大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 1月15日 祠のこと(1)

2016-01-15 18:18:30 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月15日 祠のこと(1)



 学生時代の友人にKというヤツがいた。
Kの家は鬱蒼と生い茂った雑木林の先にある山の中の一軒家で、遊びに行くのが少し怖かった記憶がある。
 実際にKは、家と街を結ぶ山道でいろいろと変なものを見たことがあるらしい。
視界の片隅に浮遊する生首のような物が見えたが、焦点をそちらに合わせると何も無いだとか、見慣れぬ子供たちから、獣の死骸に石をぶつけるのを誘われたりとか、まあ、いろいろである。
 そんなKが高校生の頃の話である。
野球部に在籍していた彼は毎日のように帰りが遅く、家に着くのは日が暮れてからであった。
街灯もまばらで、申し訳程度に舗装された頼りない道を、自転車のか細いライトを頼りに懸命にペダルを漕ぎ、風でざわめく雑木林を振り切ると、ようやく我が家の明かりが見えてきてホッと息をつけるのだという。
 しかしある晩、その明かりがKを出迎えてくれなかったことがあった。
いつもなら一家団欒の頃で、テレビでも見ながらご飯を食べているような時間である。
ところが今日に限っては、闇夜に家のシルエットが浮かび上がるだけで、にぎやかな声も聞こえない。
玄関は開いているが、ただいまの声に返答は無い。

“ 自分に内緒で外食にでも行ってるのか・・・?”

と、Kはかすかな不安を覆い隠しつつ、二階の部屋へと向う。

「 ・・・!!」

と声にならない声を出し、Kは後ろへ飛び跳ねて今にも階段から転げ落ちそうになった。
 誰もいないとばかり思っていたが、薄明かりを灯しただけの暗い部屋に祖母・母・妹が鎮座していたのである。
妹は先まで泣いていたようで母の膝の上で寝息を立てており、祖母は数珠を手に何やら経文を唱えている。
 何事かと髪の乱れた母に尋ねると、

“ 父の様子がおかしい・・・。”

と、よく分からない説明をした。
 恐る恐る居間へ忍び寄ると、そこには大酒をかっ喰らいイビキをかいている父の姿があった。
辺りには割れた瓶や、魚の骨や肉のパックが散乱し酷い有様だった。
それを父が生で食べたと思われた。

“ 勤め先で何か嫌な事でもあって荒れたのだろうか?”

とも思ったが、それにしては異様な光景である。
父を揺り起こすと、意外にもいつもと変わらぬ呑気な口調でお目覚めのご挨拶があった。










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