時折、人懐かしくなるときがある。
わたしなど、いつでも人恋しがるタイプなので、
年中人恋しい思いはあるが…。W
ところが、今回は人ではなくて、カラスなのだ。
もう、十数年ぐらい前になると思うが、会社
勤めの頃、一羽のカラスがどういうわけだか
わたしに近づいてきた事件があった。
会社の階段の手すりに止まっていて、わたしが
どんなに近づいても逃げないのである。
それが3日ほど続き、こちらが怖気づいていると、
なんとサンマの頭を持ってきて目の前に置いたのだ。
どうやらプレゼントのつもりらしかったのだが、
わたしは、あの嘴に恐れをなして、避けたのである。
サンマの頭を置いていって以来カラスは姿を見せなくなった。
あれはお別れの餞別のつもりだったのかと、ちょっと
しんみりしたものだ。
わたしは、「お前そこ邪魔だからどいてくれ」だとか
「それ以上近づいてくれるな」だとか言って、
無下にあしらっていたのだ。
そのことが妙に残っていて、ちょっと悪かったかな…と
いう思いがこのところ、頭をもたげてきている。
もうすでに、あのカラスはこの世にいないであろうが、
カラスそのものに親近感を覚え始めたのである。
近くの緑地公園でカラスを見かけると、時折
声を掛けたりしている。
「おい!」と言うと、ちょっと首をかしげて、聞き取ろうと
する様子をみせるのだ。
今度、腰を落ち着けて、じっくり話しかけてみようかと
思っている。
カラスの友人ができるかも…。W