殿に挙げさせたもふた。)

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