極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

辭達而已矣な獅子柚子

2021年02月28日 | 政策論



彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる "招き猫”と、井伊軍団のシンボルとも言える赤
備え(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編成のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ
ー。愛称「ひこにゃん」

 
                     

15 衛霊公 えいれいこう
-------------------------------------------------------------
「人、遠慮なければ、必ず近憂あり」(12)
「これをいかん、これをいかんといわざる者は、われこれをいかん
ともするなきのみ」(16)
「君子はこれをおのれに求む。小人はこれを人に求む」(21)
「過ちて改めざる、これを過ちと謂う」(30)
「仁に当たりては、師にも譲らず」(36)
-------------------------------------------------------------
41 ことばは、意志を正確に伝えるものであればよい。(孔子)
子曰、辭達而已矣。
Confucius said, "Words has only to convey thoughts."





【水ヶ浜シャーレの獅子柚】
獅子柚子は果肉が少なく食用に向かないといわれていますが、実は
様々な栄養成分を含んでおり、皮やワタも加工して食べることがで
きるとか。とにかく大きい。小さな男子のお孫さんをづれのおじ様
が親切に名前を教えて頂いたので早速ネットサーフ。①ヘスペリジ
ン:温州みかんや八朔、ダイダイなどの皮やワタにも多く含まれる、
フラボノイドとも呼ばれるポリフェノールの一種です。別名ビタミ
ンPともされる栄養成分で、抗酸化作用や末梢血管を強くする作用
がある。ヘスペリジンを摂取することで血流の改善や高血圧の予防、
コレステロール値を低くする効果があるとされている。②ペクチン:
獅子柚子には、ペクチンと呼ばれる食物繊維の一種が豊富です。そ
の働きにより腸内環境が整い、下痢や便利を予防する効果が期待で
きる。さらに食物繊維にはコレステロール値を低下させる作用があ
るので、生活習慣病の予防にも効果的とか。この鬼柚子、名前に「
柚子」と付いているが、実は柚子の仲間ではなく、文旦(ぶんたん)
の亜種。香りは柚子というよりは、グレープフルーツのような感じ。
一般名:オニユズ(鬼柚子) 
学名:Citrus grandis(シトラス・グランディス) 
別名:シシユズ(獅子柚子) 
分類名:植物界被子植物門双子葉植物綱ムクロジ目ミカン科ミカン
属ブンタン亜種

● 鬼柚子の丸煮
種以外はすべて使う丸煮。手軽にできる。
1./鬼柚子の重さの半分~同量の砂糖を用意(甘さはお好みで)。
2./鬼柚子の種だけを取り、食べやすい大きさの3mm程度の薄切
りにして10分ゆでる。
3./2をザルにあげて水を切ってから鍋に入れ、ひたひたの水と
砂糖を入れて弱火で30分程度煮る。水分が少し残る程度で火を
止めて出来上がり。

● 鬼柚子のピール
果肉部分は使いません。ゼリーのような食感で上品なお茶うけに
なる。
1./鬼柚子の果肉部分を取り、皮と白い部分を5mmの厚さに切り
計量しておく。
2./5分茹でて水を捨て、再び水を入れて5分茹でる、3回繰り返
す。
3./2の水を切り、鍋に1の重さの8割の砂糖を入れて混ぜ、3時
間程度置いておく。
4./3を中火で焦げないように鍋をゆすって水分がなくなるまで
煮詰める。
5./トレイなどに重ならないように並べて干し、2,3日水分を
飛ばす。
6./5にグラニュー糖をまぶして出来上がり。

  

ポストエネルギー革命序論 258:アフターコロナ時代 68
♘ 現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散の時代」


 貼る注射「マイクロニードルポンプ」
「流れ」を発生するマイクロニードルが薬やワクチンの高速注入
が可能に

痛みを感じない短針が多数並んだマイクロニードルは、美容分野で
急速に普及し、さらにリモート医療の要であるセルフメディケーシ
ョン(自主服薬)や簡易ワクチン投与への利用拡大が期待されてい
る。しかし、薬剤やワクチンをマイクロニードルに塗布(もしくは
内包)して皮膚刺入後に溶出させる従来の方法では、注入量と注入
速度に制限がありました。東北大学大学院工学研究科および高等研
究機構新領域創成部の西澤松彦教授のグループは、多孔性のポーラ
スマイクロニードルを開発し、電気で「流れ」(電気浸透流)が発
生する性質を付与することによって、電気式の貼る注射「マイクロ
ニードルポンプ」による多量・高速の注入、および皮下組織液の高
速採取を可能に。今後は、先に発表したバイオ発電パッチに組み合
わせることで、オール有機物の使い捨て型ニードルポンプパッチと
して、美容・健康・医療分野における経皮セルフメディケーション
および簡易ワクチンへの応用を進める予定。





【今夜の一冊:パンデミック・ニューディル考Ⅲ】



📚 パンデミック:不確実性と時間軸
感染症の流行(エピデミック)とより広範な流行(パンデミック)
には、公的介入を要する市場の失敗を引き起こす要素があるという。
(RIETI - パンデミック:時間軸と不確実性)。それは外部性であ
り、①周りの人が感染していることにより感染しやすくなるという
負の外部性、②逆に他の人々との接触を避けることが他の人の助け
になるという正の外部性の2つであり、これらは時間軸に沿って変
化----今回のCOVID-19による危機は、迅速な公的介入を要する、さ
らなる市場の失敗の原因となる----不確実性を伴う。今回のCOVID-
19による危機のように解消に時間のかかる不確実性、または、しば
しばナイト的不確実性(Knight, 1921)と呼ばれ、それによると、
ナイトの経済学のる最大の業績といわれる著書『Risk, Uncertainty
and Profit(危険・不確実性および利潤)』である。ナイトは確率
によって予測できる「リスク」と、確率的事象ではない「不確実性
とを明確に区別し、「ナイトの不確実性」と呼ばれる概念を構築し
たことである。この時ナイトは不確定な状況を、①先験的確率」で
例えば「2つのサイコロを同時に投げるとき、目の和が7になる確
率」というように、数学的な組み合わせ理論に基づくもの、②統計
的確率」で例えば男女別・年齢別の「平均余命」のように、経験デ
ータに基づく確率、③そして「推定」であり、このタイプの最大の
特徴は、第1や第2のタイプと異なり、確率形成の基礎となるべき
状態の特定と分類が不可能で、推定の基礎となる状況が1回限りで
特異で、大数の法則が成立しない。推定の良き例証として企業の意
思決定を挙げている。企業が直面する不確定状況は、数学的な先験
的確率でもなく、経験的な統計的確率でもない、先験的にも統計的
にも確率を与えることができない----客観的評価が不可能な不確実
性のある推定であると主張する-この
3つのタイプに分類している
(via Wikipedia)。

このように、通常、不確実性の解消の前後、すなわち事前と事後、
を明確に区別して考えるのに対して、今回の危機は、不確実性の解
消にかかる時間が決定的に重要であることを劇的に示している。特
に、鍵となる不確実性は、パンデミックがいつまで続くのか誰にも
確かなことが言えないことであり、この点が地震や洪水のような他
の大災害とは異なる(影響は長く続くかもしれないが)。従って、
事前(ex ante)と事後(ex post)に加えて、進行中(ex interim)
の不確実性を真剣にとらえる必要があることを示す。

● 時間軸への身構え方
今、われわれが直面している不確実性の一部、すなわち進行中の不
確実性は、パンデミックの終息までにかかる時間についてのもので
現在、世界中の多くの政府当局が、経済活動を抑制するような非常
に厳しい公衆衛生的介入を課しているが、①いつまで経済活動の停
止が続くのか不明である。勿論、人的犠牲と経済の間にトレード・
オフがあることは明白であるが、②公的な財政的・金銭的介入がな
ければ、経済活動の停止による経済的な理由による健康面等の被害
も無視できない規模になる可能性もある。感染流行の収束の程度に
より、公衆衛生的介入が緩和される可能性はあるものの、治療法や
ワクチンが開発されるまでは信頼できる客観的な評価ができないた
め、介入の緩和は政治的、あるいは社会的に容易ではなく。公衆衛
生的介入の緩和の難しいとされる----Hatchett et al. (2007)は、
スペインかぜの際に米国の各都市が導入した公衆衛生的介入を比較
したところ、感染拡大の早い段階での介入がピークを平らにするの
には有効であったが、介入の緩和が再度の感染拡大を呼んだことを
示す。



よく知られているリスクの中で、同様に時間軸を中心にしたものが
ある。長生きするリスク、すなわち、どれだけ長く生きられるか分
からないリスクである。この長生きするリスクに対して、年金が重
要な役割を果たすが、現在、経済活動の停止によって困窮している
人々に対して、同様の方法を採る必要がある。すなわち、一度きり
の給付ではなく、パンデミックの終息まで継続的な給付が望まれる。
パンデミック終息まで数年かかる場合、非常に大規模な財源が必要
なので、大規模な公債発行が必要となる可能性があり、実質的に年
金制度が逆向きに機能し、給付を先に行い、後で税金により回収す
るという性格から、社会保障的側面の累進課税=応能税とセットで
考えておく必要がある。

これ踏まえ、専門家が世界的なパンデミックの危険性を警告してき
たという事実は、現在の危機が完全に予見できなかったものではな
く、世界的なパンデミックは、「曖昧さ(ambiguity)」、あるいは
「不測の事態(unforeseen contingencies)」といわれる類いのナ
イト的不確実性は。将来の事象を確率的に評価できず、標準的な費
用便益分析は不適切であり。既存研究、例えばJames and Sargent
(2006
)によると、過去のパンデミックによる集計的な経済への影響
は、通常、当初予測されていたものより小さかったが、GDPや総被害
額といった集計的な指標は、不適切であると、この論文の著者であ
る中田宏之独立法人経済産業研究所上席研究員が述べる。つまり、
分配への影響、あるいは健康への影響、人的犠牲、さらには長期に
わたる学校閉鎖による将来世代への影響等が反映されない。むしろ、
最もよい(マシな)最悪のケースを追求する、マキシミン原則(ロ
ールズ基準
)----原初状態における社会契約においては、 ロール
ズによれば、 通常は期待効用を最大化する選択肢を選ぶのが合理
的とされるが、 一回きりの人生の場合は、 「最悪のケースがいち
ばんマシなものを選ぶ」 というマクシミン原理が合理的だからで
ある。 このマクシミン原理から格差原理を適用すべきとする----
を適用すべきであると言う。このように、将来のパンデミックへの
備えとして、今回の危機から学習することで最悪のケースが悲惨な
ものにならないよう目指す必要がある。例えば、人的、物的な医療
資源に冗長性を持たせる施策が考えられる(標準的な費用便益分析
では最悪の場合ではなく平均に焦点を合わせているために却下され
るであろう)。また、新しい感染症の早期発見は、その不確実性の
根源的性質からして困難である。その困難さ故に、活発な国際的協
力を誘発するようなメカニズムを構築し、新しい感染症が疑われる
ケースの発見の報告を直ちに全世界的にし、最早期から情報共有を
確実にする必要があるのだと。

脚注
マキシミン原則は、選択可能な施策や行動を取った場合に起こり
得る最悪の状態を比較し、その中で最も害の少ない施策や行動を選
ぶという、合理的選択の原則である。また、ロールズ基準は、社会
の中で最も恵まれていない者の状態が最良になる選択肢を社会的に
選ぶという基準である。

参考文献
Hatchett, R. J., C. E. Mecher, and M. Lipsitch (2007): "Publ
ic health interventions and epidemic intensity during the 19
18 influenza pandemic", Proceedings of the National Academy
of Sciences of the USA, 104, 7582-7587.
James, S., and T. Sargent (2006): "The economic impact of an-
influenza pandemic", Working Paper 2007-04 (Ottawa: Department
of Finance).Knight, F. H. (1921): Risk, uncertainty and profit,
New York, NY: Houghton Mifflin.

📚 大災害に備える:政策評価基準のあり方

我が国を含めた世界各地で、東日本大震災をはじめとした非常に大
規模かつ深刻な災害が発生している。このような、ごく稀にしか起
きないものの、非常に深刻な被害を及ぼす災害に対して、モノの面
(たとえば、耐震補強)、カネの面(たとえば、損害保険)双方に
ついて事前に対策を講じることは、重要であるという(RIETI - 大
災害に備える:政策評価基準のあり方について:前述著者:中田宏
之氏、注1)。我が国の場合、モノの面については、事前の対策が
かなりの程度、効果を発揮していると考えられる。たとえば、昨年
の震災の際、地震規模からすれば、発展途上国や以前の日本だった
ならば、ずっと多くの犠牲者が生じていただろう。しかしながら、
津波、ならびに福島第一原子力発電所での事故については、事前の
想定が必ずしも適切ではなかった、という評価も存在する。また、
カネの面についていえば、我が国の地震保険への加入率は、以前に
比べれば上昇してきてはいるものの、未だに低い水準に止まってい
る(注2)。

● 事前基準と自己責任の原則
経済学では、人々が不確実性やリスクを好まないため、事前の対策
を十分に講じることを予測する。また、政策の評価に際して、いわ
ゆるパレート効率性という概念がしばしば用いられる。パレート効
率性の概念は、おおまかに言えば、誰かを利するためには、他の誰
かが犠牲を払わなければならないような状態を指す。しかしながら
正確には、如何なる意味で「利する」のか、あるいは、「犠牲を払
う」のだろうか。通常、事前の対策や政策の優劣を比較する際にパ
レート効率性を用いて議論する場合、各人の意思決定時の基準、す
なわち事前の基準を用いる。
このような意味での事前の基準は、いわゆる「自己責任の原則」
と密接に関連している。たとえば、保険への加入を見送ったものの、
その後被害に遭ってしまった場合、被害に遭う可能性を考慮に入れ
た上で、自ら加入を見送ったのであるから、本人の自己責任である、
と結論づけるのである。しかし、当該状況では、しばしば自身の判
断を後悔することもあるのではなかろうか。果たして、このような
事後的な後悔を無視することが理にかなっているのだろうか(注3)。

● 無謬性、多様性と想定外
多くの経済学の理論モデルでは、各人が真の確率を知っていること、
また、情報の非対称性が存在する場合でも、どの情報を持ち合わせ
ていないかを正確に知っていることが仮定される(注4)。したが
って、各人が誤った意思決定をせず、後悔することもないことを前
提にしている。保険の例で言えば、加入せずに被害を受けてしまっ
た場合でも、各人が事後的にもやはり正しい判断であったと考える
と仮定するのである。つまり、事前と事後の自身の判断に対する見
方の間で齟齬が生じる余地がなく、各人について非常に強い意味で
の合理性、あるいは、一定の無謬性を仮定しているといえる。しか
し、ごく稀な大規模な災害などでは、過去の記録上、1度も起きた
ことがないことがしばしばある。このような場合、真の確率が既知
のものであるとは考えられず、過去のデータや経験、あるいは、さ
まざまな科学的な知見から確率を推定することになるが、確率につ
いてコンセンサスを得ることは、非常に困難であろう。すなわち、
(弱い意味で)合理的に災害の確率が1000年に1回とも1万年に1回
であるとも言え、そのような多様な見方をすべて客観的に否定する
ことは、不可能である。また、災害が1度でも起きてしまうと、従
前よりも遙かに高い確率で起きると主観的に想定してしまいがちで
あるが、それらの見方を非合理的であると客観的に否定することも
困難である(注5)。したがって、自身の判断が誤ったものであっ
たという評価を事後的に下すことも十分に考えられ、事前と事後の
見方に齟齬が生じることに、何ら不思議はない。また、全く事前の
想定が不可能な事象が起きてしまうこともあり得よう。この場合、
確率を推定すること自体が不可能であるので、事前と事後の見方の
間に齟齬が生じるのは、必然である(注6)。

● 理想の政策評価基準とは
では、以上のように非常に強い意味での合理性や無謬性を想定でき
ない場合、どのような基準で政策評価をするのが望ましいのであろ
うか。まず、事前と事後の見方の間に齟齬が生じるのが自然である
ことを前提にするべきであろう。特に、最悪の場合でも、各人にと
って極端に悪い状況になることを防ぐことのできる政策が望ましい。
たとえば、地震保険の場合、住宅ローンに強制的に付帯させること
で、住宅再建による二重ローンの問題を排除することにつながる。
したがって、地震による被害を甘めに見積もっており、自主的には
保険に加入しないような人が、事後的に被る損害の程度を抑えるこ
とが期待できる。
このように述べると、事後的な公的な支援が望ましい政策のように
聞こえるかもしれないが、そうとはいえない。というのは、モラル
ハザードを引き起こす公算が高いためである。したがって、事後的
な公的支援については、民間では扱うことが困難な、事前に想定す
ることが難しい事象を中心に対象にするべきである。むしろ、公的
な政策としては、先述の地震保険の強制加入のような、事後的に極
端に悪い状況に陥らないように設計された、事前の対策とその促進
支援を中心に据えることが望ましいであろう。また、今後の被災地
の復興やさまざまな災害対策、より広くは、極端な経済危機を回避
させるメカニズムを構築する上でも同様の観点からの議論が求めら
れる。

脚注
1.各国の大災害に対する事前対策についてはOECD (2008)が詳しい。
2.2011年度末の全国世帯加入率は、26.0%(出典:損害保険料率算
 出機構)。
3.事前基準と事後基準の齟齬については、古くから議論がある。た
 とえば、Starr (1973)やHammond (1981)を参照のこと。
4.ゲーム理論におけるcommon prior assumption、マクロ経済学に
 おけるLucasやSargent的意味での合理的期待。
5.保険への需要を、稀な事象に関する確率の推定の不安定性に着目
 して説明したものに Nakata, Sawada, and Tanaka (2010)がある。
6.やや古いが、関連する意思決定論のサーベイ論文としてSamuelson
 (2004)を参照。

文献
1.Hammond, P.J. (1981): "Ex-ante and Ex-post Welfare Optima-
 lity under Uncertainty," Economica, 48, 235-250.
2.Nakata, H., Y. Sawada, and M. Tanaka (2010): "Entropy Char-
 acterisation of Insurance Demand: Theory and Evidence," R
 IETI Discussion Paper 10-E-009.
3.OECD (2008): Financial Management of Large-Scale Catastro-
 phes, OECD Publishing. 
4.Samuelson, L. (2004): "Modeling Knowledge in Economic Anal-
 ysis," Journal of Economic Literature, 42, 367-402.
5.Starr, R.M. (1973): "Optimal Production and Allocation und-
 er Uncertainty," Quarterly Journal of Economics, 87, 81-95.

                  
                           
📚 「ニューディール政策」復活の可能性
大恐慌から第2次世界大戦を経て1960年代までは、自由の国アメリ
カであっても、その経済学の半分はケインズ経済学がニューディー
ル政策のブレーンたちが占めていたが、
不況を救い好景気をもたら
したニューディール政策は、その成功ゆえに効果が徐々に飽和し始
め、1970年代にはインフレに苦しむようになる。それを背景にして
新古典派がケインズ批判の勢いを増し“主流派”を形成、1980年に
「新自由主義」を掲げる共和党のロナルド・レーガンが大統領に当
選するに及び、経済学界の趨勢として[主流派=新古典派=一般均
衡理論]の勝利の「反革命」が決定的となと経済学者の岩井克人氏
は指摘する(コロナ後に「ニューディール政策」復活の可能性、東洋
経済オンライン、経済ニュースの新基準)。

 「19世紀は、『自由主義の世紀』と呼ばれるように、自由放任
 主義思想が支配した世紀でした。だが、20世紀に入るとその思
 想に翳りが見られ始め、1929年のニューヨーク株式市場の大暴
 落をきっかけとして世界大恐慌が始まります。そのさなかの19
 36年、ケインズが『雇用、利子および貨幣の一般理論』を出版
 し、いわゆる「ケインズ革命」が起こりました。
 当時、アメリカ政府が大恐慌からの脱出のために積極的に市場
 に介入するニューディール(新規まき直し)策をおこなったこ
 ともあ り、その後しばらく学問的にも政策的にも、不均衡動
 学的な立場が大きな影響力を持ったのです。だが、その勢いも
 一時的でした。経済学のそもそもの父祖はアダム・スミスです。
 ケインズ政策の成功により資本主義が安定性を取り戻すと、19
 60年代にはフリードマンをリーダーとする新古典派経済学の反
 革命が始まりました。
 そして、1970年代には学界の主導権を握ってしまいます。さら
 に、フリードマンらの思想に大きな影響を受けたアメリカのレ
 ーガン政権、イギリスのサッチャー政権の下で、1980年代から、
 経済政策も自由放任主義の方向に大きく再転換していきました」(
          『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』85頁 

尚、著者が『不均衡動学の理論』----ヴィクセルの不均衡累積過程
の理論を再構築し,新たな立場からケインズ的経済理論を展開する、
伝統的な「経済学的思考」への理論的挑戦であるとともに,ケイン
ズ主義者対古典派復活論者の論争を新たな立場からケインズ的経済
理論を展開----を完成させた年に、経済学界と政治の世界では新古
典派がその地位を確固たるものにしている。『不均衡動学』という
“ケインズ経済学の図鑑”を作り終えた岩井氏は1981年に東京大学
に職を得て、資本主義論と貨幣論を展望に入れ、純粋理論としての
追究を始めている。さて、ここで少し岩井氏の理論に分け入る。



資本が合理的かつ最適に投下されると、新古典派の均衡理論におい
ては利潤は長期的にはなくなってしまうが、企業はすべて利潤を生
み出せないという事実はない。マルクスはその理由を資本家の労働
者からの搾取に見いだしたが、シュンペーターはそれを理論的に
否定。シュンペーターはイノベーションをその理由に挙げ、岩井氏
はこの理論を動学モデルとして理解し再構築し、「シュンペーター
経済動学」のイノベーションの解釈は、絶えず生み出される「差異
」にこそその本質があると結論づけた➲動学的に差異を生み出し、
差異によって動学的に利潤が永続する。差異が生み出され続けるこ
とにより、悲惨な長期的利潤ゼロの状況に陥ることから免れる。つ
まり、資本主義の本質は差異の絶え間ない生産とその動学的な作用
であると。彼の資本論、貨幣論はともに、新古典派経済学、ケイン
ズ経済学、マルクス経済学の別なくその根幹に存在するものであり、
資本主義論同様、その経済の根幹部を、岩井氏らしく純粋理論とし
て論考を重ね貨幣の共同幻想論的側面にたどり着く。

 だれに聞いても、『ほかの人が500円の価値がある貨幣として
 受け取ってくれるから、私も500円の価値がある貨幣として受
 け取るのです』と答えるだけなのです。だれもが、『ほかの人
 が貨幣として受け取ってくれるから、私も貨幣として受け取る
 のです』と答えるのです。<中略>思い切って縮めてしまうと、
 以下になります。

 『貨幣とは貨幣であるから貨幣である。』

 これは、『自己循環論法』です。木で鼻をくくったような言い
 回しで申し訳ないのですが、別に奇をてらっているわけではあ
 りません。真理を述べているのです。貨幣の価値には、人間の
 欲望のような実体的な根拠は存在しません。それはまさにこの
 「自己循環論法」によってその価値が支えられているのです。
 そして、この「自己循環論法」こそ、貨幣に関するもっとも基
 本的な真理です。」
         『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』47頁

このように、自己循環論は、岩井氏の最初の論文の重要アイデア静
態的序数効用)にも通じ、「クルト・ゲーデルの不完全性定理」に
も通じる。ガモフの無限大の概念と併せて、岩井氏の論証の特徴的
な武器となる。このような貨幣の性質から、貨幣の本来的な不安定
性を示し、貨幣が受け入れられなくなったカタストロフとしての超
インフレこそが資本主義の真の危機だと結論づける。それは、「恐
慌」こそが資本主義の危機であるという古典派やマルクス経済学の
結論を転換するものであった。そしてこの『貨幣論』が、最も知ら
れる岩井氏の仕事となるが、その背景として経済学者宇沢弘文があ
り、宇沢は、医療サービスを「社会的共通資本」の重要な要素とし
て強調していたため新型コロナウイルスの感染拡大によって脚光を
浴びている(コロナ医療逼迫を予見した経済学者・宇沢弘文ベーシ
ックインカム批判と「社会的共通資本」論、東洋経済オンライン、
Yahoo!ニュース)。しかし「消費における最低限の満足度」という
厳密な定義のないベーシックインカムの議論は、その制度が果たし
て維持可能か、国民の経済厚生水準を今よりも大きく下げることは
ないのかということを、事前に検証する手段を欠いていることを、
宇沢の議論は示し、社会的共通資本は、この社会的不安定性を防ぐ
装置として位置づけられ。ベーシックインカムは、必需品も選択品
と同じく市場経済の中で供給されることを前提とし、これに対し、
むしろ必需品の供給は営利企業に任せるのではなく、社会的管理の
もとにおき、その消費について格差が生じないようにすれば、選択
品について効率的に資源を配分することも可能だと考えるのが「社
会的共通資本」だとされている。

● 何が「必需財」か、民主主義では合意が難しい
宇沢は、分権的な市場経済と多様な個人の価値基準を認めた前提の
もとで、何を必需財と考えるかということについて社会的な合意形
成を得ることは、民主主義的なルールのもとでは不可能であるとす
る、アローの有名な「不可能性定理」と矛盾することになる。確か
に今回の新型コロナの感染拡大に関して、民主主義を基本とする国
々で、なかなか感染防止策が定まらない状況は、アローの「不可能
性定理」が単なる形式論理による帰結ではないことを教えるが、社
会という概念はすでに、それを構成する主体の持つ倫理的要件に関
して共通の理解を持ち、社会的価値基準の形成について、個別的な
主観的価値基準をどのように集計するかについて、すでにあるルー
ルの存在を想定していると述べ、個々の社会の歴史的、制度的な蓄
積の下で何を社会的共通資本とするかを決めることができるとする。



このように、宮川努学習院大学経済学部教授は、日本は医療部門が
公的医療保険制度で支えられているにもかかわらず、医薬品分野の
技術開発では欧米や中国に遠く及ばず、かつ医療供給体制も十分に
準備できず、そして他の国以上に経済損失と現場の医療従事者の負
担、国民の忍耐によって感染拡大を抑制している。こうした戦略的
対応とも呼べない場当たり的な体制が、本当に国民の望んだ制度な
のかどうかは、このコロナ禍が一段落した後であらためて検証され
るべきだとし、宇沢は、「ヒポクラテスの誓い」を引用するほど、
医療従事者に対して敬意を払っていたが、宇沢が理想とする医療制
度と現実の医療制度の間にはなお乖離があると考える。

● 日本の「開業医」中心の医療制度の改革を提起
社会的共通資本をわかりやすく解説した『経済解析(展開篇)』第21
章「20世紀の経済学を振り返って」では、日本の医療機関が規模の
小さい開業医で占められ、医師の技術的要素が医療報酬に十分反映
されていない状況を憂えたうえで、「現行の開業医制度のもとでな
されてきたさまざまな固定生産要素の蓄積、人的資源の配分、さら
には医療従事者の要請などについて、総合的な、しかも長期的な視
点に立った改革案がつくられなければならないであろう」と述べて
いる。いまコロナ禍の中で実感している医療への期待ともどかしさ
を、宇沢は約半世紀前に持っていたと述べている。
                                               この項つづく

✔ 次回は「パンデミックは収束すれば「終わり」ではない」から
考察をつづける、
 


風蕭々と碧い時代:
美しき人生:What Is Life  ジョージ・ハリスン

(作詞/作曲)ジョージ・ハリスン



「美しき人生」 (英語: What Is Life) は、ジョージ・ハリスンが
1970年に発表した楽曲。1971年2月15日にシングルカット。1970年に
発売されたアルバム『オール・シングス・マスト・パス』からの第
2弾シングルとしてB面に「アップル・スクラッフス」を収録して
1971年2月にアメリカで発売された。イギリスでは既にシングル盤
『マイ・スウィート・ロード』のB面として発表されていたため、
英国ではリリースされなかった。 ハリスンが短期間で一気に書き上
げた楽曲で、当初はビリー・プレストンに提供される予定だった。
1972年にオリビア・ニュートン=ジョンによってカバーされ、全英
シングルチャートで最高位16位を獲得



本作は、ハリスンによるファズを効かせた下降するギターリフから
始まり、カール・レイドルコーラス部分では「私の気持ちをどう言
っていいのかわからない/でも愛はいつだってあなたのためにある
/教えて、あなたの愛なしの人生って何?/あなたのそばにいない
私って誰?」というフレーズを繰り返している。このフレーズにつ
いて音楽評論家の間では、「(当時のハリスンの妻である)パティ・
ボイドへ向けたもの」と見なす者や「ロング・ロング・ロング」な
どハリスンが書いた多数の楽曲に見られるような神への賛歌と見な
す者がいた。

●今夜の寸評:辭達而已矣な獅子柚子
真実の言葉ってなんだろう。わたしも周りのひとたちも(彼女も)
どうも不確定模様で、誤認も多くなってきている。過去のことを過
去の事象記憶が取り間違い伝達形成して起きている。もう少し時間
を懸ければと思うが性分があって帰還制御誤差・遅延を起こしてい
る。しかし、AIも現代制御理論も深層思考も数理工学も85年に
は学んでいるので、彼女よりは、記憶速度は多少遅くとも論理的で
類推(予知)は正確のはずという確信だけはかろうじてあるが、前
の記憶(顔などの画像)を思い出そうとする別の記憶(顔などの画
像)が邪魔をするのよと彼女が話すのでかって記憶力が抜群であっ
ても歳には勝てないねと二人で慰め合う。ところで、少量の永源寺
の蕗の薹の味噌とホットウイスキーの相性が良いことを発見する。


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吉野杉の面皮と常温核融合

2021年02月28日 | 時事書評



彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる "招き猫”と、井伊軍団のシンボルとも言える赤
備え(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編成のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ
ー。愛称「ひこにゃん」

                     

15 衛霊公 えいれいこう
-------------------------------------------------------------
「人、遠慮なければ、必ず近憂あり」(12)
「これをいかん、これをいかんといわざる者は、われこれをいかん
ともするなきのみ」(16)
「君子はこれをおのれに求む。小人はこれを人に求む」(21)
「過ちて改めざる、これを過ちと謂う」(30)
「仁に当たりては、師にも譲らず」(36)
-------------------------------------------------------------
40 異なる道をえらんだ人間に、自分の道を理解させることは至
難である。(孔子)

子曰、道不同、不相爲謀。
Confucius said, "You should not consult with a person that
doesn't have the same aspiration as you."

 

 


吉野杉は、国産材のブランドのひとつ。主に奈良県中南部の吉野林
業地帯(主に川上村、東吉野村、黒滝村)が産地の杉。日本三大美
林の1つであるが、わたしのふるさとの原風景でもある。
多々ある杉の中で、高級のブランド材の一つとして有名。産地は斜
面が多く、ヘリコプターなどを使用して搬出されることもある。伐
採後すぐに森から搬出せず、「葉枯らし」という乾燥処置を半年程
度行う。江戸時代から昭和初期にかけては酒樽や樽丸の生産を目的
としたため、植栽本数は1ha当たり8,000〜10,000本という超密植で
ある。その後、弱度の間伐を数多く繰り返し、長伐期とする施行で
行われてきた。年輪幅が狭く、完満直通、無節、色目の良さなどか
ら、用材としても高く評価されてきた。楢や桜と比較すると軽く、
加工しやすいが、乾燥によって割れたり歪んだりしやすいので、高
級家具には適さず、身の回りの品々に使われることが多い。代々間
伐を続けて育てえてきた「250年の森」は森林セラピーのスポット。
その歴史は、明治期の吉野林業技術書『吉野林業全書』に記される
とおり室町時代から始まり、大阪城や伏見城の築城にも吉野材が使
われたという。伝統ある吉野林業は、平成10(1998)年の台風7号に
より大きな被害を受け低迷するが、現在は、活性化を目指してさま
ざまな団体が活発である。



一番古い木は、推定樹齢400年。一般的に山単位で考えるので、ひと
山すべて400年間守り育てている。一人の人間よりも長く生きている。
100年なら、大体3代続けて山を守るということになるので、400年
になれば単純計算して12人が管理してきたことになる。気候風土
木を育てるための肥沃な地力など吉野の山そのものは々でも、木を
必要とする人の生活が変わった。今までどおり木を切り出すだけで
はお金にならないし、海外から安い木材も買え、強度や品質が安定
している集成材もある。また、木以外を使う鉄筋住宅などもあり、
素材の幅が広がったことで、吉野材の需要は減る一方であるが、吉
野杉はツヤがあり美しく強い木材。細かくいえばいろいろある。節
が無い、年輪の幅が狭く均一でまん丸なものが多く木目が美しい。
ずっと同じ太さで真っ直ぐ。他に、薫りがよい。何より経年の変化
が違うのが一番でしょう。木材は使う前の、建材として開封した時
は綺麗ですが、使うほどに汚れたり劣化したりしていくが、密集し
て植え間引きする独自の育成方法により育つ樹齢が古い吉野材は、
年数が経てば経つほど深みを増すといわれ、ツヤとともに味がでて
くるのが特徴。現在行政では、A材は建築用材 B材はパルプ用材、
集成材C材はバイオマスの材料といった区分けをして林産物の需要
を拡大するといった施策を講じている。A材の上に特A材というも
のが今の行政からは外され、このA材と特A材を需要に結び付けて
いく、また付加価値を上げていく模索をし需要を広げていく努力が
求められているという。



需用開拓として吉野杉の面皮細工と透かし彫り細工が話題となって
いる。「面皮(めんかわ)細工」は吉野杉の年輪に刃を入れ、一枚
一枚手で剥いで作る木材を使って、曲げて籠のようにしたり、花の
形にしたりして室内を飾るオブジェや花器、小さな髪飾りなどのア
クセサリーや、一点物の小物やオブジェをデザイン制作し商品価値
を高める販促する。透かし彫りは、サンドブラスターで細かい砂の
ようなガラスを吹き付け飛ばすことで、硬い冬目だけを残し、ボー
ダーのような透かし文様をつくりあげるもの。かって、わたしもプ
ラズマカラーテレビ受像装置の開発でつかっていたもので懐かしい
が、年輪の幅が狭く均一な吉野杉の特徴を生かして、細かな文様を
つくる。透かし彫り作品のほか、吉野杉の年輪に刀を入れて剥ぎと
った面皮(めんかわ)を材料に、アクセサリーや髪飾りなど、一点
物の小物やオブジェや、サイングリップなどのディスプレイ(看板
・表札)を制作する。具体的な高付加価値商品なども奈良県下市町
在住の花井慶子さんのような若いクリエイターがいれば拡大成長し
ていくことは間違いないだろう。

  

ポストエネルギー革命序論 257:アフターコロナ時代 67
♘ 現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散の時代」




常温核融合から凝縮系核反応Ⅱ
常温核融合技術開発の概歴
常温核融合(Cold Fusion)とは室温で、水素原子の核融合反応が
起きるとされる現象。もしくは、1989年にこれを観測したとする発
表にまつわる社会現象。常温での水素原子の核融合反応は、トンネ
ル効果や宇宙線に含まれるミューオンによって実際に起きるという
仮説。常温で目視でき、実用的なエネルギー源として活用できうる
規模で起きたと主張されていた核融合反応を扱っている。2019年5
月現在、高いエネルギーを発生し工業的に利用できるような常温核
融合は成功していない。1989年3月23日にイギリス・サウサンプトン
大学のマーティン・フライシュマン教授とアメリカ・ユタ大学のス
タンレー・ポンズ教授が、この現象を発見したとマスコミに発表。
マーティン・フライシュマン教授とスタンレー・ポンズ教授は、重
水を満たした試験管(ガラス容器)に、パラジウムとプラチナの電
極を入れ暫らく放置、電流を流したところ、電解熱以上の発熱(電
極の金属が一部溶解したとも伝えられた)が得られ、核融合の際に
生じたと思われるトリチウム、中性子、ガンマ線を検出したとした
が、1989年の発表直後より数多くの追試が試みられたものの、多く
は過剰熱の確認ができず、過剰熱の観測に成功したとする実験でも
再現性は低かった。1989年4月、アメリカ議会はポンズ博士を呼ん
で聴聞会を開き、常温核融合実験のレポートについて審問を行った。
その結果、常温核融合の存在そのものについての疑問が持たれエネ
ルギー省を中心とした調査団が組織された。調査の結果、ポンズ博
士の実験はあまりに安易で杜撰な内容であったことが指摘され、8
か月後には、常温核融合が観察されたという確かな証拠は存在せず、
将来的なエネルギー源として研究する必要性はないという内容の報
告書が提出された。数々の疑問点を突き付けられたポンズはユタ大
学教授の地位を失い、1990年、家族とともにアメリカを去った。各
学会でも全面的に否定され、疑似科学扱いされるようになった。
また、今世紀最大の科学スキャンダルとなる。

追試結果と結末​
当時の東京大学学長で原子核物理学者である有馬朗人が「もし常温
核融合が真の科学的現象ならば坊主になる」と発言したとされた。
事件の背後には、別の観点からミューオン触媒核融合を研究してい
たブリガムヤング大学のジョーンズ教授との研究の先取権争いや、
研究資金の獲得競争、化学者と物理学者の対立、マスコミの暴走、
ユタ州とユタ大学の財政難を解消するための大学当局の政治的策謀
など、様々な要因が挙げられている。
発表当初は過剰熱を主張するフライシュマンらより中性子のデータ
を示したジョーンズの報告を信頼する科学者が多かった。しかしジ
ョーンズが後に自ら神岡鉱山内の背景中性子がほとんどない環境で
実験したところ、中性子はほとんど観測されなかった。マスメディ
アの報道が沈静化した1994年になって日本では通商産業省資源エネ
ルギー庁が新水素エネルギー実証試験プロジェクト(NHE)をスター
トさせた。これは常温核融合であるかどうかは別として、過剰熱が
あるならそれを利用しようという意図のもとに行われたプロジェク
トである。約30億円が投入され1998年に終了したが、その最終報告
は「過剰熱現象は確認出来なかった」「ヘテロ構造のPdからは統計
上有意と考えられる中性子ならびに重陽子照射によるDD反応の異常
増加が認められた。」というものであった。 2004年にアメリカエ
ネルギー省による常温核融合の再評価が行われており、"supportive
of the claim that excess energy is generated in the deuterium/
palladium system"(過剰なエネルギーが重水素/パラジウム系で発
生しているとの主張を支持)という過剰熱を支持する査読者もいた
ものの、結論として、その評価は1989年のものと基本的に変わって
おらず「現象がおきたという根拠はない」というものであった。

主な研究事例
北海道大学の水野忠彦、大森唯義は1996年に、常温核融合の正体は
原子核が他の原子核に変化する「核変換」現象だったという、当初
考えられていた常温核融合に対する解釈とはまったく異なる内容の
論文を発表している。これは反応により電極の表面にホウ素, ケイ
素, カリウム, カルシウム, チタン, クロム,亜鉛, 臭素,鉛などの
多くの元素が生成され、その同位体比率が天然のものと異なるとい
うものである。これをフランスの研究者が再現試験を行い、その結
果をインターネット上で公開している。同様な核変換事例はアメリ
カ・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のジョージ・マイリー
(en:George H. Miley)など多くから報告されている。

東京工業大学の岡本眞實らは電解実験で使用した5本の鉛陰極のSI
MSによる分析データを公表。電流値を大きく変動させたサンプルの
3本中3本全てから電解中に中性子を観測、このサンプルからはト
リチウムが検出。また電解中に中性子も発熱もなかったサンプルの
内の1本の高温になった熱履歴が残るものがあり、死後の熱を経験
したサンプルと考える。このサンプルのデータにはLiの同位体比異
常が記録されており電極内部から 6Liが生成されていることを明ら
かにする。

岩村康弘(当時・三菱重工、2015年現在・東北大学特任教授)は、
2001年にパラジウム、酸化カルシウムの多層基板上にセシウムをつ
けて重水素ガスを透過させセシウムからプラセオジムへの核変換が
生じたと発表。同様にストロンチウムからモリブデンへの核変換も
報告した。
この実験系の再現性は100%と言われ多くの追試がなされており、大
阪大学、静岡大学、イタリア国立核物理学研究所(INFN it:Istitu-
tonazionale di fisica nucleare)で再現実験に成功したと報告さ
れている。
1990年代前半にNTT基礎研究所でパラジウムの板(3×3×0.1センチ)
にマンガン酸化物を片面に被覆して重水素ガスを吸収させた後、冷
却してからもう一方の面に金を 200オングストロームまで被覆し、
重水素が抜け出ないように処理してからその試料に電流を流すと、
突然発熱し、サンプルが曲がり、ヘリウムとHTのガスが放出され、
4.5〜6メガエレクトロンボルトのα粒子と3メガエレクトロンボル
ト以下の陽子の放出が確認された。
2014年3月21-23日にアメリカ・マサチューセッツ工科大学 (MIT)
で開催された、常温核融合学会(The 2014 LANR/CF Colloquium)に
おいて、日本からは水野忠彦(水素技術応用開発株式会社、元・北
海道大学)と岩村康弘(東北大学特任教授、当時・三菱重工)が研
究発表している。水野は、「75ワットの過剰熱を35日以上連続で発
生した」と発表。また、岩村は、「元素変換はマイクロ(100万分
の1)グラム単位で確認できた。」と報告している。

【関連特許技術】
特開2020-170020 常温核融合装置、常温核融合による発熱方
                                       および発熱体 児玉紀行

【要点】図17のごとく常温核融合はTサイト内D-にD+が移動し
て((1)、(2))、そこでD2分子を形成し((3))、D2分
子が金属格子からの圧力で縮小されてフェムトD2分子に遷移する
((3)、(4))。このフェムトD2分子の伸縮振動で核子間最短距離
が狭くなり核融合する((4)、(5))。本発明は、重水素ガス
を吸蔵した水素吸蔵金属(101)の表面電位を対向電極(102)
により制御し、金属表面(101a)の自由電子濃度を低下させる
ことで、核子間クーロン引力の自由電子による遮蔽を低減し、かつ
フェムトD2分子の振動速度の低下を抑え、核融合の確率の高くす
ることで、Tサイト内D+にD+が移動する確率を高くし、フェムト
D2分子の振動運動を持続させることで常温核融合を安定的かつ再
現性良く実現できる新規な常温核融合装置、発熱方法および発熱体
を提供する。


特許6712672 超臨界CO2ガスを用いた発電装置及び
                                 発電シ
ステム 石山新太郎 他

【要点】<図3のごとく、超臨界COガスタービン1は、一つの回
転軸の周りに回転可能な細長い回転軸体3を備える。超臨界CO
ガスが回転軸体3に沿って流れる方向に直列に低圧圧縮機4と、高
圧圧縮機5と、バイパス圧縮機6とが同一の回転数で回転するよう
に回転軸体3に一軸連結される。これらの圧縮機は複数の段構造を
備え、段構造は径方向に延在する翼部を有する。発電装置2は、ガ
スタービン1とこれに連結された発電機15とをハウジング内に含
み、超臨界COガスの閉循環システム30を構成する。閉循環シ
ステム30は、熱エネルギーを得る主熱交換器20と、配管21~
21と、第1及び第2の再生熱交換器26a、26bと冷却器28、
29とを備えていることで、工学的成立性が高く、低建設コスト化、
高経済性、易保守性、易製造性、商用電源としての高い適応性、及
び高い安全性を提供する超臨界COガスタービンを用いた発電シ
ステムを提供する。

【符号の説明】1 超臨界COガスタービン 2、2a、2b 発
電装置 3 回転軸体 4 低圧圧縮機 5 高圧圧縮機 6 バイパ
ス圧縮機 7 ガスタービン部 8 段構造 9、10 ジャーナルベ
アリング 11 バランスピストン 12 翼部 13 ハウジング 
14 スラストベアリング 15 発電機 16 閉循環システムの少
なくとも一部(配管、再生熱交換器、冷却器)17 容器 20 主
熱交換器 21 第1の配管 22 第2の配管 23 第3の配管 
24 第4の配管 25 第5の配管 26 第6の配管 27a 第
1の再生熱交換器 27b 第2の再生熱交換器 28 前置冷却器 
29 中間冷却器 30 超臨界COガスの閉循環システム(2次
循環系)
 

WO2019/138452 荷電粒子ビーム衝突型核融合炉 松本 一穂
【要点】 プラズマ方式の核融合炉は、生成粒子の分離が難しく、ト
リチウムの漏えいが懸念され、いまだに核融合に至っていない。荷
電粒子ビーム衝突型核融合炉は、核融合を発生させることができる
が、粒子加速器の加速効率が低く、衝突率も低く、ブレークイーブ
ンに到達できないとされてきたが、下図のごとく、加速効率の高い
粒子加速器を使用し、未反応燃料粒子を循環させる構成とし、効率
を高めた。D-D反応炉で生成したトリチウムとヘリウム3を荷電
粒子の状態で分離し、トリチウムをD-T反応炉で直ちに消滅し、
膨大なエネルギーを得る連携型(50c)、並びに、D-He反応
を行う放射性物質を伴わない簡易型(50s)の荷電粒子ビーム衝
突型核融合炉を考案。
また、中性子をリチウムなどに照射し、より多くのトリチウムを増
殖させ、出力を増倍させるトリチウム増倍を実現する。

特開2019-86291 凝縮集系核反応炉用反応体及びこれを用いた
  発熱方法た発熱方法 水野忠彦

【要点】
図3のごとくニッケルと、前記ニッケルに固定されたパラジウム及
び白金と、で構成されており、水素同位体、ニッケル、白金及びパ
ラジウムを主要構成材とする凝縮集系核反応炉で使用されること、
を特徴とする凝縮集系核反応炉用反応体、並びに、これを用いた発
熱方法で安全、安価に、大量の熱発生をする事の出来る凝縮集系核
反応炉で使用する多層膜構造を持つ反応体と、それを用いた発熱方
法を提供する。

【符号の説明】1 反応体 2 反応炉 3 熱電対 4 ヒータ
5 データ解析装置へ接続 6 真空排気装置へ接続 7 ガス注入
管 8 覗き窓 9 ニッケル網 10 白金 11 パラジウム

特開2018-87574 重力を運動エネルギーに転換するシステム
    及
び方法 ジー  パワー  プランツ  ディーエムシーシー 
【要点】図2のごとく、力方向あるいは重力方向と反対に、落下し
た対象物を元の位置に持ち上げ、周期を繰り返すために、2つの質
量の正味の質量差のみが入力パワー機構によって機能させられるよ
うに、一方で、重い質量の対象物の自由落下を可能にさせることに
より、重力によって行われる仕事を最大化し、他方で、他の同様の
質量によって重い質量をつり合わせることにより効率を最大化する
装置、システム、及び方法を提供する。
複数のユニットはタンデムに同期して使用され、高出力発電機に接
続するギア/フライホイール/シャフトの一定のRPMを維持する。
さらに、システムの効率を向上させる補助エネルギー生成機構が開
示される。


特開2018-031758 原子力施設の放射能汚染水無害化装置
  島安治
【要点】図2のごとく超臨界状態を利用して汚染水の水素結合を切
断し、重水素、トリチウムを発生させて、パラジウムの表面で核融
合反応を実現する原子力施設の放射能汚染水を無害化すること。


【概説】近年、常温核融合の事例が散見される([非特許文献1,
2])。いずれも共通することは、重水素Dと金属のパラジウム
Pdの組合せである。パラジウムは水素を吸蔵し、その体積比率は
935倍と大きい。田中貴金属工業株式会社のパラジウム水素透過
薄膜は、水素だけを通す選択透過性を利用して水素ガスの精製を実
現している。水素分子はパラジウム薄膜の中で水素原子に分離し、
薄膜を通過して外に出ると水素分子に戻ると想定されている。三菱
重工からの報告では、重水素をパラジウム多層膜に透過させると、
その内部で、Cs原子が原子番号の大きい原子に核変換している(
図1)。
【非特許文献1】第12回凝集系核科学国際会議見聞、水素エネル
ギーシステム31巻、No.1(2006)
【非特許文献2】凝集系核科学の現状と将来、東京工業大学蔵前会
館セミナー、2015年4月図2のように、水分子は水素結合によ
って繋がり、巨大分子を構成している。水素結合H-Oの乖離熱は
~30KJ/molで、水素分子H-Hの乖離熱436KJ/mo
lよりずっと小さい。この関係は、水素ガスからよりも水からの方
が水素原子Hが容易に分離されることを示している。
そして、最強の活性酸素であるヒドロキシルラジカル・OHができ
る。ヒドロキシルラジカル・OHは、酸素原子の外側電子軌道に孤
立電子があり、反応相手から電子を奪い、電子対をつくる(反応相
手を酸化する)。この関係は、図2のように、重水素、トリチウム
が結合している場合も同じである。
超音波キャビテーションの気泡が圧壊する時、気液界面で水分子が
OHラジカルと水素原子Hに分解される。気泡圧壊点は高温高圧状
態になって居る。このことは、ベンゼン環に塩素原子3個が結合し
たトリクロロフェノールが分解されて、次第に透明な液が着色して
来ることから実証される。トリクロロフェノールの分解着色は、O
Hラジカルと塩素原子Clが発生する次亜塩素酸HOCl溶液の反
応で既に確認されている。
図2のような水分子の水素結合から、水素原子(さらに、重水素、
トリチウム)とOHラジカルを取り出す超音波キャビテーション気
泡圧壊方法とは別の方法は、水全体を高温高圧の超臨界状態にするこ
とである。超臨界状態の利用は炭酸ガスでも行われているが、水の
場合は、221気圧以上の高圧と374℃以上の高温にする。耐蝕
性のインコネル625、インコネル690等の金属反応容器を用い
て、ダイオキシン、PCB等の猛毒物質を分解することができる。
水の超臨界状態で核融合を実現するには、化学反応と同様に触媒が
必要である。それが金属パラジウムである。最も容易な核融合は、
図3の重水素とトリチウムからヘリウムができるD-T反応である。
中性子を含まない水素原子核よりも、中性子を余分に1個含む重水
素原子核の方が、さらに、中性子を余分に2個含むトリチウム原子
核の方が不安定であるからである。同様なことは、ウランやプルト
ニウムの核分裂から発生するより重いセシウムやストロンチウムの
放射性元素と重水素・トリチウムの組合せの場合にも想定される。
【発明が解決しようとする課題】
水の超臨界状態をつくる装置は既に造られ、稼働している。課題は
高圧高温容器の内部で、パラジウムの広い表面積を実現することで
ある。
福島第1原発の放射能汚染水は100万トンに近い大量である。
重い核分裂放射性元素を除いた70万トンのトリチウム水の放射能
強度は420万ベクレル/リットルである。これはその時々の崩壊
元素の数のみを示し、全トリチウム元素の数を示してない。
トリチウムの崩壊半減期12.3年から概算すると、崩壊前トリチ
ウム原子の個数は3×1014/リットルとなり、自然水の軽水分子
の個数3×1025/リットル、自然水に含まれる重水分子の個数4
×1021/リットルと比較すると、極端に薄い濃度である。密度は、
1011個/cc(1cc当り千億個)濃度である。
D-T反応による発熱量と水温上昇の検討:
・D-T反応による放出エネルギー:3.5+14.1=17.6
Mev
・1eV=1.6×10-19J    1MeV=1.6×10-13
・17.6Mev=17.6×1.6×10-13J=2.8×10-12
・1cm=1cc当りの発熱量は、2.8×10-12J×(
3×1011個/cc)、~1J/ccである。4.2J=1cal
なので、水温昇温は1℃以下である。
図3のD-T核反応の結果、中性子が放出される。この中性子が反
応容器の金属原子と核融合反応して放射化される懸念があるが、
前節同様に無視できる程度と見なす。
高温高圧の超臨界状態の汚染水の中に、触媒の金属パラジウムが存
在する。加圧水流が存在する場合でも、できるだけ大きい表面積を
維持しなければならない。
【課題を解決するための手段】
触媒の金属パラジウムの要件は、▲1▼大きい面積のために板状、
▲2▼圧力流を逃す開放構造、▲3▼損傷回避のための角落し、▲
4▼板の重なりを避ける構造、▲5▼破断回避の折筋無し、▲6▼
強度維持の厚み、等の条件を満たすことによって、反応槽内部にヒ
ータ等の構造物が在っても、▲7▼自在充填自在積載ができる構造
である。
以上の要件を満たす構造として触媒の金属パラジウムは図4の薄板
円筒構造を採用する。

【発明の効果】
原子力施設で発生する重水、トリチウム水が混合されている放射能
汚染水から、トリチウムがヘリウムに変換されて無害化される。ト
リチウム水、さらに原子番号の大きい核分裂放射性元素が含まれる
放射能汚染水の場合も核変換されて無害化が期待される。
2018-031758 原子力施設の放射能汚染水無害化装置を含めもう
少しこの考察をつづける。 




【今夜の一冊:パンデミック・ニューディル考Ⅲ】



風蕭々と碧い時代:
セット・オン・ユー Got My Mind Set on You

(作詞/作曲)ルディ・クラーク



「セット・オン・ユー」(Got My Mind Set on You)は、ルディ・
クラークによって書かれた楽曲。1962年にジェイムス・レイによっ
て録音された音源が、「I've Got My Mind Set on You」というタイ
トルで発売された。この音源にはハッチ・デイヴィ・オーケストラ・
アンド・コーラスが参加している。ビートルズのメンバー、ジョー
ジ・ハリスンによるアルバム『クラウド・ナイン』からのカバーが
Billboard Hot 100において大規模なプロモーションの効果もあり、
1988年1月に1位を達成。ビル
ボード誌1988年年間ランキングでは
第5位。イギリスでも4週
連続2位を記録した。ジョージ・ハリス
ンとエレクトリック・ライト・オーケストラのメンバー、ジェフ・
リンがプロデュースしたこの曲はハリスンにとって3曲目にして最
後のアメリカにおけるソロでのナンバーワン・ヒットとなった(19
70年の「マイ・スウィート・ロード」、1973年の「ギヴ・ミー・ラ
ヴ」に続く3曲目)。曲はまた、現在に至るまで、ソロになったビ
ートルズのメンバーがアメリカにおいて取った最後のナンバーワン・
ヒットとなっている。



●今夜の寸評:吉野杉の面皮と常温核融合
ポスト団塊の世代少子化と彦根市滋賀県のコロナ感染者18名(1
人死亡)と増加傾向にあるが、吉野の林業と常温核融合で手がいっ
ぱいになった。息苦しさが覆っている。

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