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日々の恐怖 1月22日 顔の無い人

2016-01-22 19:24:11 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月22日 顔の無い人



 Kさんが以前勤めていた会社で、年配の女性社員の方から聞いたと言う話です。
その人が若い頃のことなので、数十年も前の話です。
 Kさんは休暇で友人と旅行に行ったときに、ある登山グループの一行と出合ったそうです。
一行は7人の若い大学生のグループで、そのうち女の子が1人だけいたそうです。
 登山グループと女性社員のグループは電車の席が隣り合わせになったので、しばらく楽しく談笑したり、お菓子を上げたりして過ごし、降りるときには、

「 じゃあ気をつけて行って来てくださいね。」

と、明るく手を振って別れたようです。
 それから1週間ほど過ぎたとき、テレビで大学生の登山グループが山に入ったまま予定日を過ぎても帰って来ない、連絡も取れなくて、遭難した模様だというニュースが流れました。
女性はニュースを見て、すぐに、

“ あの子達だ!”

と思いました。
グループの構成人数も、日にちも、向かった山も全部一緒です。

“ 電車で一緒になったあの子達が遭難したなんて・・・。”

と信じられない気持ちでした。
 どうか無事に帰ってきて欲しいと願ったようですが、残念ながら2,3名がかろうじて救助されましたが、他の方たちは全員山で亡くなりました。

「 それが妙なのよね・・・。」

とその女性が言うのが、どうしても亡くなった人たちの顔が思い出せないのです。
 電車では1時間半ほど隣り合わせて座って、見知らぬもの同士だけど、ずっと楽しく会話していたのに、まったく顔が思い出せない。
 7人グループで女の子が1人、そのうち大人しそうな子が1人いて、その人が女の子のリュックを網棚に上げてあげてたら、他の子たちからヒューヒュー言われて真っ赤になってたとか、些細な事もみんな覚えているのに、なのに顔がどうしても思い出せない。
女の子も、その子も亡くなったそうなのですが、髪が長かったか短かったかさえ思い出せない。
 それが自分だけじゃなくて、一緒に旅行に行った友達も同様で、まるで顔が無いように、どうしても亡くなった人たちの顔が思い出せなかったのです。
 年配の女性社員はKさんに、

「 たいして日にちも経ってないし、1時間半も隣り合わせていたんだから、1人くらい顔を覚えていても良さそうなもんなのに、誰の顔も覚えてないのよ。
友達とも、

“ どうしてだろう・・、不思議だね。”

と言ってたんだけど、あんなこと初めてだった。」

と、話してくれたと言うことです。











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