日々の恐怖 1月8日 駐車場の女(2)
しばらくジッと身を屈めたあと、
“ もういいかな・・・?”
と見ると、女はいなくなっていたようです。
その後は、もう無理と後部座席に移動し寝たそうです。
「 本当に見なかった?すげえヤバかったよ。」
「 そういえば、何か変な音したかも・・・。」
「 だろ?
なあ、車見た方がいいって!
手形とか、ついてんじゃねえかな?」
とか言い出したので、2人で車に行って見てみると、手形は全くなかったのですが、何とボンネットの先端辺りがペコッと小さく凹んでいました。
“ 何だ、これ・・・?”
と呆然としていると、後部を見ていた兄ちゃんが、
「 後ろにも傷がある!」
と言うので見ると、確かにエンブレムの上に、小石でもぶつけたかのような細いボコボコがありました。
2人で、
「 何これ怖い・・・。」
「 どうしよう・・・。」
と話しといると、もう一台のトラックからおじさんが降りてきて俺らに歩みより、一言、
「 女の話だろ?」
と言いました。
話を聞くと、おじさんも普通車が来たので珍しいなと思いつつウトウトしてたそうです。
しばらくして俺の車を見ると、女が窓の横に立っていて車の中を覗いていた。
“ どこから来たんだ・・・?”
と思い駐車場を見渡したけど、それらしい車は無く、
“ ああ、この車に乗ってたのか・・・・。”
と思ったそうです。
おじさんは特に不気味とは思わず、ジーッと見ていたら、突然女がパッと横を向き、ツカツカともう一台のトラックの方に歩き始めたそうです。
そして、今度はトラックの前方に立ち、ジーッとフロントガラスを見上げ・・・・・。
「 いやいやいやいや・・・・・。」
ここまで聞いてメガネの兄ちゃんは顔面蒼白。
俺が、
「 え?その人その後は?」
と聞くと、
「 気持ち悪くなって寝た。」
との事でした。
俺は地元だけどそんなの初めて聞いたし、2人はよく利用してるけど初めて見たそうです。
ちなみに、
「 どんな人?」
って聞いたら、
「 髪が長くて、ガリガリの人でスカート履いてる。」
と。
2人は、俺の知り合いじゃないか?とか言ってきましたが、まったく身に覚えもないです。
何が起こったのかすらわかりませんが、それから車中泊はしていません、板金代かかりますし。
生きてる人の話だとして、こういう例はあるようです。
精神的に病んでしまった人が夜間の駐車場を彷徨って、運転手らに何かしらの因縁をつけて絡んでくる、あるいは反撃されて被害者になりたがる例があるのだと、警備の仕事をしている知人から聞いたことがあります。
地元警察なんかだと常連として扱われるそうで、縄張りとして特定の幾つかの駐車場をウロツクそうで、カラオケ屋の駐車場なんて例もあるようです。
やはり気候が穏やかな時期の出没例が多いそうですが、本人も車やスクーターで移動しているので通報すると逃げてしまい、警察が来るまで身柄を抑えようとすると、逆に暴行を受けたと被害届けを出そうとする例もあり、極めて厄介なんだそうです。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ