2013/06/19
ぽかぽか春庭@アート散歩>春庭の現代ゲージツ入門(2)会田誠、駄作の中にだけ俺がいる
小中学生が描かせられる道徳的なポスターを真似た、28歳のときのシリーズ。
「時間を守ろう」という「遅刻ボクメツ」ポスターは、高校教師が門を閉め続けて女子生徒を挟んで殺している絵である。
このシリーズも、ちゃんと見ないで「え~、これって、小学校1年生のとき描いたポスターなんだって、じょうずじゃん」なんていいながら通り過ぎるギャルたちがいる。まあ、自分が見たいように見ればいいんだけれど、せっかく見に来たのだから、描いた人の描いた気持ちくらいはわかろうとしてあげてもイインじゃね?
大作の部屋に並ぶ大作の数々。
「灰色の山」は、縦3m、横7mの巨大な画面に、ボタ山のような円錐の山が築かれている。
山水画ふうの山の風景に近づいてみると、山の中には、どぶねずみ色のサラリーマンの死体とOA機器がうずたかく積み重なっている。
この作品を、会田は北京で公開制作した。
古着屋で千円のスーツを買い、北京に持って行った。自ら古着スーツを着てサラリーマンに扮する。さまざまな死体ポーズをとってセルフカメラで撮影する。その画像をもとに、一体一体を丁寧に描き込んで、山を描く。遠目には中国南画の山水画のように見える。細部は徹底的リアリズムの死体。
この千円スーツはリーマン死体描写以外にも役だった。このスーツのおかげ(?)で、中国テレビCMに出演するアルバイトを体験できたのだと画伯は語る。
髪をオールバックになでつけられて、画伯扮する日本人科学者は、日本語で「日本の火山のマグマから抽出した成分が入っている膏薬」という湿布薬の効能を語る。長年リュウマチの痛みに耐えてきた中国農婦(「中国農村の悲劇的貧しさを一身に背負った不幸のかたまりのような農婦」を演じる女優)が、画伯にとりすがって、「あなたが研究開発した湿布のおかげで、リュウマチの痛みがなおった。あなたは命の恩人だ」と、ボロボロ涙をこぼす。そういうCMだったそう。うん、こんなインチキくさい中国CM,私も中国赴任中にわんさかと見ました。
このCM、今でも中国で放映されているのかも。
日本の火山にだけ存在するマグマのおかげで、リュウマチもなおる。日本の良心、日本の科学成果の体現者である無精ヒゲのニセ科学者画伯は、こつこつと死体の山を描き込む。きっとせっせと働いて「日本株式会社」に使い捨てられたリーマンたちは、どんな痛みもたちどころに消えてしまう膏薬を背中や足に貼り付けて、会心の笑みを浮かべつつ、自分が死体になっていることすら気づかないのだろう。
「ジャンブル・オブ・100フラワーズ(百花繚乱)」2012最新作。
縦3m横10mの巨大画面に、体の一部を打ち抜かれて欠損した少女たち。体の一部分は飛び散っていく。花や蝶や、星になって、少女たちの肉体はきらめき飛び散っていくのだ。少女たちは、サナギのような化け物を抱えていて、ゾンビvs少女の戦闘ゲームであるらしい。実際ゲーム世界では、少女も少年もゾンビも、シューティングの対象になれば、このように砕け散る肉体をさらしている。
「児童ポルノ~」の人たちは、この絵もやり玉にあげているけれど、残酷な絵柄を攻撃するなら、小学生中学生の姿はほとんど見かけなかったこのような美術館での展示を問題とするよりは、ゲームの描写が現在どのようなところに来ているのか、研究すべきであろう。ゲームは18禁じゃないものだって、すごい描写が多い。
「電信柱、カラス、その他」もすごい。この世の終わりのような、灰色の世界。電信柱が斜めに倒れていて、カラスが飛び交っている。中央下に止まっているカラスが咥えているのが人の指であることに気づくと、情景から受け取る意味がぐるりと回転する。もう一羽のカラスが咥えているボロ布は、セーラー服の襟のきれはし。すると他のカラスたちがくわえているだらりとぶら下がった切れ端はどれも肉片であることに気づかされる。エグイです。
セーラー服の切れ端を加えているカラス
カラスが咥えた指
会田誠は天才である。で、私たちにとって会田は、天災かも知れない。防ぎようもなく、やってきて、禍々しくも人の世を変えてしまう。
人間世界を突き崩し、おのれが死体山の一部であることをつける、天才による天災。
会田は自身の制作過程を追ったドキュメンタリー映画『駄作の中にだけ俺がいる』(渡辺正悟監督作品)の中、「美術家は、見ることの快楽を与えるのが仕事」という意味のことを語っていました。快楽を与えるのか、快楽に思えるような毒を与えるのか。少量の毒が薬として人体に作用するのか、オーヴァードースで人を死にいたらしめるのか。
18禁の絵のひとつ。「食用人造少女・美味ちゃん」シリーズ。まな板の上に横たわっていたり、開きの天日干しになっている美味ちゃん。お腹を押されるとイクラ状の卵を排泄するっていう「食用」もある。「児童ポルノと性被害を考える会」が四肢を切断され犬の首輪で繋がれながら笑みを浮かべている「犬」シリーズとともに、非難している作品です。
グルメの快楽とは何か。サンマの開きを焼いて食べるのは抵抗なくて、少女の形に成形された人造肉は、食べられない?ハンバーグにしちゃえば、人造少女肉も牛肉も同じ?ジュースは?ミキサーでほどよく液体にされた人造少女?
「ジューサーミキサー」
ミキサーにかけられて、こなごなに砕かれてジュースになっていく。中味は、いたいけな少女たちである。
「ジューサーミキサー」がどのような絵であるか、見たい人だけみて下さい。見たくない人は見るなと忠告しているのに見てから「えぐい」とか、文句を言わないこと。
http://blog.goo.ne.jp/nipponianipponn/e/d771dd8f3863ef2a6d4fae97ddd1d5f7
会田誠出演のドキュメンタリー映画
「駄作の中にだけ俺がいる 」
予告編だけ見てもおもしろいですよ。
http://www.youtube.com/watch?v=mNDgduQAq_U
次回は、会田誠展vs児童ポルノ被害と性暴力を考える会
<つづく>
ぽかぽか春庭@アート散歩>春庭の現代ゲージツ入門(2)会田誠、駄作の中にだけ俺がいる
小中学生が描かせられる道徳的なポスターを真似た、28歳のときのシリーズ。
「時間を守ろう」という「遅刻ボクメツ」ポスターは、高校教師が門を閉め続けて女子生徒を挟んで殺している絵である。
このシリーズも、ちゃんと見ないで「え~、これって、小学校1年生のとき描いたポスターなんだって、じょうずじゃん」なんていいながら通り過ぎるギャルたちがいる。まあ、自分が見たいように見ればいいんだけれど、せっかく見に来たのだから、描いた人の描いた気持ちくらいはわかろうとしてあげてもイインじゃね?
大作の部屋に並ぶ大作の数々。
「灰色の山」は、縦3m、横7mの巨大な画面に、ボタ山のような円錐の山が築かれている。
山水画ふうの山の風景に近づいてみると、山の中には、どぶねずみ色のサラリーマンの死体とOA機器がうずたかく積み重なっている。
この作品を、会田は北京で公開制作した。
古着屋で千円のスーツを買い、北京に持って行った。自ら古着スーツを着てサラリーマンに扮する。さまざまな死体ポーズをとってセルフカメラで撮影する。その画像をもとに、一体一体を丁寧に描き込んで、山を描く。遠目には中国南画の山水画のように見える。細部は徹底的リアリズムの死体。
この千円スーツはリーマン死体描写以外にも役だった。このスーツのおかげ(?)で、中国テレビCMに出演するアルバイトを体験できたのだと画伯は語る。
髪をオールバックになでつけられて、画伯扮する日本人科学者は、日本語で「日本の火山のマグマから抽出した成分が入っている膏薬」という湿布薬の効能を語る。長年リュウマチの痛みに耐えてきた中国農婦(「中国農村の悲劇的貧しさを一身に背負った不幸のかたまりのような農婦」を演じる女優)が、画伯にとりすがって、「あなたが研究開発した湿布のおかげで、リュウマチの痛みがなおった。あなたは命の恩人だ」と、ボロボロ涙をこぼす。そういうCMだったそう。うん、こんなインチキくさい中国CM,私も中国赴任中にわんさかと見ました。
このCM、今でも中国で放映されているのかも。
日本の火山にだけ存在するマグマのおかげで、リュウマチもなおる。日本の良心、日本の科学成果の体現者である無精ヒゲのニセ科学者画伯は、こつこつと死体の山を描き込む。きっとせっせと働いて「日本株式会社」に使い捨てられたリーマンたちは、どんな痛みもたちどころに消えてしまう膏薬を背中や足に貼り付けて、会心の笑みを浮かべつつ、自分が死体になっていることすら気づかないのだろう。
「ジャンブル・オブ・100フラワーズ(百花繚乱)」2012最新作。
縦3m横10mの巨大画面に、体の一部を打ち抜かれて欠損した少女たち。体の一部分は飛び散っていく。花や蝶や、星になって、少女たちの肉体はきらめき飛び散っていくのだ。少女たちは、サナギのような化け物を抱えていて、ゾンビvs少女の戦闘ゲームであるらしい。実際ゲーム世界では、少女も少年もゾンビも、シューティングの対象になれば、このように砕け散る肉体をさらしている。
「児童ポルノ~」の人たちは、この絵もやり玉にあげているけれど、残酷な絵柄を攻撃するなら、小学生中学生の姿はほとんど見かけなかったこのような美術館での展示を問題とするよりは、ゲームの描写が現在どのようなところに来ているのか、研究すべきであろう。ゲームは18禁じゃないものだって、すごい描写が多い。
「電信柱、カラス、その他」もすごい。この世の終わりのような、灰色の世界。電信柱が斜めに倒れていて、カラスが飛び交っている。中央下に止まっているカラスが咥えているのが人の指であることに気づくと、情景から受け取る意味がぐるりと回転する。もう一羽のカラスが咥えているボロ布は、セーラー服の襟のきれはし。すると他のカラスたちがくわえているだらりとぶら下がった切れ端はどれも肉片であることに気づかされる。エグイです。
セーラー服の切れ端を加えているカラス
カラスが咥えた指
会田誠は天才である。で、私たちにとって会田は、天災かも知れない。防ぎようもなく、やってきて、禍々しくも人の世を変えてしまう。
人間世界を突き崩し、おのれが死体山の一部であることをつける、天才による天災。
会田は自身の制作過程を追ったドキュメンタリー映画『駄作の中にだけ俺がいる』(渡辺正悟監督作品)の中、「美術家は、見ることの快楽を与えるのが仕事」という意味のことを語っていました。快楽を与えるのか、快楽に思えるような毒を与えるのか。少量の毒が薬として人体に作用するのか、オーヴァードースで人を死にいたらしめるのか。
18禁の絵のひとつ。「食用人造少女・美味ちゃん」シリーズ。まな板の上に横たわっていたり、開きの天日干しになっている美味ちゃん。お腹を押されるとイクラ状の卵を排泄するっていう「食用」もある。「児童ポルノと性被害を考える会」が四肢を切断され犬の首輪で繋がれながら笑みを浮かべている「犬」シリーズとともに、非難している作品です。
グルメの快楽とは何か。サンマの開きを焼いて食べるのは抵抗なくて、少女の形に成形された人造肉は、食べられない?ハンバーグにしちゃえば、人造少女肉も牛肉も同じ?ジュースは?ミキサーでほどよく液体にされた人造少女?
「ジューサーミキサー」
ミキサーにかけられて、こなごなに砕かれてジュースになっていく。中味は、いたいけな少女たちである。
「ジューサーミキサー」がどのような絵であるか、見たい人だけみて下さい。見たくない人は見るなと忠告しているのに見てから「えぐい」とか、文句を言わないこと。
http://blog.goo.ne.jp/nipponianipponn/e/d771dd8f3863ef2a6d4fae97ddd1d5f7
会田誠出演のドキュメンタリー映画
「駄作の中にだけ俺がいる 」
予告編だけ見てもおもしろいですよ。
http://www.youtube.com/watch?v=mNDgduQAq_U
次回は、会田誠展vs児童ポルノ被害と性暴力を考える会
<つづく>