大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 2月14日 恐怖心

2016-02-14 19:55:38 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月14日 恐怖心



 夏の寝苦しい夜の出来事です。
その日、猛暑と仕事で疲れていた私は、いつもよりかなり早めの9時頃に、子供と一緒に就寝することにしました。
 疲れていたのですぐに寝入ることは出来ましたが、早く寝過ぎたのと暑さのせいか、夜中に目が覚めてしまいました。
まだ目は閉じたままでしたが、ふと気が付くと、軽く握った自分の左手のひらの中に何かがありました。
 それは誰かの指のようでした。
同じベッドに寝ている子供は自分の右側に寝ているはずです、いつもそうしてますから。
それに、それは子供の指にしては大きすぎるのです。
 ドキッとしましたが、目を開けて確かめる勇気はありませんでした。
それなのに、自分でもどういう訳か分かりませんが、反射的にギュッとその指を握ってしまったのです。
 それは確かに人間の指でした。
不思議と恐怖心は湧いてきませんでした。
というより、その指はどこかでさわったことの有るように感じで、懐かしくさえありました。

“ 妻か・・、あるいは親か・・・。”

とにかくそんな感じがしました。
そんなことを考えていると、左手の中に握られた指の感触がスッとふいに消えて無くなりました。
 しかし、今度はすぐ横に人が座っている気配、というより圧迫感を感じました。
その圧迫感が段々と重みに変わってきて、体中から冷や汗がドッと出てきました。
こんなことは初めての体験でした。
 さすがに怖くなってきて、知っているお経を頭の中で何度か唱えました。
しばらくすると、その気配も突然スッと消えて無くなりました。
ほっとして、ゆっくりと目を開け、まわりを確認しましたが、何も変わったところはありません。
子供は静かな寝息を立てて、やはり右側に寝ていました。
 しばらく横になって、今の出来事を思い返してみました。
その時、ふっと亡くなった祖母の記憶が蘇ってきました。
 自分にとって祖母は母親代わりの人でした。
そんな祖母が老衰と院内で感染した病で、余命幾ばくも無くなっていたときのことです。
週に何度か見舞いに行っていましたが、いつもはただ寝ているだけの祖母が、その日に限って目をぼんやりと少しだけ開けており、私に向かってゆっくりと手を差し出してきたのです。
 それは、まるで助けを求めているかのようでした。
私はある種の恐怖心のようなものをその時感じてしまって、弱々しく差し出されたその手を、どうしても握り返してあげることが出来ませんでした。
 それからしばらくして祖母は亡くなり、私はその日のことを後悔しました。
感傷的になっていると思われるでしょうが、

“ さっき握った指は、祖母のものだったのかも・・・。”

と思うと涙が出そうになりました。











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しづめばこ 2月13日 P420

2016-02-13 21:22:24 | C,しづめばこ


しづめばこ 2月13日 P420  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 2月12日 兄の話

2016-02-12 19:45:34 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月12日 兄の話



 東京在住のSさんの兄の話です。
私の兄は神奈川県の某老人病院で看護士をしている。
その病院では、夜中に誰も乗ってないエレベーターが突然動き出したりなど、いかにも病院らしい話がよくあるとのことだった。
その兄が、今迄で一番怖かったという話です。
 その日、兄は夜勤で、たまたま一人でナースステーションで書類を書いていた時、ふと視界のすみの廊下で、人影がふらふらしているのが目に入った。
その時兄は、入院している患者が夜中に便所にでもいくのだろう程度に思っていたらしい。
 だが何時迄たっても、視界のすみでその人影は廊下をふらふらとしている。
ちらりと目をやると、どうやら髪の長い、浴衣を着た若い女のようだ。
きっと昼間寝てしまい眠れなくなってしまったのだろうと、書類にまた目をもどしたその瞬間、

“ そんなわけないッ!!”

と、咄嗟に頭の中で考えた。
 この病院は老人専門の病院だ。
若い女なんかが入院してるわけがない。
 同じ夜勤の看護婦ならナース服を着てるから一目でわかる。
危篤の患者の家族だとしたら、自分のところにも連絡がきてるはずだ。
第一今晩、危篤の患者など、いやしない。

“ では一体!?”

と顔をあげたその目の前、鼻先がくっ付かんばかりに女の顔があった。
 長い髪、血の気のない無表情な顔、何も映っていない瞳。
その瞳と目が合った瞬間、兄は踵を返し、後ろを振り返る事なく一目散に下の階のナースステーションに駆け込んだ。
 怯え慌てふためいてる兄の様子を見て、その階の看護婦はまだ何も言って無いのに一言。

「 そのうち慣れるわよ。」

そのとき兄は、女の方がよっぽど肝がすわってると思ったそうだ。
ちなみに病院と女の因果関係は、結局判らずじまいだそうだ。










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日々の恐怖 2月11日 幻影(4)

2016-02-11 19:53:51 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月11日 幻影(4)



 Kさんは、とっさに茂みに身を隠しました。
逃げようとして下手に動くより、藪に隠れてやり過ごそうと考えたのです。
 その白骨は、相変わらずフラフラと歩いてきます。
そしてよくよく見れば、何かを引きずっているようでした。
その引きずってる物を見て、Kさんは再度仰天します。
それは、足に縄を掛けられた白骨でした。
 しかし、引きずっている奴が狩衣を着ているのに対して、引きずられている白骨は立派な着物を着ています。
恐らく、貴族か何かなのでしょう。
Kさんが推測するに、

“ 狩衣の男は主殺しをしたのではないか。”

との事です。
ここで言う主とは、引きずられている貴族風の白骨。
その従者たる男は、その罪の為に死罪となったのではないか。
 が、当時のK少年は、そんな事を考えるほど余裕がありません。
ただただ、

“ 頼むから気付かれませんように。”

と願うのが精一杯でした。
 やがてその白骨は、Kさんの隠れている茂みの前までやって来ました。
そして、そのまま通り過ぎてくれるかと思いきや、そこで立ち止まって周囲を見渡し始めました。

“ しまった、気付かれたか!”

狩衣の白骨は、縄を持つ方とは逆の手を、そろそろと腰の刀に伸ばします。
もはや一刻の猶予もなりません。
 見付かるのは時間の問題であるように思えました。
いや、既に見付かっているのかも。

“ じっとしていても見付かる。
ここはイチかバチかやるしかない。”

 Kさんは声にならない声を挙げながら藪から飛び出し、一足飛びに道を飛び越えて、転がるように山を下り始めました。
後ろからは刀が空を切るような音がしましたが、振り返る勇気などありませんでした。
 躓いたり転んだり、枝に顔を打たれたりしながらも必死に山を下り、気付けば自分の住む村のすぐ近くの道に出ていました。
日はすっかり昇っていましたが、それでも安心できずに村まで駆けて行きました。
 村では、

「 Kが消えた、神隠しにでも遭ったのではないか・・・?」

と話し合ってる最中でした。
 Kさんは事の次第を両親に話したそうです。
それを聞いた両親は、

「 山の神様が息子を護って下さった。」

と大層喜んだそうです。
 また、2人の女性が話した自分の名前ですが、

“ 1つは村の近くにある山、もう1つは少々遠方だが有名な山に居る神様の名前ではないか。”

との事でした。
 狩衣の男と貴族の白骨に関しては、両親も全く知らなかったそうです。
Kさん自身も色々調べてみましたが、結局分からなかったそうです。
もし、Kさんが女性の言う事を聞かずに、最初の道を行ったらどうなっていたか、もし、狩衣の男に捕まっていたら・・・。
すべては闇の中です。











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日々の恐怖 2月10日 幻影(3)

2016-02-10 19:25:07 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月10日 幻影(3)




 すると、2人はそれぞれ名前を言いましたが、やたらと長くて難しい名前でした。

「 立派な名前ですね。」

と言うと、二人は笑って返しました。
そして、

「 私達は皆、こんな名前だから。」

と言いました。

 やがて、夜も明けてきました。
すると、

「 そろそろ山を下りなさい。
さっきも言ったけれど、ここを真っ直ぐ下りなさい。
途中で細い道があるけれど、それを行ってはいけない。
その道を越えて、更に下へと下りなさい。」

Kさんは、

「 その細い道は何の道なんですか?」

と質問しました。
でも二人からは、

「 知っても、しょうがない事だから・・・。」

と返されるだけでした。
 2人に別れを言い、Kさんは山を下り始めました。
下りる途中、後ろを振り返りましたが、既に灯かりは消えて人の気配も消えていたそうです。
 女性に言われた通り山を下ったKさんですが、さっき言われたような細い道が見えてきたそうです。

“ ここを下った方が、早く山から出られそうなんだけどなぁ・・・。”

そんな考えが頭を過ぎります。

“ 行っては駄目だと言われたけど、見た目は全然普通の道だし、この道を下ってしまおう!”

そう思って踏み出そうとした時です。
道の奥から、人が1人歩いて来るのが見えました。

“ なんだ、俺以外にも人が居るじゃないか。
やっぱりさっきの2人は狐か狸だ。
この道を無視して更に下ったら、滝壺なんかがあるに違いない。
危ない危ない、騙されるところだった。”

そう思いながら、道を歩いて来る人に声を掛けようとしたKさん。
 が、相手の姿を見て絶句してしまいました。
見た目は確かに人でした。
そして、昔の貴族の従者が着てるような狩衣を着ています。
 しかし、Kさんが驚いたのは、その人の服装ではありません。
その狩衣を着た人物、袖から出ている手足に、皮膚も無ければ肉も無い。
要するに、白い骨が剥き出しになっていました。
 また顔には、目の部分だけに穴を開けた木の面を被っています。
その下も白骨であろう事は、当然予想できました。
そいつがフラフラと道を歩いて来る。

“ 何故白骨が歩けるんだ。
これこそ、おかしいじゃないか・・・。”









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日々の恐怖 2月9日 幻影(2)

2016-02-09 19:34:50 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月9日 幻影(2)



“ 綺麗なのは大変結構なんだが・・・。
でも、どうしてこんな山の奥に、女性が2人きりで居るんだろう?”

何も話せずに突っ立ってるKさんに、片方の女性が、

「 そこでは寒いでしょう、近くで当たりなさい。」

と、優しく声を掛けてくれました。
 Kさんは無言で火の近くに行くと座りました。
2人は相変わらず話を続けています。
 そこで、Kさんは変な事に気付きました。
目の前の焚き火なのですが、確かに燃えている。
燃えてはいるが、薪が無い。
また、音も全然無い。
ただ、地面の上で火が燃えてるだけなのです。

“ こんな火などあるものか。
きっと、この2人は人ではない。
狐か狸か知らんが、きっと化かされているのだ。
これは大変な所へ迷い込んだものだ。
せめて、怒らせないように気を付けないと・・・。”

さっきまでは人が居て助かったと思っていたKさんは、急に心細くなりました。

“ 兎に角、目の前の2人は人でない事は確かだ。
下手をすれば、命まで取られかねない。”

すると突然、

「 お前は、○○の所のKでしょう?」

声を掛けられました。
先程声を掛けてきた女性が、いきなり話し掛けてきたのです。

“ 何で俺の事を知っているのだ?”

内心ビクビクしながら、正直に答えようかどうか迷いました。

“ 正直に答えたら、喰われてしまうかも知れん。
何せ、今まで俺は結構な数の狸だの狐の皮を剥いでるんだ。
こんな所で仲間の敵討ちなどされたら、逃げようが無いじゃないか・・・。”

声を掛けた女性が続けます。

「 隠さなくても良い、こちらはお前の事をよく知っている。
お前の父や母の事も、よく知っている。」

Kさんは何を言われているのか全然分かりませんでした。

“ 俺の父親や母親を知っているってどういう事だ・・・。”

もう1人の女性が、答えに詰まっているKさんを見かねてか、

「 あまり子供を驚かせるものじゃない。
見なさい、怖がってるでないの。」

と、助け舟を出してくれました。
 彼女は続けて話します。

「 私達に化かされていると思ってるみたいだけど、決してそんな事はしないから安心しなさい。
明るくなってきたらね、道を1つ越えて更にずっと下りなさい。
そうすれば、村への道に出られるから。」

何とかKさんは声を出しました。

「 何で俺の事を知ってるんですか?
二人は誰?」











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日々の恐怖 2月8日 幻影(1)

2016-02-08 21:02:20 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月8日 幻影(1)



 私の父親は山好きです。
当然、山関連の友人も多く、私も山へ行く度にそうした方々と話をしました。
そして、その友人の中にKさんという方が居ます。
 私が彼と最後に話をしたのは高校生の頃です。
高校卒業後、進学の関係で地元を離れてからは一度も会っていない上、結構な年齢に達していた筈なので、今は亡くなってしまっているかも知れません。
 Kさんは県内でも山深い山村の出身で、実に色々な話を知っていました。
私にも沢山の話を教えてくれましたが、その中でも印象深い話をさせて頂こうと思います。

 Kさんが少年の頃(戦前)、罠を仕掛けては狸や狐、イタチなどの小動物を獲っては、皮を剥いで売っていたそうです。(当然、今では許されない事だと思いますが)
そんなある日の事、Kさんはいつものように仕掛けた罠を見回りに、山へと入りました。
獲らぬ狸の皮算用をしていたKさんですが、その日の収穫はゼロ。
すっかり気落ちしたKさんは、元来た道を引き返し始めました。
 ところが、通いなれた道、目を瞑ってでも帰れる、自信のある山道であった筈なのに、周囲の風景がまるで違うのです。

” どこかで道を間違えたのか?
いいや、そんな筈は無いんだが・・・。”

Kさんは見覚えのある道を探し始めました。
が、行けども行けども知らない場所ばかり。そうこうするうちに日も暮れ始めました。

“ これはいよいよマズイぞ。
下手をしたら、山で夜を明かさないといけない。”

 何とか元の道に出ようと必死になりましたが、全ては徒労に終りました。
すっかり暗くなった山の中でKさんは途方に暮れました。
 ところが、耳を澄ませると、どこからか人の話し声が聞こえる。
最初は幽霊か何かと思ったのですが、よくよく見渡せば遠くに灯かりも見える。

“ しめた!人が居る!
今日はあそこに厄介になろう。”

Kさんは灯かりを目指して歩き始めました。
 やがて、灯かりのすぐ目の前まで来たKさん。
焚き火がチロチロと燃えています。
焚き火を起した主に事情を説明しようとしたのですが、そこで言葉に詰まってしまいました。
 焚き火の前には、2人の人が居ました。
どちらも女性で、焚き火を挟んで向かい合い、何事かを話しています。
2人はとても美人で、豪華な着物を着ていました。










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しづめばこ 2月7日 P419

2016-02-07 19:55:01 | C,しづめばこ


しづめばこ 2月7日 P419  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 2月6日 田舎暮らし

2016-02-06 18:57:52 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月6日 田舎暮らし



 東京在住の主婦Mさんの大叔母の話です。
Mさんの大叔母がまだ若い頃、田舎にありがちな大家族だった我が家は、敷地内に母屋のほかに別棟が隣接して立ててあり、その1階を納屋、2階を子供たちの寝室にしてありました。
 お手洗いは外にひとつだけでした。
街灯もろくにない時代でしたから、夜は本当に怖かったそうです。
 そんなある日、夜中に大叔母は、小さい方の妹にそっと起こされました。

「 お手洗いに行きたいけど、怖いから窓から見ていて欲しい。」

と言われ、大叔母は窓を開けて、妹が外のお手洗いに行くのを見ていました。
 何度も何度も確かめるように振り返る妹に、大叔母は2階から手を振って見ていることを伝えました。
 妹がお手洗いに入って、暫く大叔母はぼんやりと窓の外を眺めていました。
満天の星空がきれいで、たまにフクロウの声が聞こえたりします。
 そのとき、突然遠くでギャーンという声が聞こえました。
狐の鳴き声です。
狐というのは、猫を叩きつけた時にあげる悲鳴のような声で鳴きます。
田舎なので、いまだに狐もイノシシもいますが、やはり夜中に聞くと恐ろしいものがあります。
 大叔母もはやく妹が帰ってこないかとそわそわしながら、ふと山のほうに目を向けました。
すると、よく晴れていたにもかかわらず、空はただ闇が広がるばかりです。
そしてその中にふうっと浮かび上がった空より黒い山のシルエットの中に、ぽつりと青い火が灯りました。
 驚く大叔母の目の前で、その火は、

“ ポツ、ポツ、ポツ・・・。”

と増えていきます。
 気が付くと、山はいくつもの青い狐火に覆われていたそうです。
大叔母は、そのあまりの美しさに見入っていました。.
 しかし、妹への対応を忘れていた大叔母は、階段を駆け上ってきた妹の形相が恐ろしかったようで、バツが悪くなり布団をかぶって眠りにつきました。
そのとき、狐火は別に実害はなかったそうです。
でもその話を聞いてからは、幼い私は本当に怖くて、納屋の二階にあがることができませんでした。
 このとき大叔母の見ていた山は、斜面に階段状にお墓のある小さな山なんですが、お墓の前に田んぼがあって、一人であぜ道の雑草を刈っていた母が、

「 誰もいないお墓から、仏壇にある鐘を鳴らすチーンという音を聞いた。」

と、青い顔をして帰ってきたことがありました。  
 そこは、周囲を見渡せるところだし、お墓しかないから、そんな音が聞こえるはずがないところです。
私、そこ通学路だったのに、こわ・・・・。











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日々の恐怖 2月5日 女の人がいる

2016-02-05 20:44:48 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月5日 女の人がいる



 うちの実験室には女の人がいる。
気配だけなんだけど女の人で、ラジオをかけながら仕事していたりすると、何もしないのにラジオの入りが悪くなったりする。
 しかも、そこで二人以上で仕事しているときにはそんなことは起こらない。
一人でいるとき、

「 頼む、好きな曲なんだ、聴かせてくれ~。」

とか言うと、入りが戻る。
 この前、その部屋で待ち時間があり、一人やはりラジオをかけながら、手近にあった紙に落書きをしていた。
すると、いつものごとくラジオがダウンしていく。
 2,3回電源を入れ直したけどやっぱり駄目で、そのとき何を思ったのか、

「 じゃぁ、あんたの顔描いたげるからラジオ聴かせて。」

みたいなことを言ってしまった。
 当然、顔なんて見えないから、全くの想像で紙にペンを走らせた。
それで、ラジオのボリュームは戻った。
 何となく最初に描いたのは髪の長い女の人。

「 こんな感じ・・?」

下がっていくラジオのボリューム。

「 違うらしい・・。」

描き直しはじめる。
戻っていくラジオのボリューム。
 次におかっぱっぽい髪型の女の人。

「 これじゃどう?」

変わらないラジオのボリューム。

“ なんか、納得して貰えたのかなぁ・・・?”

よく分からないけど、そこで切り上げて実験室を出た。
この時の一部始終を誰かに見られていたら、きっと変なヤツと思われるよな。
 帰ってから、描いた絵をどうしたもんかと思って、マッチで焼いてみた。
それから、特に何かあったってこともないけど、ちょっと怖いので。











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日々の恐怖 2月4日 ゆうべの寝言

2016-02-04 19:15:26 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月4日 ゆうべの寝言



 高校時代、よく友達の家に仲のいい友人三人で泊まっていた、土曜の夜とか。
友人の六畳間に三人で雑魚寝するんだけど、いきなりおれの右側で寝てた友人が寝言を言い出した。

「 潜水艦が・・・・。」

あんまり唐突だったんで驚いたんだけど、そのときは怖いよりも面白いが先だった。
 結局、友人はその夜三回、

「 潜水艦が・・・・。」

を連発!
 あんまり面白かったんで、翌朝起きてからさんざんそのネタで友人をからかった。
本人は潜水艦の夢なんてまるっきり見た記憶がないという。


 その次の週の土曜日。
またその友人の家に泊まりにいった。
 友人のひとりは早々に眠ってしまい、深夜、例の寝言の友人とふたり、ずーっと話をしてた。
 そしたら、ふいにそいつが黙り込むの。

「 なんだよ?」

って聞いてもずーっと黙ってる。
 それから、ぼそっと、

「 なぁ・・・・。」
「 なんだよ?」
「 あのなぁ、おれと今夜いっぱい話しただろ。」
「 うん。」
「 これが、ぜんぶ寝言だったらどうする?」

そのときの友人の声は、抑揚の無い感情の欠片も感じさせない淡々とした声だった。
 思わずぞーっとしてしまい、それっきり一言もかわさず、布団をかぶって寝てしまいました。
 翌朝、さすがに怖くて聞けなかったです。

「 ゆうべの寝言覚えてる?」










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日々の恐怖 2月3日 私を呼ぶ声

2016-02-03 19:13:41 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月3日 私を呼ぶ声



 小学校2年生の冬に、家に帰ったらいつもは母がいるのに鍵が掛かっていて無人だった。
鍵は持っていたので、開けて玄関で靴を脱ごうとしたら靴のファスナーを噛み込んで手間取った。
 玄関から二階に上がる階段が見えるんだけど、二階から母に呼ばれた。
見上げたら二階の襖がスーって少し開いて、手招きする手が見えた。

“ 何だ、お母さんいたんだ!”

と思って、

「 はーい、ちょっと待って、靴が脱げない!」

って返事して再び靴と格闘、その間も二階から急がすでもなく同じトーンで呼ばれ続ける。

“ もしかしてお母さん、どこか悪くて寝室で寝てるのかな・・・?”

と思い急に心配になって靴を脱ぐのは諦め、片足だけ靴を履いたまま膝で家に上がり、階段を数段登った。
 その時、背後で玄関がガラッと開いて、

「 ○○子!行儀が悪い!!」

って、買い物袋下げた母がいた。
 二階の声は確かに母の声だったから、パニックになって泣き叫んで、それに驚いた母が二階に様子を見に行ったが、窓も閉まっていたし誰もいなかった。











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日々の恐怖 2月2日 早朝の訪問者

2016-02-02 19:32:01 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月2日 早朝の訪問者



 うちのダンナは仕事柄、かなり朝早く起きて出勤する。
だいたい5時には一緒に起きて、私は朝ごはんの、ダンナは出勤の支度をする。
 眠い目を擦って台所に立ち、ダンナが洗面所で顔を洗っている音が聞こえた。
突然インターホンが鳴って、覗き窓から見てみると、見た事も無い小学生低学年の男の子が、ランドセルを背負って黄色い学帽かぶって立っていた。

「 誰?どうしたの?」

って聞くと、その男の子、

「 ママがケガしちゃったから、ばんそうこう頂戴。」

って言ってきた。

“ どこの子だろう?”

って思いながら、台所に戻り救急箱からばんそうこうの箱を取って玄関に行った。
 ドアを開ける前に、

「 ねぇ、どこの子?」

と聞きながらサンダルをつっかけていると、その子、

「 僕のママ、血がいっぱい出ているの。」

と言う。

“ じゃあ、ばんそうこうじゃ間に合わないんじゃない?”

と思いながら、

「 どうやってケガしちゃったの?」

と聞くと、

「 ママ、血がいっぱい出て動かなくなっちゃったの。
早く開けてよ。」

って言った。

“ なんか恐くてヤバい!”

と思って、

「 うちは駄目!どっか他所に行って!」

と言うと、ドアを凄い勢いで蹴った音がして静かになった。
 ドキドキしながら覗き窓を覗くと、その男の子が外側の覗き窓の高さまでよじ登って、反対にこっちを覗いてニヤニヤしてる。
ぞっとして後ろに下がって・・・・。


 と、そこで目が覚めた。
心臓がまだドキドキしている。
 ダンナが、

「 あれ?また寝ていたの?」

と言いながら洗面所から部屋に戻ってきた。
 ホッとして、起きて、

“ ご飯を作らなくちゃ!”

と思って布団を出ようとしたとき、右手にばんそうこうの箱を持っていた。

“ あれ?”

と思っているとダンナが言った。

「 さっきお前、玄関にいてなんか騒いでいたから、どうしたのか聞こうと思ってたんだよ。
なんか、ドアとか蹴られてだろ?」












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日々の恐怖 2月1日 近所の家

2016-02-01 20:12:25 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月1日 近所の家



 1年くらい前、近所の人たちが、

「 これ多く作りすぎちゃったから・・・。」

とか、

「 田舎からたくさん送ってきたから食べて!」

と、料理や食料品を頻繁にうちに持ってくるようになった。
 うちも、器を返す時に中にお菓子などをお返しに入れたりして持って行ったけど、

「 そんな・・・、無理しなくていいのよ。」

と言われた。
 しまいには、

「 今日うちの子、風邪で学校休んで、友達が給食のパンを届けにきてくれたから、給食の物で悪いけど食べて・・・・。」

と持ってきた家の人がいて、

“ これは絶対おかしい!”

と思い、母と2人で最近近所の人が食料品を持ってくることを言うと、

「 お宅、大変なんでしょう・・・・?」

と心配そうな顔で言われた。

 聞くと、うちの近所の家約20軒(わかってるだけでも)に、

『 ○○(うちの苗字)です。
突然で大変恐縮ですが、一家の大黒柱でありながら先日失業いたしました。
我が家の経済事情により、明日食べる物も困っている状況です。
どうか、娘と息子の食べる分だけでも何か分けていただければ幸いです。
恥をしのんでお手紙させていただきました。
息子と娘には失業云々を知られたくないので事情を察していただければと思います。(以下省略)』

という内容の手紙が和紙に筆で達筆な字で書かれて、各家の郵便ポストに入れられていたと知らされました。
 それも、各家一通一通内容が微妙に違って、

『 破産宣告を受けた。』

だの

『 生活に困って車も売却する予定。』

だの、ありもしないことが書いてありました。
 もちろんうちの父が失業したとか、経済難という事実は一切ありません。
近所の人づてに怪文書を集めて20枚ほどになり、警察に被害届けも出しましたが犯人も捕まっていないし、何が目的なのか、犯人の心当たりもありません。
 全国の県の市役所のトイレにお金と一緒に筆文字の手紙が置かれた事件をテレビで見た時は、このこととダブってすごい恐怖感を覚えました。
近所の人の話では、朝刊を取ろうとしたら朝ポストに入っていたそうです。
気持ち悪いし、すごく怖いです。












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