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ぽかぽか春庭「ポケモンの色彩名詞」

2013-06-13 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/06/13
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>ことばの知恵の輪・色の世界(6)ポケモンの色彩名詞

 春庭が担出講している国立大学では、大学院生と研究生の日本語教育を担当しています。今年受け持ちのクラス、3つのクラスで国籍は16ヶ国。
 韓国、中国(新疆ウイグルと内モンゴルを含む)、タイ、マレーシア、ネパール、タジキスタン、イラン、トルコ、チュニジア、シオラレオネ、モーリタニア ミクロネシア,フィンランド、フランス、イタリア、チェコ。
 毎年、「お初」の国に出会います。今年の「はじめまして」の国は、タジキスタン、ミクロネシア、シオラレオネ、モーリタニア。地図を探さずに、どこにある国なのかすぐに分かる人、すごい!。

 私立大学では、3つの大学の日本語学、日本語教育学の授業。日本人だけのクラスもあるし、留学生と日本人が混在しているクラスもあります。
 日本人学生の中にひとりだけ中国人留学生が在籍しているクラス、日本人学生4人ネパール人2人中国人10人という混合クラス、日本人だけ9人というクラス。クラス構成は毎年変わります。

 日本語教育ブームで、誰も彼も「ついでだから日本語教師資格も取っておこう」というころもありました。100人のクラス、50人のクラスというのを受け持たされて、ほんとうに困りました。春庭は双方向授業を重視しているのに、100人50人などという授業では、一方通行の講義形式でなければ授業が出来なかったからです。学生に主体的に学んでもらうこと、自分で課題を見つけて調べ、発表する、この過程が大事だと思っています。

 「課題が見つからない、どんなことを調べて発表したらいいのか分からない」という学生も毎年います。そんな学生に「調べ学習のひとつの例」として毎年例にあげるのが、「ポケモンタウン」です。この話は、春庭コラムでは何度も取り上げてきたので、「毎度おなじみ」の話なのですが、新入生は「聞いたことない」ということなので、毎年「ツカミ」のひとつとして話題にだします。

 ポケモンのゲームシリーズに、どんな名前がついてあったか、思い出させます。1996年に発売された第1作は「赤・緑」として世にでました。今や大学1年生は1995年生まれで、生まれたときからポケモンがあった世代です。赤・緑の次は青。このあたりのシリーズで主人公が旅する町の名を思い出させます。大学1年生には「ポケモン赤、緑、青」など古すぎて、親に聞かされる昔話のようなものですが。

 初期の赤緑シリーズの町の名前。「トキワシティ」「ニビシティ」「ハナダシティ」「クチバシティ」「シオンタウン」「タマムシシティ」「セキチクシティ」「ヤマブキシティ」「グレンタウン」「ダイダイ島」
 金銀シリーズの町の名前「キキョウシティ」「ヒワダタウン」「コガネシティ」「アサギシティ」「タンバシティ」などなど。

 「これらの町の名が何から命名されているか、共通点を調べて発表しなさい」というのが、「発表課題をどうやって見つけたらいいかわからない」と訴える「自分で課題を見つけることができない1年生」に与える最初の課題です。先生が黒板に書いたことを一生懸命ノートに書き写して、教科書とノートを丸暗記してそれを試験に書いてよい点をとる、という勉強法で高校生活をおくった「私は勉強ができる」という学生には、自分で「おもしろいと思う日本語」を探し出す能力が不足しているのです。

 私は英語落ちこぼれ学生でした。落ちこぼれだから「どうして日本語には妹と姉の区別があるのに、英語はsisterだけなのか」とか「どうして英語はa penとかan apple」と、「一個のりんご」と表現しなければいけないのか」とか、英語には日本語から見たら不思議な言い方がたくさんありました。そんなことを不思議に思わずにひたすら暗記しなければよい点が取れないから、落ちこぼれてしまったのです。

 英語とは無縁に生きるつもりで国語教師になったのですが、日本語教師に転身後は、英語を学び直しました。言語学や英語学を学んで基礎を知ると、英語もおもしろい言語だと思えるようになりました。
 今の大学生、「なぜ?」と、問うことをせず、自分で課題を見つけ出す力がない者が多々見受けられます。

 ポケモンの町の名、初期の町の名は多くが「和語の色彩名詞」です。
 以下のサイトをみせて、和語の色彩名詞を確認させます。常磐色、鈍色、縹色、朽葉色、紫苑色、玉虫色、石竹色、山吹色、紅蓮色、橙色、桔梗色、檜皮色、黄金色、浅黄色、丹波色など、、、、

和語色彩名詞を並べているサイト
http://www.colordic.org/w/

 え~、色の名前だったんだあ、と学生は納得します。
 古代には四色しかなかった色彩名詞が、渡来人の染織技術を取り入れる過程で色の名が増え、さらに日本独自の染織技術の発達で、江戸時代には茶色、鼠色(灰色・グレイ)だけで何十色もの色の名前があり染め分けられていました。銀鼠、素鼠、源氏鼠、絹鼠、薄墨、錫、鉛、消し炭、、、、、土色、枯茶、枇杷茶、芝翫茶、路考茶、団十郎茶、渋紙、胡桃、狐、柿茶、栗茶、、、、

 和語から外来語に移行する色彩名詞も多い。桃色よりピンク、橙色よりオレンジ色のほうが、一般的になりました。
 紺ではなく、ネーヴィーブルーというほうが通りがよいとすると、「♪紺碧の空~」を歌う早大生は「コンペキ」がどんな色なのか知らずに歌っているのだろうし、「亜麻色の髪」をずっと「甘い色」だと思い込んで歌っていた、という学生もいました。

 現在、JIS規格で用いられている色彩名詞は、500色くらいになっていますが、臙脂(えんじ)色、煉瓦(れんが)色、紅殻(べんがら)色などの色の名も、若い世代にはさっぱり伝わらない色になっています。
 色彩名詞も世に連れ、人につれ、のようです。

<つづく>
コメント (2)
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