大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 1月25日 深夜の音

2016-01-25 20:03:53 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月25日 深夜の音



 学生時代に体験した奇妙な出来事です。
当時、週末になると友人Kの家で夜通し遊ぶことが多かった。
 友人宅は一戸建てで結構広く2階にもトイレがあるような家で、私と共通の友人でその家に行き3人でよく遊んでいた。
 Kの部屋は2階にあり、深夜2時を回っても1階からドアの開け閉めのバタンという音や足音などがよくしていた。
大体4時頃まで、その物音は不定期に鳴る。
 Kは両親と同居しているので、当然Kの親が立てている音だと思っていた。
1年ほど経った頃、相変わらず物音がするので、ふとKに尋ねてみた。

「 Kの親って、結構寝るの遅いんだな。」
「 いや、とっくに寝てるよ。」
「 え?でも1階からよく物音するよ?」
「 知ってる、けど両親じゃない。」

私は冗談かと思ったのだが、Kはいわゆる怪談の類が大嫌いな人で、とてもこんな冗談を言うはずがなかった。
 さらに、Kの家に来ている共通の友人Tは、何故かその物音がまったく聞こえていないと言う。
私とKははっきりと聞こえているのにTのみが聞こえていない。
 それも冗談かと思い、Tとは軽い口論になったほどなので、恐らく冗談ではないのだろう。
ただ、物音だけがする程度なので、不思議だとは思いつつも恐怖を感じるほどではなかった。
 しかし、ある日、いつもの3人でK宅に集まった夜のことだった。
深夜になると例の物音が始まった。

“ また始まったなぁ・・・。”

と思いつつKの顔をチラリと見ると、Kも私の顔を見て頷いている。
そしてTは全く気づいてないようだった。
 ところがなんとなくだが、普段と雰囲気が違う。
言葉では説明できないが、いつもの物音とは何かが違っていた。

“ 何か変だなぁ・・・。”

と思っていたところ、ゆっくりと階段を上がる足音が聞こえてきた。
 流石にこれには肝を潰し、意識を足音に集中した。

“ ミシ、ミシ・・・、ミシ、ミシ・・・。”

と、明らかに誰かが階段を上ってきている。
 そして、そのあたりから3人の会話が完全に途切れた。
聞こえていないだろうTも何故か話をしようとしなかった。
 ゆっくりと階段を上がって来る足音。
そして、その足音はとうとう階段を上がりきったようで、今度は2階の廊下から聞こえてきた。

“ トン・・・、トン・・・・。”

と歩く音がする。
 そして、その足音は私たちのいる部屋の前で止まった。
瞬間、物凄い緊迫感が走った。
何者かがふすま越しにこちらを見ている気がする。
その視線と気配に圧され、激しい恐怖に襲われた。
 様子を窺っていると、やがて気配が突然フッと無くなり、妙な圧迫感も無くなった。
流石にこれは本気で怖かったので、Kに、

「 何か、いたような・・・?」

と聞いてみても、

「 さあ・・・、分からないけど・・・。」

と言うだけだった。
 Tは私たちの会話の意味は分かっていなかったと思う。
それで、Tには後日、このことを話してみたら、やっぱり何も感じてはいなかったとのことだった。
会話が途切れたのは、たまたま偶然だろ、と言っていた。
 やがて社会人になり、互いに忙しくなかなか集まる機会が無くなったのだが、たまたまばったりKと会ったので、物音はどうなったか尋ねてみた。
 実はKの部屋のカーテンレールにピエロのマリオネットがいつもかけてあり、フリーマーケットで買ったものだそうだが、それを捨てたところ、件の怪現象はパッタリ無くなったと言っていた。
 なんとなくだが、物音の主は子供だったような気がしていた。
あの人形に憑いていた何かだったのかなと思っている。










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