また、絵を売ることについて考えさせられて
しまった。
先日の作品展示を観ていただいた方から
絵を購入したい旨のメールをいただいたのだ。
大変ありがたく、光栄なことだと心から
感謝しているのだが、諸事情があって
お断りせざるを得なかったのです。
せっかくのお気持ちに、気を悪くされたのでは、と
じくじたる思いがあって、敢えて書かせていただく
ことにした。
初期の頃など、売りたいと思わなかったのと、
身の程知らずの自己過大評価で、たまに絵を
購入したいと言われても、ほとんどお断り
させていただいていた。
どうしても欲しいと言われる方に、「では、差し上げます」
と言って差し上げたのだが、後で1万円送られてきて、
お金を返すに返せず苦慮したことがある。
相手の方が決して悪気があっての
ことではないので、お気持ちとして、
いただいたのだが、これでは差し上げたことに
ならなくなってしまうので、困ってしまったのだ。
今にして思えば、これもプロの画家さんのように
自分の絵を売るということに慣れてなく、
あまり念頭になかったことで起こって
しまったことである。
正直、今でもあまり作品を売ろうとは考えては
いないのだが、以前と違って最近は、画廊の
方の意見を耳にしたりして、絵の値段の相場、
身辺の変化などで、身の程も知るように
なってきている。それに今回のように、ときに欲しいという
ご希望があったりするので、以後、諸事情がない限り、
なるべく意に沿いたいと思うようになったのです。
さすがに、額代や紙代などより足が出て、赤字に
なるようでは困るのだが、本気でほしいと思って
いただけるのなら、希望者に値段を付けていただいて、
極力それに沿いたいと思えるようになったのです。
ただ、前述したように、こちらの諸事情により、非買にさせて
いただく場合も多々あるのです。
例えば、今回希望されたのがこの作品なのですが、
この作品は会社勤めをしていた頃、上司の飼い犬が
産んだ子犬7匹を撮った写真を見て、ぜひ描かせてくれと
お願いして、2年前に描いた作品なのです。
描きたいと思いつつ、スイッチが入ったのが
4~5年後で、何だかんだで計6~7年の
歳月を経ているのです。
そういった事情もあって、値段は別にして、
手放すにはまだ気持ちが整理されていないのです。
多かれ少なかれ、作品にはこのような諸事情が
潜んでいるので、値段が付けづらいのはおわかり
いただけるかと思います。
したがって、こういう作品は現在非買品ということに
なるわけです。
しかし、気持ちの整理がつけば、非買品リストから
外そうかとは思っています。
このような諸事情がそのほかにも数点あるのです。
今回の作品展示で、反省しているのは、
非買作品に「非買」という表示をしなかったことです。
販売という意識が希薄だったせいなのですが、
購入したいというありがたい希望者が一人でも
おられる以上、これからは「非買」の表示を自分に
義務付けしようかと思っています。
最近は気持ちの変化で、次々と
作品は進化していかなければならないと
より強く思うようになってきているので、
過去をあまり振り返らず、常に前を向いて
いきたいと思っているからです。
絵描きにとって、よく言われるように作品の絵は
自分の子供のようであり、心の分身のような
ものでもあるので、送り出すのに気持ちの
整理が必要なのです。
さりとて、絵は描き上げた瞬間から作者の
手を離れるのもまた事実なので、いつまでも
手元に置いておくのがベストとも言えない
ところもあるのです。
望まれる…ところがきっと絵にとって一番
いい住み心地なのかも…
と今は思えるようになっているので、
このような思いに至った次第です。