極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

資本主義と自由⑮

2021年12月26日 | 政策論



彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん」


朝から大雪警報、例年、クリスマス前後の降雪は12月の2回目とな
り積雪となるが珍しく18日にも除雪作業をおこなっていがこれは体
験的には珍しいパターンであるがこれも人為的温暖化の影響なのかと
思ったりしている。



 




【ポストエネルギー革命序論 390: アフターコロナ時代 200】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」

環境リスク本位制時代を切り開く


 西安市のコロナ感染拡大衰えず
国の陝西省西安市で新型コロナウイルス感染の広がりを受けてロック
ダウン(都市封鎖)が先週実施されたが、感染の悪化に歯止めがかか
らない。27日に確認された西安市の新規感染者は175人と、それぞれ1
50人程度だった25、26日からさらに増えた。市中で増える感染を突き
止めるため、当局は4度目となる検査を開始。デルタ株を中心とする
今回の感染拡大は追跡調査の結果、パキスタンからの航空便が発端と
される中国、西安市の当局者26人を処分-コロナ対策不十分で責任問
われる西安市では検査を繰り返すごとにそれまで明らかになっていな
かった感染経路が判明するという状況が続いており、地元衛生当局は
感染増を警告。ロックダウンが講じられた23日時点で感染者はまだ低
水準にとどまっていたが、各地区に感染が広がっていたため確認され
た感染者は氷山の一角ではないかとの懸念が強まっていた。
via 2021 Bloomberg L.P.
China’s Covid Outbreak Festers in Xi’an Days After Lockdown




China October 20, 2021. PHOTO: REUTERS 

【ウイルス解体新書 98】


序 章 ウイルスとは何か
第1章 ウイルス現象学

第7節 新型コロナウイルス
7-1 新型コロナウイルスのライフサイクル
7-2 変異ウイルス
7-2-1 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型
   コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について (第9報)
第9節 感染予防・検査・治療
9-1 検査方法・装置設備
9-1-1 新型コロナウイルス感染症に関する検査
第10節 ウイルスとともに生きる
10-1 バイオハザード対策の発展史
10-2 高度隔離施設の現場へ
10-3 病原体の管理基準
10-4 根絶の時代から共生時代
第2章 COVID-19パンデミックとは何だったのか
第1節 各国の動向と対策の特徴
1.米国
1-1 COVID-19委員会の創設を提案
第2節 謎のCOVID-19起源
2-1 消えぬ武漢研究所人為的発生説
第3節 新型コロナウイルスで分かったこと
3-1 人体の免疫システムからの逃避機構
▶2021.11.16 北海道大学 
3-2-1 多面的ナノ粒子型ワクチンの特徴
▶2021.12.16 Science Translational Medicine
汎ワクチン開発戦略に関し協議。米国国立衛生研究所は、ニューイン
グランドジャーナルオブメディシンに、新たな菌株の出現のサイクル
を断ち切る方法を公表。また関連ニュースとして、ウォルターリード
陸軍研究所(WRAIR)は、さまざまなSARS-CoV-2変異体から保護する
新しいナノ粒子ワクチンの開発研究機構を公表。今月,Science Trans-
tional Medicine で発表された前臨床研究は、ワクチンがSARS-CoV-2
の元の株による病気から非ヒト霊長類を保護し、懸念のある変異株に
対して非常に強力で広く中和する抗体反応を誘発----202年に出現した
SARS-CoV-1ウイルスが含まれる----前臨床研究が報告されている。
最初の人体試験は現在、最終審査を受けており、今月終了する予定(
フェーズ一Ⅰデータの初期の分析は、前臨床試験で実証されたように
その効力と範囲が人間に引き継がれるかの可否の結果が提出される。
このデータにより、研究者は免疫プロファイルを、緊急使用が許可さ
れている他のCOVID-19ワクチンの免疫プロファイルと比較できる。
スパイクフェリチンナノ粒子COVID-19ワクチン(または、知られてい
るようにSpFN)は、ウイルスの断片を免疫系に提示し、応答を誘発す
る。これは、フェリチンタンパク質ナノ粒子に付着したコロナウイル
ススパイクタンパク質で構成されている。

 

写真のように、SpFNには24の側面があり、タンパク質の表面に多くの
異なるコロナウイルス株からのスパイクを同時に取り付けることがで
き、過去20年間のヒトコロナウイルスの出現の加速と、最近のオミク
ロンを含むSARS-CoV-2変異体の台頭は、コロナウイルス疾患に対する
幅広い防御をもたらす次世代の先制ワクチンの継続的な必要性を強調
している。WRAIRの新興感染症支部長であり、ワクチンの共同発明者で
ある、SpFNの米軍のKayvon・Mdjarrad博士は、我々の戦略は、複数の
コロナウイルス株および種に対し。安全で効果的かつ耐久性のある防
御を提供できる可能性のある「汎コロナウイルス」ワクチン技術の開
発が目標であった。オミクロンの亜種は非常に新しく、2021年11月26
日に WHOによって名前が付けられ、以前の動物実験では取り上げられ
ずいたが、WRAIRの科学者たちは現在 抗体がウイルスの増殖を阻害で
きるかどうかの確認に「中和アッセイ」を使用し、ヒトの臨床試験サ
ンプルに対して実験室で菌株をテストしており、これらの臨床データ
が完全に公表されるのを待ちたいが、今のところその作業は順調に進
んでいる進んでいると件の博士はそう話す。このプラットフォームは、
広範囲の温度で安定し、潜在的にグローバルなワクチンとしての利点
があり、超低温冷凍庫が不足している環境で特に役立つ。このワクチ
ンは、COVID-19ワクチンの世界で際立っていると結論付ける。多面的
なナノ粒子上にコロナウイルススパイクタンパク質を繰り返し規則正
しく表示することで、免疫を刺激し、保護を大幅に拡大できる。我々
は、単に焦点を当てるだけでなく、長いゲームの検討を行い、SARSの
最初の出現であり、ウイルスが変異することを理解する代わりに、出
現する亜種、新しい種の観点から出現する可能性のあるウイルスに備
える準備を整えており、また、COVID-19による脅威は進化するにつれ
て継続し、最終的には他の新興感染症の脅威が発生すると次世代ワク
チンの開発への我々の投資は、COVID-19と将来の病気の脅威に先んじ
るための重要なステップあると、 WRAIRの感染症研究センタの責任者
のネルソン・マイケル博士はこのように話している。
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❏ SARS-CoV-2フェリチンナノ粒子ワクチンは、ヒト以外の霊長類で
 防御免疫応答を誘発:A SARS-CoV-2 ferritin nanoparticle vaccine
  elicits protective immune responses in nonhuman primates



【概要】重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異体
の出現は、コロナウイルス病2019(COVID-19)に対する幅広い防御を
もたらす次世代ワクチンの継続的な必要性を強調している。非ヒト霊
長類におけるアジュバント添加SARS-CoV-2スパイクフェリチンナノ粒
子(SpFN)ワクチンを開発および評価しました。高用量(50μg)の
SpFNワクチンを28日間隔で2回投与すると、Th1バイアスCD4 T細胞ヘ
ルパー応答が誘導され、SARS-CoV-2野生型および懸念される変異体、
ならびにSARS-に対する中和抗体が誘発された。CoV-1。これらの強力
な体液性および細胞性免疫応答は、高用量のSARS-CoV-2呼吸チャレン
ジ後の非ヒト霊長類の上気道および下気道における複製ウイルスおよ
び肺実質の急速な排除に変換された。SpFNワクチン接種により誘発さ
れた免疫応答とその結果としての非ヒト霊長類の有効性は、SARSを引
き起こすベータコロナウイルスのワクチン候補としてのSpFNの有用性
を裏付けている。 


via FutureTimeline.net

3-3 ファクターX”は日本人の免疫細胞か
▶ 2021.12.10 20:17日本テレビ系(NNN)
アメリカ・イタリアなどより低い日本の“死亡率”なぜ日本人が欧米
人と比べ新型コロナウイルスによる重症者や死者数が少ないのか――
これまで大きな謎とされてきまたが、ついに、その「ファクターX」の
解明につながるかもしれない研究結果が発表されている。



コロナに反応しやすい「型」日本人“6割”に
今回、理研の研究チームが注目したのが、細胞の表面にあるタンパク
質の「型」。細胞の表面には、たくさんタンパク質があり、その型は
数万種類にのぼります。人によって、持っている型の組み合わせが違
う。細胞はウイルスに感染すると、この型から感染したというサイン
となる物質を出します。このサインを手がかりに、キラーT細胞が感染
した細胞を見分けて、攻撃しやっつける。だから、このサインはとて
も重要です。 今回、研究チームが、数ある型の中から「HLA-A24」
いう特定の型に注目して研究したところ、この型は新型コロナウイル
スに反応しやすいことがわかった。 実はこの型は、日本人の6割の人
が持っているが、欧米人では1~2割の人しか持っていないというもの。
"ウイルスに感染した細胞が目印を出す"とうが、この物質が新型コロ
ナに感染した時と、季節性の風邪に感染した時の物質がとても似てい
るということも新たにわかった。 普通の風邪は、人生で1回や2回ひい
たことがある。そのため、風邪をやっつけてくれるキラーT細胞は、皆、
体内に持っていて、眠っている。サインとなる物質が眠っているとい
うことは、新型コロナの場合でも季節性の風邪をやっつけるキラーT細
胞が呼び覚まされ、感染した細胞をやっつけてくれる。 キラーT細胞
が、風邪とコロナの両方をやっつけてくれると期待できる。
第4節 いつまで続く「コロナ禍」は?! 
4-1 適切な専門家に聞く「新型コロナ」の読み解き方
4-1-2 人工ウイルス説はなぜ登場し、そして否定できるのか
4-1-3 SARS-CoV-2とはどんなウイルスなのか
終 章 ウイルス感染症と戦略『後手の先』

 

第7章 里死病がヨーロッパの租税を変えた

        この闘いに、朕は自ら出陣するつもりだ。

        広すぎる宮廷やむやみな大盤振る舞いのせいで
        少しばかり手元が苦しくなってきているから
        やむを得ず、王領の土地を耕させることとしよう。
        その収入で当座の必要を賄おう。
              ウィリアム・シェイクスピア、 
                           『リチャードニ世』(第一幕第四場)


国王につばを吐いたタイル職人

         さあ、農奴の身分というくびきを振り落とし、
                 自由を取り戻すときが来た。
             ジョン・ボール、説教師(1238~1381年)

中世ににあらわれたマルクス主義者のごとく、ポールは「すべてが共
有されるまでは、イングランドにとって物事がうまく遂ぶことはない
だろう」と断言した。また、こう吹聴した。「やつらはベルベットと
毛皮をまとうが、われわれは布のみだ。やつらはワイン、スパイス、
良質なパンを食べるが、われわれはライ麦パンと水。やつらは豪華な
邸宅と荘園を持っているが、われわれは雨風に耐えて畑仕事にいそし
んでいる。やつらの貴い身分はわれわれの額の汗によって保たれてい
る。われわれは農奴と呼ばれ、いいつけられた仕事を成し遂げなけれ
ば殴られるのだ」

税のことで人びとから乾鰯のごとく蛇蝎だかつに嫌われていたカンタベリー
大司教は、ボールをたいへんうとましく思い、説教を聞きにくる人び
とを一人残らず罰するよう命じた。それでも状況は変わらなかったの
で、今度はボールをメイドストーン城に監禁してしまった。ボールは
自身が二万人の仲間によって解放されることを予言した。
フォビングでの反乱の噂はすばやく広がった。エセックス、ケント、
ハートフォードシャーの住民たちは、それぞれの村にやってきた徴税
人に対し、団結して抵抗した。彼らは徴税人を殺め、斬り落としだけ
を長い棒の先に取りつけ、近隣の村々を練り歩いた。エセックスで最
初の反乱が発生してから一週間足らずのうちに、ケントで蜂起した反
乱者たちが結集してメイドストーン城を占領し、ボールを解放した。
これで、彼の予言は実現したことになった。この暴動は計画されたも
のだったようである。それに、そもそも人びとに人頭税を支払わない
よう説いてまわったのはボールだった。その彼が自由の身になると、
この暴動は神に仕える者を味方につけているということになった。そ
して、正当化されもした。
ケントの反乱者たちの指導者になった男についてはほとんど知られて
いないが、名前をウォルターといい、フランスで兵役に服していたこ
とのある「タイル職人で、下層階級の者」であった。納税者として登
録されていた名前は「タイル職人のウォルター〔Walter the Tiler〕
」たった。今日ではワット・タイラ-として知られている。
ケントの反乱者たちはメイドストーン城からロチェスターに、さらに
そこからカンタベリーに行進した。そして、税務関連の訃類が保管さ
れている建物を狙って火を放った。人びとの名前、徴収されている小
作料、課せられている賦役などの記録を消すためだった。なかでも法
作家や法的記録は標的になった。反乱者に指示されていたのは、「弁
護士と、大法官府および財務府の役人」を殺生せよということだった。
カンタベリー大司教が人頭税導入に関与したことは明白だったので、
彼らは大司教をその座から退かせるために大聖堂に押しかけた。大司
教は運よくロンドンに出かけていて留守だったが、それでも暴徒は彼
の退陣を宣言した。市の監獄は開錠され、囚人が解放された。これは
体制そのものを破壊する試みだった
翌日、彼らはロンドンを目指して行進した。偶然にも、テムズ川河口
銭北部の反乱者たちもこの都市を目指して歩いていた。エセックス、
ハートフォードシャー、サフォーク、ノーフォークから来た人びとは
マイル・エンド地区に、ケントからの人びとはブラックヒース地区に
野宿した。トマス・バンプトンがフォビングから逃げ帰った日から二
週間もたっていなかったが、すでに数万人からなる組織立った軍隊が
できあがっていた。年代記作者のトマス・ウォルシンガムによれば、
「二〇万人が結集していた」。実際の人数は三万から五万だったと思
われるものの、これは自然に発生した暴動ではなく、イングランド軍
の留守に乗じて準備された計画だった。もっとも近くにいる部隊でも、
北方でスコットランド軍の撃退に奮闘していた。それ以外の戦力は海
外遠征中たった。

反乱者たちの不満の矛先は、国王よりもむしろ国王の側近たちの方に
ほうに向かっていいった。反乱の報告が入ったとき、告はウィンザー
城にいた。国王は王室御座船に乗り込み、ロンドンに向かった。反乱
者たちが野宿するブラックヒースに近いロザ-ハイズで六月十三日に
話し合いが行なわれることになっていた。船着場に近づくと黒山の人
だかりができており、それを見た側近たちは国王の上陸を阻んだ。苛
立った農民たちはロンドンの城門に迫った。
ロンドン市民はこの暴徒たちに同情的だった。国王からは市の城門を
閉じるよう命じられたが、市民は後から来るケントの反乱者たちのた
めにロンドン橋を、束から来るエセックスの反乱者たちのためにオル
ドゲートを開けておいた。反乱車は大いに暴れまわった。カンタベリ
ーでもそうだったが、監獄の錠前を破壊し、囚人を解放してやった。
法曹院の法律書類はすべて引きだされ、路ヒで焼かれた。建物は連携
作業で叩き壊され、法律家は殺された。徴税にかかわるあらゆる大同
が襲撃の標的になった。
農民たちはジョン・オヴ・ゴーントを探し、彼の居宅であるサヅォイ・
パレスに押し入ったが、ジョン自身は来襲したスコットランド軍を撃
退するために北方にいて留守だった。暴徒は邸内の家具に火をつけ、
貴重な金属加工品を叩きつぶし、装身具や宝石類をこなごなに砕いた。
そして、記録簿に火をつけ、破棄できないものはことごとく下水溝か
テムズ川に投げこんだ。だが、伝えられるところでは、ものを盗むこ
とはなかった。彼らが自らいうところによれば、「真実と正義の熱心
な信奉者であって、泥棒や強盗ではない」のだった。



ロンドンでの第一日目の終わりに、反乱車はロンドン塔の前に群がっ
た。塔内にいた国王は、場内のあちこちで火の手があがるのを眺め、
間違いなく恐れおののいていたことだろう。数千人からなる群衆に対
するのは、塔の守備隊と国王の親衛隊-多くとも数百人程度の兵士た
ちのみだった。国王は軍隊をあてにすることはできなかった。だが、
暴徒を市外に追い出さなければならない。そのため、翌日の午前八時、
城門外のマイル・エンドで話し合いをすることに同意した。

中世における交渉事ではたいていそうだったように、このときも話し
合いの焦点は不正であった。タイラーは農民側の要求を提示した。人
頭税の廃止。農奴制と、自由のない土地保有制の廃止----労働を強制
するのではなく、労働者を雇用すること。商取引の自由化----商品を
好きに売り買いできるようにすること。小作料の上限を1エーカーに
つき4ペンスにすること。荘園裁判所を通じた封建的負担金賦課の廃
止。さらに、彼らの自由人としての権利と特権を定めた特許状の発行
と、反乱にかかわった者全員の赦免。おまけに、彼らは「裏切り者」
の名簿を持ってきていた----税金のことで彼らをうるさく悩ませた、
不愉快な役人たちの名前を書き連ねたものである。この役人たちを引
き渡し、処刑させることを彼らは望んでいた。名簿にはカンタベリー
大司教とジョン・オヴ・ゴーントの名前もあった。軍隊が不在だった
ためになすすべのなかった国王は、反乱軍が解散して帰村することを
条件に、彼らの要求のほとんどに同意した。ただし、役人を引き渡す
ことは拒否し、そのかわりに国王自ら必要な罰を与えると約束した。
三〇人の事務官が特詫状を作成しはしめた。それぞれに特許状を受け
とると、ハートフォードシャー、イーストアングリア、エセックスの
反乱者の多くは、要求を聞き入れてもらえたと信じた。

しかし、ケントの反乱者たちはその日のうちに特許状をもらえず、ど
うやら疑念を抱いたようである。ロンドン塔の城門は帰還するリチャ
ードのために開放してあったが、国王よりも早く400人の反乱者た
ちがそこから突入した。塔内で、彼らは何人もの「裏切者ども」を発
見したj-カンタベリー大司教のサイモン・サドベリー、大蔵卿のサ
ー・ロバート・ヘイルズ、そして税務長官のジョン・レッグである。
反乱者たちはこの三人をタワーヒル通りまで引きずっていき、その首
をはねた。そして、その晩はロンドンで破壊行為をつづけ、ジョン・
オブ・ゴーントの部下や法律関係者を探しだし、殺してしまった。翌
日、タイラーと国王は再度話し合いの機会をもった。今度はロンドン
の城門内のスミスフィールズが会見場所だった。このときも農民たち
が大勢集まったが、前日ほどではなかった。タイラーは、計算どおり
にことが運んでいたためか、少し図に乗っていたようである。「彼は、
平民たちに自分の雄姿をしっかりと見せるため、小さい馬に乗ってあ
らわれ、自信満々で王の前に進みでた」と、当時の記録にある。馬を
降りたあと、彼は「おざなりにひざまずいた」だけだったうえ、フー
ドをかぶったままであった(国王への不敬のあらわれである)。そし
て「国王の手をれると、その腕を力いっぱい振り動かし」、「兄弟よ」
と呼びかけた。
「心配なさらず、お喜びください。今後二週間のうちに、平民どもは
陛下を、これまでなかったほど衰めたたえるようになるでしょう。わ
れわれはよき友になるでしょう」
記録には、さらにこう綴られている。「すると国王はウオルター〔ワ
ット・タイラ-〕にいった。『おまえたちはなぜ国に帰らぬのだ?』
しかしその男は、大いなる誓いを立ててこう答えた。願いどおりに特
許状をいただけないうちは、彼も、彼の仲間もここを離れないと」
「それから彼は、イングランドに司教は一人だけでよいといいだした
・・・・・・そして、(教会の)すべての土地および財産を取りあげ、平民
に分け与えるべきだとも……。彼は、イングランドに不自由農がいて
はならない、農奴制があってはならないといった……すべての人間は
自由人であるべきだ、と」
国王はタイラーの要求に同意を示したが、このときのタイラーの行動
から判断するに、彼はその言葉を信じなかったようである。彼は、「
ひどく暑かったので、目をゆすぐために水を瓶に入れて持ってこさせ、
国王の面前で、たいへん不作法な、不快なやり方で口をゆすいだ。
それからビールを一杯持ってこさせ、一息に飲みほし、国王の目の前
で、ふたたび馬にまたがった」
                        この項つづく



【概説】

貨幣、帳簿、市場……資本主義の基幹エンジンたる仕組みの歴史を紐
解く。そしてケインズ、ハイエク、フリードマンの思想へ。ほころび
始めたグローバル資本主義の未来を見据えながら、その本質に迫る。
【目次】
第3章 君臨する経済学(間宮陽介『市場社会の思想史』一三三六
夜 ジョン・メイナード・ケインズ『貨幣論』一三七二夜 ほか)
第4章 グローバル資本主義の蛇行(マンフレッド・スティーガー『
グローバリゼーション』一三五八夜;スーザン・ストレンジ『マッド
・マネー』一三五二夜 ほか)
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資本主義と自由⑮
□ 松岡正剛の千夜千冊⑳  交貨篇 1372夜(2010.7.20)
第3章 君臨する経済学


ロバート・スキデルスキー著[訳]山岡洋一
『なにがケインズを復活させたのか?』
ポスト市場原理主義の経済学
日本経済新聞出版社 2010
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松岡は脚注の(3)で次のように記している。
邦訳されたスキデルスキーの著書は次の通り。『ジョン・メイナード・
ケインズ――裏切られた期待』(東洋経済新報社)『ケインズ』(岩
波書店)、『共産主義後の世界――ケインズの予言と我らの時代』(
柏書房)。なんだか、もっといろいろのものを書いているような気が
する。経済学というものは、ほとほとわかりにくいものだ。ぼくは学
生時代にマルクス(789夜)や宇野弘蔵から入ったので、まったく
正統な学習をしてこなかった。読書もいつだってランダムで、いまさ
らそんなぼくに何が言えるのかと思うのだが、ハイエクやフリードマ
ンの流行を見て、ちょっと待ったという気になった。

いまでは少々落ち着いて考えられるようになった。ぼくが思うに、経
済学を一つの体系のなかに収めてはいけないということだ。学生やM
BAや企業人は、まずもって広い視野をもつべきだ。せめては、「
産の経済学」「消費の経済学」「景気の経済学」「政策の経済学」「
金融の経済学」「家政の経済学」、そして「情報の経済学を、それ
ぞれ別々に話せるようになったほうがいい。そのうえで、貨幣・通貨・
日本経済、国際経済、グローバリゼーションを云々するべきだ。
しかし、そうなるには、経済と社会と文化と情報を切り離さないで語
れないといけない。けれども、まったくそうはなっていない。だから
菅直人の「消費税10パーセント」発言程度で、一国の選挙の趨勢が
あっけなく決まってしまうのだ
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資本主義と自由⑯
□ 松岡正剛の千夜千冊⑳  交貨篇 1374夜(2010.7.26)
第3章 君臨する経済学



ハンス・クリストフ・ビンスヴァンガー著・清水健次訳
金と魔術 『ファスト』と近代経済
法政大学出版局 1992
Christoph Binswanger Geld und Magie 1985
ファウスト伝説とは何か。
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その魔術に隠されていた錬金術や換金術。なぜファウストはそんな悪
魔と契約をしたのか。ゲーテはファウスト伝説から、何を取り出した
のか。ゲーテが仕込んだ謎はきわめて深く、問題は近代社会が選択し
た根本にかかわってくる。そしてそこに、貨幣の隠された意味が浮か
び上がる。いよいよ証かされる貨幣の魔術的本質を、今夜はゲーテの
問いに戻って、しばし逍遥する。
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ゲーテが『ファウスト』であきらかにした“近代になお通用する錬金
術”とは、次のことである。

(1)埋蔵している地中の財宝は貨幣を発行する力に見合う。そうい
  う魔法は通用する。
(2)貨幣・紙幣の発行は時の権力さえ承認すれば合法化される。そ
  ういう魔法も説得力をもつ。
(3)所有の欲望と結びついているのは、貨幣と戦争と暴力と吝嗇で
  ある。そうい魔法は民衆も求めている。
(4)やはり技術や発明が社会を豊かに変えるのだ。それは近代以降
  の魔法なのである。
(5)土地にひそむ物質は、結局は「富」あるいは「資本」の原基で
  あるにちがいない。そのことを知らしめたのも近代の魔法だった
  のだ。

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□ 松岡正剛の千夜千冊㉑  交貨篇 1375夜(2010.7.30)
仲正昌樹著『貨幣空間』 情況出版 2000

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ファウストの錬金術からデリヴァティヴまで…。近代的「貨幣演劇」
をささえる幻灯装置の解体にむけて。

目次
1 ゲーテと近代の錬金術
2 貨幣の社会記号論:『経哲草稿』から『経済学批判要綱』へ
3 経済学批判のアポリア:物象化と記号
4 ゾーン=レーテルの社会的存在論:貨幣と「認識」の条件
5 貨幣に潜む超越論的主観性:『否定の弁証法』への道
6 「亡霊」としての貨幣:デリダからマルクスへ
7 マルクスと広松の「亡霊たち」

■ ダリモンとマルクスの貨幣論
近代このかた、人間も社会もずぶずぶと価格社会の中にいる。いまや
価値がモノ化され、意識もモノ化されてきた。なぜそうなったのか。
ゲーテもマルクスもアドルノもデリダも、その謎を「ゼロ記号として
の貨幣」に見いだした。はたして資本と商品のAIDAで、また労働
と生産の、自然と生活のAIDAで、貨幣は何を体現しつつあるのか。
それとも貨幣だけが何もしていないのか。 
例えば、マルクスの『経哲草稿』(789夜)は、資本主義体制下の
人間の類的な営み、すなわち労働が、どんなことをしようとも根本的
に矛盾した性格をもたざるをえないことを最初にあきらかにし。その
なかでマルクスは、
①貨幣はいっさいの人間的で自然的な属性をその反対物に変化させて
しまう「目に見える神」になっていく
②貨幣はもろもろの事物の全般的な「とりちがえ」と「転倒」をおこ
す。
③さらに貨幣は不可能なものどうしをぴったりと親睦させる娼婦の役
割をはたしていく。
④そして貨幣は人間と諸国の国民の娼婦的な「とりもち」になってい
くなどを予告し、個人の欲望の絡み合いによって交換経済が成立して
きた歴史に対して、貨幣による交換経済が個人の内なる絡み合いを増
殖させているのだという視点をつくりだした。貨幣は商品の交換手段
として“発明”されたものであったはずだったのだが、ところが貨幣
を中心にした交換経済社会は、貨幣を人間の存在を規定する媒体(メ
ディア)にしてしまう危険性を孕んでいたと松岡はそう解説している
が、わたしには50年前に読んだ記憶など<疎外>の一言で括るぐらい
が落なのだがそんな現象学もあるのかとハッとさせられた。また、フ
ランスのプルードン主義者アルフレード・ダリモンは、貨幣(紙幣)
の流通過剰(いわゆるマネーサプライ)によって周期的にひきおこさ
れる通貨危機を防ぐため、大胆な処方箋を案出した。金銀との交換比
率を書きこむ「価値記号としての銀行紙幣」に代わって、その商品を
生産するのに要したかあるいは要するであろう労働時間を記した「労
働貨幣」(Arbeitsgeld)ないしは「時間紙券」(Stundenzetteln)を
導入を提案したが、労働貨幣」に示される労働時間は平均的な理念に
すぎず、現実の労働をかえって隠蔽しかねない。労働そのものが資本
制社会によって歪められている本質を解明し、その歪みを何食わぬ顔
で別の価値に見せている商品の本質を、「商品-交換価値-貨幣」の
軸において根底的に検討することが重要なのだと「交換価値が普遍的
な妥当性をもつように見えるのは、価値をあらわす象徴➲貨幣や商
品が社会的な性格」と見抜きマルクスが批判(『経済学批判要綱』)
し----その象徴の社会性こそ「仮象」や「みかけ」にすぎず、そこに
こそ社会的象徴を私有財産や私的利益にするための、巧妙で狡猾な
“錬金術”がはたらいていると考えた----と指摘している。このよう
に二重に物化された価値」という問題が立ちあらわれ、近代資本主義
は①交換価値と②使用価値と③労働価値を商品として、④また貨幣と
して、一緒くたにしていったと結ぶ、

■ ゾーン=レーテルの貨幣認識
アルフレート・ゾーン=レーテル(1899~1990)に『認識論の社会学理
論』がある。通称「ルツェルン報告」と呼ばれる。
ゾーン=レーテルは
デュッセルドルフの大工場主ペンスゲンのもとで養育され、ハイデル
ベルク大学で経済学博士となり、ワイマール末期からナチス政権初期
にかけては中欧経済会議MWTに勤務した。戦争中はスイスに亡命し
ていたが、このとき『資本論』の再構成を試みた。それが『認識論の
社会学理論』だと言う。彼の研究の眼目は、近代社会が“社会化”さ
れたプロセスには個人の「分離的=排他的な自我関係」をめぐるいっ
さいの必然的な矛盾が内包されていることを証明することにあったが、
社会というものはもともと「連関」(Zusammenhang)されているのだ
から、この矛盾の正体は「連関」の中にあり、ゾーン=レーテルはそれ
が「交換」にあらわれてきたと見た。資本主義制下の交換経済が、人
であれ物であれ、存在のすべてを“同じ化”していると見た。が、そ
れは経済関係や搾取関係だけにあらわれるのではなく、社会の認識レ
ベルでも進行。人々が自分で自分に自己遭遇(Selbstbegegnung)し、
社会的関係の相関物として反省的自己意識をもつと、そこに交換関係
を照射した何かが見えてくる。それをゾーン=レーテルは“貨幣意識”
とも“富の反映意識”ともみなした。マルクスは『資本論』では、有
名な指摘だが、これを「社会関係が物象化されている」と見た。本来
は富の相互交通のためにつくられた貨幣が、それぞれの自己が社会的
なリフレクションを受けているうちに別の力を発揮してしまった。ゾ
ーン=レーテルはそれがとくに「市場の自由」の名において進捗する
と考えた。

■ アドルノの弁証法的貨幣論
テオドール・アドルノの教授資格論文は『キルケゴール』。そのテー
マは「近代に生きる私にとって、物象化の呪縛を逃れることは可能か
」というもの。キルケゴールが生きた19世紀半ばの社会は、すでに
どっぷりと貨幣経済に見舞われ、そのなかでキルケゴールは、近代的
交換社会では、自分自身には「物自体」を認識する能力が失われてい
るか、奪われているだろうと実感する。「私」がかかわりうるものは
交換価値に媒介された「物化された現実」だけ。では、どうするか。
仮にそのような現実を拒否できたとしても、社会の関係そのものが貨
幣によって物化されているかぎり、そこから逃れることはとうてい
不可能である。もし「私」がそれでも何かについて「物自体」をこえ
ていきいきと感じられるとすれば、それはもはや「美」のようなもの
だけなのかもしれない。アドルノは当初、このようなキルケゴール的
判断を前提にしながら、ワルター・ベンヤミン(908夜)らとの交
流を通して、ひょっとするとベンヤミンが『パサージュ論』で言うよ
うに、過去のモードに本来の無階級社会のイメージ(美)を見いだす
ことの可能性があるのかとも思った。しかし、ベンヤミンが見いだし
たパリのパサージュの“物たち”も、考えてみれば「商品」なのであ
る。そこを突破するには、アドルノは美も商品も一緒に弁証法的に止
揚していくしかないと考えた。このとき、アドルノはゾーン=レーテル
の『ルツェルン報告』を読んだのだ。そして二人ながらに「間主観性」
(共同主観性 Intersubjektivität)の発展という問題のほうに進んで
いった。フッサールが言う「原体験」としての間主観性ではなく、「
共措定」できる間主観性のほうへ。フッサールには貨幣論がなかった。
ここから『ミニマ・モラリア』(1257夜)までは一足飛びである。
その22番の「子供を浴槽に入れて」には、交換価値の原理に引きず
られている知性の限界が語られ、「貨幣についての思考とそれに随伴
するすべての対立は、最も柔らかでエロチックな、つまりは最も高尚
で精神的な関係の中にまで、強制的に入りこんでくる」と書く。

■ デリダが読む「亡霊としての貨幣」
ボードレール(773夜)の『パリの憂鬱』に「贋金」(La fausse
monnaie)という散文がある。私と友人が煙草屋を出たところで、友人
が貨幣を丹念に選り分けはじめた。そのあと二人は震える手で帽子を
差し出す乞食に会った。友人は私とは比較にならないほど多くの金を
喜捨したのだが、あとで「あれは贋金だよ」と言った。私は、この贋
金がいつか本物の貨幣になって殖えることはないだろうか、この贋金
がちっぽけな投機家を数日のうちに巨万の富に誘うのではないかなど
と思った、というような一節。このボードレールのテクストを、ジャ
ック・デリダが素材にしてメタテクスト『時間を与える』を書いた。
贋金を媒介にして誰が何を与え、誰が何を与えられたのかとか、贈与
っていったい何なのかとか、「あれは贋金だったよ」という言葉が真
実か虚偽かすらわからないとか、そもそも「信用」って何なのかとか、
そんなことを綴りながら、すべてはコンベンション(取り決め)によ
るのではないかといった思案をめぐらしているメタテクストだ。
そのうえでデリダは、貨幣的なるものが「閉ざされたオイコス」の内
部を突き抜けて、外部の「物」の循環になっていくという構図を示し、「
貨幣のオイコス外部性」を論じた。それは貨幣がオイコスを突き抜け、
まるでウィルスのように循環社会を駆けめぐっている光景となった。
だとしたら、それは何かの「亡霊」であろうともデリダは『マルクス
の亡霊たち』に書いている。まさに貨幣とは亡霊なのである。貨幣は
亡霊のように自身の特性を失って透明になり、そうすることによって
すべてのものに取り憑き、使用価値を捨象した一般的所有作用だけを
相手に与えていく代物なのだ。

そうであるなら、マルクスのように「貨幣を信仰するな」と言うだけ
では足りない。デリダはマルクスのテクストを「亡霊を呼びだす魔術
のテクスト」として読み替えることにした。資本主義の舞台で貨幣が
何かを「みせかけ」にするために化けて出てきたのだと読み替える。
いや、貨幣だけではない。商品もまた市場という舞台で活動する亡霊
の影なのである。 はたしてこのようなデリダのエクリチュールの連
打によって、マルクスが“脱構築”されたのかどうかは確証はないが、
マルクスの思想と貨幣の思想がこのように二重に“差延”されうるだ
ろうことは、すでにゲーテがファウストとメフィストの二重性によって
貨幣の物語を出現させていたことから言っても、しごく当然のことだ
った。
                         この項つづく

風蕭々と碧い時代

● 今夜の寸評:沸騰する欲望と対峙する知恵

 

  


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