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ぽかぽか春庭「おばあちゃんの葬儀」

2016-02-03 00:00:01 | エッセイ、コラム
20160203
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2016十六夜さまよい日記1月(2)おばあちゃんの葬儀

 夫も姑も完全無宗教人間で、むしろ宗教色を嫌う人たちです。夫は、無宗教で葬儀を行うと決意。しかし、お葬式を無宗教式にするということは、ほんとうはいろいろ大変なのです。

 近親者のみが集まる家族葬にしたのですが、それにしても、読経も焼香もせずに、出棺までの1時間、どうやってすごすというのか。ずっと泣いているばかりでもダメだろうし、葬儀社が言うように「皆様でご歓談を」と言っても、なにをご歓談?坊さんの読経というのは、こういうとき間を持たせるためにあるのだと、つくづく思います。
 「父は、お坊さんを呼ばないっていうだけで、あとは何も考えてくれない」と、娘がこまってしまったので、私が娘にアドバイス。

 おばあちゃんの家の階段脇の棚に、アルバムがぎっしり詰まっているから、その中から、おばあちゃんの若い頃からの写真を、10年ごとぐらいに選ぶ。葬儀社のプロジェクターが借りられるのなら、パソコンに取り込んで壁におばあちゃんの写真を写す。昔の写真を見ながらタカ氏が「これは、長女をたずねて行ったときの写真です。姉はイギリスにオペアとして英語修行中でした」などの解説を入れる。夫の姉のつれあいやこどもたちも、自分たちの知らなかった亡き人とおばあちゃんの写真を見て、なつかしんでくれるだろうと思ったのです。
 晩年の写真では、いっしょに写っている人に思い出話をしてもらう。最後の写真は、ひ孫といっしょに遊んでいる一枚にする。

 葬儀社ではプロジェクターの準備などしてくれないというので、パソコンでプリントアウトし、ダイソーの写真立てに入れて、葬儀会場に並べて、一枚一枚いつどこで撮った写真か、父が解説することにした、と娘からメールが来ました。
 葬儀まで、娘と息子は、アルバムからちょうどいい写真を選び、ケータイで接写。それを息子がパソコンでプリントアウトし、ふたりで写真立てを買いに行って、準備をしました。

 葬儀当日、夫、娘、息子のほかは、ユキ子さんの甥っ子とその妻、東京在住で親しくしていたユキ子さんの従弟。ユキ子さんの娘婿(亡き義姉のつれあい)、外孫娘ふたりとひ孫たち、長い間音信不通だった外孫息子も、パートナーと駆けつけてくれました。家族と行き違いがあり、長いこと父親にも姉二人にも会っていなかったというので、おばあちゃんが兄弟の縁を取り戻してくれたようでした。ほんとうに内輪の家族親族だけの参列。

 娘が用意した画用紙に、幼いひ孫3人に絵を描いてもらい、おばあちゃんの棺に納めました。皆で折り紙を折って、これもお棺の中に。
 写真を見せたところ、みなそれぞれが思い出を語ってくれて、とてもよい葬儀になったそうです。「1時間のご歓談を」と葬儀社の人が言ったけれど、葬儀社の人も「こんななごやかなすばらしいご家族様に、お話を続けていただきたいのはやまやまですが」と、少々時間を延長してくれて、ようやくの出棺となったのだそうです。

 娘は、「いろいろ準備はたいへんだったけれど、よいお葬儀になったので、おばあちゃんも喜んでくれたと思う。私はみなの思い出話を聞くたびに泣けて泣けて、こまったけれど」と、メールに書いていました。

 私は遠くの空から冥福を祈ることしかできなかったけれど、娘と息子が父を助けて、立派に葬儀も取り仕切ってくれたこと、ただ感謝していました。

2010年にいっしょに箱根一泊したときの写真です。


モトのように元気になって、また温泉にいこうね、と、リハビリがんばっていた姑でした。

 
<つづく>
コメント (3)
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