斎藤兄から送られた葉室麟『蜩(ひぐらし)の記』(祥伝社)を読んだ。
出だしの情景描写が冗長なので、ちょっとつまずいた。しかし読み進むうちに、友人、水上信吾との豊後羽根藩城中での刃傷沙汰の廉で、家老・中根兵右衛門により切腹と引き換えに向井山村に幽閉中の元郡奉行、戸田秋谷の監視役に遣わされた檀野庄三郎の眼を通して、10年間の家譜編纂ののちに切腹を命じられている戸田秋谷の武士道精神にかなった生きざまに惹かれ、出世にのみ生きる家老・中根兵右衛門の意図に反して戸田秋谷の娘婿にまでなっていく物語の展開の仕方が面白く、一気に読み終わった。
さきの大戦での敗戦で、自決もできず東京裁判に引かれていった日本軍の将軍たちが絞首刑になり、武士道が完全に失われたという坂口安吾の『堕落論』を持ち出すまでもなく、日本人の美質である武士道精神を著者が考えようとしていることが理解できた。
尤も、『堕落論』は武士道精神を失ってしまった日本人は堕落しきらないと再起できないという趣旨ではある。
無条件降伏後いまだ他国の支配に安住している日本人の大半が、そのことすらも認識できていないのだから、堕落はしきっていると思うので、せめてその認識だけでもできればいいと思うのだが。
出だしの情景描写が冗長なので、ちょっとつまずいた。しかし読み進むうちに、友人、水上信吾との豊後羽根藩城中での刃傷沙汰の廉で、家老・中根兵右衛門により切腹と引き換えに向井山村に幽閉中の元郡奉行、戸田秋谷の監視役に遣わされた檀野庄三郎の眼を通して、10年間の家譜編纂ののちに切腹を命じられている戸田秋谷の武士道精神にかなった生きざまに惹かれ、出世にのみ生きる家老・中根兵右衛門の意図に反して戸田秋谷の娘婿にまでなっていく物語の展開の仕方が面白く、一気に読み終わった。
さきの大戦での敗戦で、自決もできず東京裁判に引かれていった日本軍の将軍たちが絞首刑になり、武士道が完全に失われたという坂口安吾の『堕落論』を持ち出すまでもなく、日本人の美質である武士道精神を著者が考えようとしていることが理解できた。
尤も、『堕落論』は武士道精神を失ってしまった日本人は堕落しきらないと再起できないという趣旨ではある。
無条件降伏後いまだ他国の支配に安住している日本人の大半が、そのことすらも認識できていないのだから、堕落はしきっていると思うので、せめてその認識だけでもできればいいと思うのだが。