迎賓館赤坂離宮南側
20161122
ぽかぽか春庭@アート散歩>東京建物巡り(2)迎賓館赤坂離宮その2彩鸞の間
娘といっしょに巡る迎賓館。お庭の噴水も青空のもとでとてもきれいでした。
見学者は西門から入り、手荷物検査を受けて館内西の通用口から入館。午後3時から入館の見学者は午前中よりぐんと少なくなり、室内もゆったり見ていられました。
以下、室内のようす、絵はがきコピーなどでお知らせします。コピーなので不鮮明な部分もありますが、豪華な室内のようすはわかると思います。
明治末年。外国と対等の地位を得ようと必死に背伸びしていた大ニッポンが、西欧諸国に負けじと作り上げた洋館。背伸びのけなげさは、今となれば「あんたの気持ちもわからないではない」と、言ってあげたいですけれど、西欧に追いつけ追い越せの気概はやがて異なる方向に曲がっていく。
日本に西洋建築技術を教えに来たコンドルは、日本を愛し、日本舞踊の師匠と結婚しました。絵の師匠河鍋暁斎の伝記を英語で書いて西欧に紹介したり、生け花紹介の英語本を出版するなど、日本文化にも造形の深い人でした。
弟子達の造形、金吾は東京駅のドームに十二支の動物レリーフをつけ、東熊は赤坂離宮の壁に鎧兜をつけた。「日本らしさ」表現の方向が、師匠とはちょっと違ったのかも知れないけれど、彼らなりに「西洋に負けない日本」を出そうとしていたのだろうとは思います。
見学客が最初に入るのは、彩鸞の間(さいらんのま)。鸞(らん)というのは、鳳凰の一種の鳥で、部屋の両サイドの暖炉の上のレリーフが鸞。金箔が貼られています。
ボランティア解説員がたくさんの資料を片手に見学客の質問に答えていました。
娘も、「素朴な疑問」を各部屋のボランティアさんに聞き、解説してもらって満足していました。娘は「だれがどんな質問をしてきても、きちんと答えていて、ちゃんと勉強していてえらいなあ、と感心していました。
娘の質問は、館内の壁や天井を飾る絵についてでした。
素材は何か。答え「外国の宮殿は石造りで、壁はテンペラ画の壁画で飾られているけれど、赤坂離宮は、壁や柱は大理石などが使われているが、全体は、鉄骨構造を組んだ上でのレンガ石造りであるため、テンペラ画は適切ではなく、キャンバスに描かれたものを天井や壁に貼り付けてある、という説明でした。原画を日本で描いてフランスへ送り、フランスで仕上げたものを貼っているとのこと。
館内の家具調度、シャンデリアはほとんどがフランスとドイツに発注したもの。シャンデリアなどは、ひとつ800kgもの重さがあり、日本では製造できなかったそうです。
彩鸞の間シャンデリア。壁と天井は白と金なので、シャンデリアがまぶしく映えます。
シャンデリアについてボランティアさんに質問しました。「このろうそく型の電球は、もとは本当の蝋燭だったのを、電球に取り替えたのですか」。
答え。建設当初から自家発電による電気が使われていました。シャンデリアは、すべてフランスの工房に発注し、輸入したもので、最初から電球を使用していた、ということでした。
彩鸞の間
広さは約160平方メートル。キンピカリンの部屋です。田舎大名が秀吉の黄金の茶室に招かれ度肝を抜かれた、というのと、同じ心理の設計なんだろうなあと納得されました。黄金茶室の次は利休好みのわびさびの茶室になるところがミソ。赤坂離宮もキンピカ彩鸞の間の次は、重厚な花鳥の間が順路です。
彩鸞の間、部屋の両側に大きな鏡があり、実際より広く感じられるようになっています。
表敬訪問のために訪れた来客が最初に案内される控えの間であり、晩餐会の招待客が国・公賓に謁見したり、条約・協定の調印式や国・公賓とのインタビュー等に使用されます。
彩鸞の間の飾り暖炉
壁にはキンピカのレリーフ。二頭のライオンの間には鎧甲の意匠が金箔貼られており、フェイク暖炉も金の飾り。明治末年の竣工だけれど、最初から全館暖房が施された設計なので、暖炉は通風機能のみで、火がたかれたことはない。
当時はやかた全体に暖房をほどこすことが贅沢の象徴だったのでしょうが、今の時代なら、暖房をした上で、暖炉で薪を燃やし、火のゆらめきを感じるほうが贅沢気分になると思います。
ライオンと兜のリーフ。
ちょっとミスマッチな感じもありますが、和風の気分を出すための鎧兜だったのでしょう。デザインがだれなのかは、説明がなかったのですが、片山東熊は、建築を学ぶ前は、山口長州藩の奇兵隊に加わっていたことを知ると、鎧兜を飾りたくなった気分もわかる。この時代を築いてきたのは、オレたちなのだ、幕府を追い込むために鎧兜の精神で会津まで出向いたのだ、と誇りたい東熊さんだったのかも。
「部屋のカーテンにさわるな、壁に触るな」という係の声を聞きながら、彩鸞の間を出ると、二階へ上がる階段へ。正面玄関から二階へ上がる大階段ではなく、脇階段です。
係員は「ここの手すりは、館内唯一さわってよいところですから、手すりにつかまって、気をつけてあがってください」と言います。
二階では、花鳥の間、階段ホール、朝日の間、羽衣の間を見学しました。
<つづく>