春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「赤い名前」

2013-06-06 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/06/06
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>ことばの知恵の輪・色の世界(1)赤い名前

 教師をしていていいことのひとつは、毎年学生にいろいろな新しいことを教えてもらえること。今期も、4月からいろいろ学ばせてもらっています。

 学期はじめの作業として、机の上に置くカードに名前を書かせているのですが、赤青黒のマーカーペンを用意し、自分がクラスで呼ばれたい名前を書くよう指示します。それぞれ自分のニックネームや日本人に呼ばれやすい名を選んで書き込みます。「美月」さんは、中国語の発音メイユエですが、朝鮮族出身なので、朝鮮語発音ではミウォルです。彼女は「日本人に覚えてもらいやすいように、ミツキがいいです」と希望しました。
 モンゴル人の名前たとえば、「ダワーニャミーン・ビャンバドルジ」を本名で覚えるには、私の記憶力がおぼつかないので、相談して「ダワーさん」にしてもらいます。(例にあげたこの名前、私が担当したモンゴル人ではありません。日馬富士の本名です)

 名前カードには、赤青黒、好きな色で名前を書いてもらいますが、今期の中国人学生に「中国では、名前を赤で書くのはお葬式の時だから、普段、名前は赤ペンで書かない」と教わり、はっとしました。中国のお葬式については一通りの式次第はわかっているつもりでしたが、中国で葬式を出す側になったことはないので、細かいことは知りませんでした。

 葬式を出す側になった場合、死亡通知を死者の友人知人に送る。死者が年取った人のときは白い紙に、若い死者のときは銅色の紙に「いつ亡くなった」というような死亡通知を書き、書いた人の氏名住所を赤字で右上に署名する。赤い字での署名は死亡通知に通じるため、普段は書かない、ということでした。

 こんな細かいことでも、それぞれの国の文化が背景にあり、赤いペンを渡して「ここにあなたの名前を書いてください」と言ったら、いやな気分を与えかねない、ということに、もう25年も日本語教師をしていて、ようやく気づいたのです。ほんとうにまだまだ未熟です。

 日本語教師たる者、言語学、日本語文法学、日本語音声学などに精通しているつもりでも、まだまだ知らないことがいっぱい。
 毎年学べること、有り難いことです。

 留学生が毎年、同じような「へんな日本語」について、質問してきます。
 日本語教師志望者には、「第2言語、外国語としての日本語を意識してください、と言っています。
 日頃ヘンと思ったこともない日本語ですが、外国人から見ると不思議なことがいっぱいあるんですよ。みなさんは、常に、外国語としての日本語を考えるようにしてください」と要請しています。

<つづく>
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする