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ぽかぽか春庭「モニターの中の会田誠in森美術館」

2013-06-23 00:00:01 | エッセイ、コラム


2013/06/23
ぽかぽか春庭@アート散歩>春庭の現代ゲージツ入門(5)モニターの中の会田誠in森美術館

 森美術館の会田誠展。展覧会が始まった2012年11月から、早いとこ見ておかなくちゃ、と思っていました。
 私が最初に見た会田作品は、「紐育空爆乃図」です。90年代後半。この作品を雑誌のグラビア見開きで見たときはそれほど驚きもせず見たのですが、そののち、あれよあれよの大活躍。
 ギャラリーでの個展はありましたが、都心の美術館でのまとまった作品展は開催されておらず、今回が初の大規模な展覧会です。

 見たいと思ってなんとか招待券が手に入らないか、1500円は高いじゃないか、森美術館は、いつも高い!私は自腹で美術館に入るにつき、1000円以上は払えぬのだ、なんてブツブツ言っているうちに、「児童ポルノ被害と性暴力を考える会」という団体が、会田作品を「児童ポルノ」である、と断定して森美術館に抗議文を送ったということが報道されました。美術館側は話題になって観客が増えて大喜びだろうけれど、混むのはかなわんなあと思って様子見。

 そうこうしているうち、会期終了も近づいてきて、それなら、六本木アートナイトで一晩中美術館にいてもいい、という企画のとき、夜通し美術館にいてみよう、と思って待っていました。
 3月23日、待っていた六本木アートナイトの日。入場料が1000円になるからと思ってこの日を待っていたのに、夜の21:00に入館したら、1500円取られました。1000円になるのは、24:00すぎに入館する人だけでした。いつものオマヌケ。

 24:00までは、比較的観覧者が少なくて、例の「18禁部屋」も混んではいたけれど、押すな押すなの混み混みではなく見ることができましたが、24:00すぎたらカップルやらグループやらで行列を作る混みようになってしまい、見るどころではなく,夏祭りの夜店かと思う雰囲気。会田誠は、絵の見られ方としてこういう猥雑なわいわい雰囲気を望んでいたのかも知れないなあ、狙い通りだなあと思います。森美術館は、「児童ポルノなんたら」の抗議文さまさまでしょう。

 会場内には通常の美術館のように椅子が置いてあるのだと思って油断していましたが、椅子がごくわずかしかなくて、座れるスペースはすでになし。この賑わいで、これだけ消費され尽くすと、会田誠鑑賞法も以前とは異なってくるだろうなあと思います。前は、マニアックな人好みっていう雰囲気もあったけれど、もはや大衆消費財。

 座り心地のよいソファが置いてある曲がり角の部屋にはモニターがふたつ置いてあって、小さいほうは、上野公園に男が立っていて、そのうしろを修学旅行生がぞろぞろ通り過ぎていくのを写した8分間の映像が無限ループで流れています。

 大きいモニターには、会田誠(と思われる男)が山道を鼻歌うたいながら歩いて行く映像が、10:22、10:36、11:05、などの時間表示つきで何秒かずつ流れる。
 「126分ループ」と表示があるので、観客には126分見せるものなんだろうと思って座る。最初に座ったとき、126分ループというのは、ダビングしてある荒い画面のビデオテープ一巻の長さなのだと気づかなくて、126分延々と山道を歩いて行くようすが流れるのかと思っていました。

 見続けていると、10:22が何度もくりかえされ、10:36も繰り返され、散歩男が歌う鼻歌まで、覚えてしまう。覚えてしまうと言っても、どんな鼻歌かと聞かれると、記憶してもすぐに脳内拡散してしまうようなたぐいの、「フンフン」としか言い表せないことばの羅列。思い出せないけど「ションベンオトコ、ションベンオトコ、ションベンオトコガアルイテイクト、、、」だったか、そういう類のつぶやき。

 椅子に座って目をつぶってしまうと座っていられないのだと言うことがわかりました。お婆さんとおばさんの二人連れがいて、おばさんはとにかく入ったからには、一回り見てくると決意を固め、お連れで来ているおばあさんは、疲れてソファに座ってうとうとし始めました。お婆さんが目をつぶっていると、係員がすっとんできて、「ここでの睡眠はご遠慮願います」てなことを「世紀の大犯罪」のように重々しく告げた。

 で、それを見ていたから、私は座っている間は目をつぶらないでモニター見ている振りをしようとしていたけれど、ションベンオトコはショーモナイ鼻歌を繰り返すので、じきに眠くなってしまう。つまり、ここは「深夜2:30amに、♪誰も寝てはならぬ~~という苦行をするための椅子」なのだと解釈しました。

 館内で唯一、写真をとっていい「考えない人」が、考える人のスタイルで脱糞中。これは、昔、考える人が便器に座っているコマーシャルがあったから、別段驚きもしないけれど、おむすび怪人は便器じゃなくて、自分の糞の山に座っている。山にはタンポポなんかも生えていて、完全リサイクル。「地球にやさしいリサイクル」を訴えるエコな人々には、実際、これくらいのリサイクルはやって欲しいと思うよ。自分のクソくらい自分でリサイクルできないで、なにが地球にやさしい、ですかって。

考えない男

リサイクルたんぽぽ


 わが家は、牛乳パックを洗って開いたのと古新聞はリサイクルに出しているけど、スーパーの発泡スチロールは「わが区の焼却炉では燃えるゴミ」に出しているし、むろん排泄物は下水に流しているので、地球にやさしくない一家だと自覚している。東京都の下水は、けっこうな費用をかけて、「飲めるくらいきれいな水」に再生されている。
(「便器にすわって考える人」は、TOTOとかのCMかと思い込んでいたけれど、豊島園のCMだった)

 「考えない人」の隣にあるモニターで、「朝起きてからご近所を一周してくる散歩の映像」も、見ました。いつもならこのような映像作品はめったに見ませんけれど、なにせ朝まで時間を潰さなくてはならなかったので。

<つづく>
コメント (4)
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