大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 1月6日 古い神社

2016-01-06 18:02:26 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月6日 古い神社



 俺は昔からずっと夢でみる光景がある。
橋の向こうに一本道がある。
その向こうには古い神社。
歩くと足元の砂利が気持ちイイ音をたてる。
木でできた鳥居。
人気の無い神社に砂利の音と川が流れる音が聞こえて、そこにいると何故か幸せな気分になった。
ある程度大きくなると、多分自分の不安がそういう夢にあらわれるんだろう、と分析するようになった。
 俺は赤ちゃんの頃に両親が離婚し、父親に引き取られた。
生後6ヶ月で離婚だったので、1ヶ月違いで生まれた従妹の母親(俺からみると叔母)に育てられた。
父は酒飲んでは暴れるんだが、田舎で長男だったせいか誰も文句言わなくて、俺も小さい頃から殴られる蹴られるは当たり前、酒瓶で殴られたりしたこともあった。
見たこともない景色は、誰か庇護者を求める自分が描き出したもので、神社にそれを求めているんだろうと分析した。
 ところが、俺が社会人になってすぐ叔母から母が亡くなったと連絡があった。
親父は連絡するなと言っていたらしいけど、叔母が教えてくれた。
葬式は終わったようだけど、とりあえず母を知る機会だと思い、母の生まれ故郷である東北のある村へいった。
 そこで初めて母の写真を見たが、全然何も思わなかった。
祖母とも会ったけど、懐かしいとも思わず、何故かがっかりした。
一目みて、これが母さん・・、みたいな展開を軽く期待したからだ。
でも、残念ながらそういうドラマみたいなことは起きなかった。
 その日はそこに泊まることになった。
祖母に誘われて近所に散歩に出かけた時、そこで見たことのある景色を見かけた。
川があってその向こうに一本伸びる道。
そこを辿っていくと夢で何度も見た神社があった。
 祖母に聞くと、母は初めての出産ということでここに戻ってきて俺を生み、よくこの神社へも散歩にきていた、ということらしい。
俺がそこの村にいたのは生後2ヶ月目までで、それ以後一度もいったことはない。
6ヶ月には親が離婚していたし、写真も全部親父が捨てた。
 そもそも、2ヶ月というと多分目もそんなにはっきり見えているわけでもないと思うから、どうやってあの神社のことを記憶していたのかもわからない。
でも、そこを歩くと聞き覚えのある砂利の音がして、川の流れる音が聞こえ、目の前には古ぼけた神社がどっしり構えていた。
母の写真や祖母の顔を見ても懐かしいと思わなかったのに、何故かその神社を歩きながらボロボロ泣いてしまった。










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