福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

角田さんに「福聚講・10月高野山・信貴山巡拝記録」をつくっていただきました。その5最終回

2010-10-11 | 開催報告/巡礼記録
5月3日午前4時45分、本堂で大般若祈祷が行われ、加持祈祷に一同浴した。大きな戒壇と我々の座っている所とは御簾で区切られていて,戒壇の中にいる僧侶の姿がはっきり見えない。大般若経を詠唱する声が、厳かに聞こえる。そして、ここでも「理趣経」が読誦される。
午前5時30分、本堂の高床台に出る。東の大空に朝焼けが映え、悠久の世界の広がりを見る思いに浸された。眼下には、大和平野が見下ろされ、遠くに、山々が重なり、連なっている情景は、この世のものとは 思えないような感動が、静かに沸き起こってくる。まさに仏様同志の自受法楽の世界である。

午前6時30分、同じ本堂で、我われ福聚講一同のために、院主様自ら、導師になって、御祈祷を授けて戴いた。大般若の御祈祷が時が過ぎるにつけて高揚する。さらに、高潮する。導師の激しい「喝」が入ると、僧侶たちが一斉に、分厚く束ねた経本を、激しく経机に大声を出して、叩きつけ、荒ぶる激しい怒りが、怒涛のようにあげられる。激情の嵐がうねりを立てて、繰り返し迫ってくるのだ。その中で、導師が、我われ講員の一人ひとりの名前を読み上げて、祈祷して戴く。これは、初めて、経験する御勤めであった。もう、心魂は、興奮状態にあり、一層の有り難さを感得する瞬間だった。誰でもが、有り難さを感じるに違いない。

この御勤めは、高原先達が特に福聚講講員一同の心願成就を頼んでいただいたて行なわれたものである。後でめいめいが、有り難いお札まで戴いた。

この後、本堂の地下にある地下道に入り、文字通り、真っ暗闇のなかを手探りで「南無大師遍照金剛」と皆で唱えつつ歩く。「戒壇巡り」といい,覚鑁上人が、850年前に奉納したという如意宝珠が奉安されている納所の鍵に触れて霊験を戴いた。ここも、灯りを遮断した暗闇の世界で、ただ一途に、仏を頼りに一心に、前に進むことしかできない。静かに功徳を戴くように念ずることしかできない「仕掛け」があった。この度は、高野山野万燈会といい、授戒堂の授戒といい、暗さの効能を感知することで、仏心を頼りにせざるを得ない、昔の人々の智慧が、脈々と流れて
いることを思った。

信貴山と云えば、鳥羽僧正覚猷筆の国宝信貴山縁起絵巻が、有名で学校の教科書にも紹介されているほどだが、実際に、信貴山にお参りしたのは初めてであった。同じ絵巻で、鳥獣戯画で有名な、京都・高山寺の規模ぐらいのお寺と思っていたが、なかなかどうして、大掛かりのお寺だった。

午前7時、本堂を出て、信貴山の境内を回った。朱塗りの夥しい千本鳥居が立ち並ぶ、九十九折りの勾配のある山道を歩く。多宝塔―空鉢護法堂。ここは、命蓮上人が、竜王の教えを蒙り,貪欲な長者に空鉢を投げて倉を飛び返らせ、驚き嘆く長者に慈悲の心を諭して福徳を授けたという霊験から、一願成就の篤信がなされている。-榧(かや)の木稲荷社。ここは、大和朝廷の時代に一粒の実が萌芽して今日まで生きて、天を覆う程になったという御神木がある。-再び、玉蔵院に戻って、浴油堂。明治維新の廃仏毀釈の時、信貴山は、荒廃した。時の管長であった密昇大和尚は、この浴油堂に籠り祈願した。次いで、先代管長の密厳大和尚も、毎朝3時から、籠もり浴油法という真言密教の中でも最秘宝といわれる秘宝を祈願して、お山の再興の礎を築くという偉業を成し遂げ、願い事は、なんでも叶えてくださる毘沙門天王の秘宝があるという。

午前8時、野沢院主様の案内で、堂宇の八部屋六十八面の美しい襖絵、日本画家の箱崎睦昌画伯の筆で、春夏秋冬を描いた大作を鑑賞させて戴き、懇談のお茶を戴いた。高原先達のおかげで福聚講ならではのおもてなしを戴いたのである。この後、午前10時、当地で解散となり、めいめい帰路に就いた。

思えば、今回の巡礼行は、一日一万歩を超えるウオーキングでもあった。快い疲労と神仏の懐深く分け入ったという達成感、何度訪ねても興趣尽きない高野山。お寺は、長い信仰の歴史と伝統、文化、芸術、思想を発信する中心地であったことが信貴山のパノラマのような、境内をみて回って考えさせられたしだいです。こういう立派な伽藍も「お前達衆生のこころも体も本来此の伽藍と同じで霊妙で功徳のあつまったものであるのだぞ」ということをこれでもかこれでもかと先人が教えるために築かれたものでもありましょう。高原先達様にこうした機会を与えてくださったことに深く感謝致します。また、講員の皆様にも大変お世話になりました。有難う御座いました。(2010・10・6記・角田)
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