
20190305
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2019十九文屋日記早春はるの歌(3)上野公園文化の杜の音めぐり
東京で暮らしていると、物価は高いし電車は混み混みでシルバーシートに座らせてもらえないし、年寄りには暮らしにくいこともままありますが、それでも東京ならではの楽しみも多いです。無料コンサートがあちこちで開催されるのもありがたいことのひとつ。
春庭、せっせと情報を集めて、無料コンサートに出かけます。
2月後半、春も近いという気分で音楽を楽しみました。
2月13日は、「文化の杜の音めぐり」という催しがありました。上野公園内の6つの文化施設の中で、無料のコンサートを行う連続イベントです。私はそのうちの4か所をめぐって無料または入館料のみの低料金で音楽を楽しむことができました。
実は、このイベントを知らず、科学博物館のなかで無料ミニコンサートが開催されることだけを知って出かけたら、連続コンサートだったのです。
午前11時の東京文化会館から「音めぐり」が始まっていたのですが、私は13時半の科学博物館から。科博は65歳以上常設展無料です。
11時に科博到着。地下1階のラウンジで腹ごしらえ。いつもは地球館の精養軒に行くのですが、待たされることが多く、開演時間に間に合わない心配もあったから、1階ラウンジカフェでロコモコ、あまりおいしくないのを早食いしました。
12時半には、日本館中央ホールにはすでに椅子が並べられていて、リハーサルを聞きながら本番を待っている観客もいました。私も椅子確保。
リハーサル中の弦楽四重奏団

13時半開演。東京音楽コンクールの入賞者ら4人の女性奏者による弦楽四重奏。モーツァルトのディヴェルティメントK136とk137。
第1ヴァイオリン会田莉凡、第2V小形響、ヴィオラ瀧本麻衣子、チェロ三宅依子。立見席にもいっぱいの聴衆。
水曜日は小学校の「総合学習」の見学者が多い曜日ですが、ミニクラシックコンサートに集まっているのは、大多数がジジババでした。以後、このジジババはみなぞろぞろとコンサート巡りをしていました。私もそのひとりのババ。
大急ぎで歩いて東京国立博物館へ。近いとはいえ、他のジジババに負けじと私としてはかなりの急ぎ足。東博本館大階段の踊り場に演奏者が立ち、聴衆は階段下で立って聞きます。
1階2階の通路にもなる大階段なので、通路を締め切りにして椅子を並べてしまうことは難しかったようですが、脇の階段も何か所かあるので、コンサート開始前30分からだけでも大階段を締め切りにして椅子を並べてほしかった、と、ババは思いました。立見席で芝居を見るのもよいものかもしれませんが、ババはクラシックコンサートは座って聞きたい。
14:20から開始のはずが10分ほど遅れました。上野の森美術館で12:20-12:40にも1度目のコンサートをしている木管四重奏のメンバーなので、準備調整が間に合わなかったのかも。
フルート多久和玲子、オーボエ大隈淳幾、クラリネット草野裕輝、ファゴット小武内茜。
ボザ「夜の音楽のための3つの小品」とフランセ「木管四重奏」
フランセは聞いたことあった曲ですが、ボザは初めて聞きました。ホルンを加えた木管五重奏曲はけっこうあるけれど、木管四重奏曲はあまりなくて、木管四重奏と言えばフランセのこの曲なんだそうです。
演奏者は違いますが、ボザ「夜の音楽のための3つの小品」は、youtubeだとこのあたりで。ドイツの木管カルテット。
https://www.youtube.com/watch?v=enXi09_t57c
東博の東洋館を見ておきたかったのですが、28日にも上野に寄る予定なので、演奏が終わるとまたまた急ぎ足で旧奏楽堂へ。
奏楽堂は1890年竣工の東京芸術大学の旧コンサートホールです。藝大校内の新奏楽堂建築に伴い、解体されるところだった建物ですが、台東区が譲り受け上野公園内に移設、公開管理しています。1988年に文化財指定を受け、公開されてきました。
2013年から修理休館。2018年11月に再開館しました。私は修理後はじめて入る旧奏楽堂になりました。入館料300円シルバー割引なし。338席のキャパシティですが、ほぼ満席でした。科博で聞いた弦楽四重奏の4人の再出演です。
2月13日の旧奏楽堂ステージ

30分のミニコンサート。ハイドン『皇帝』
やはり、階段下で立って聞くのと、現役コンサートホールとして利用されてきた会場の椅子席で聞くのでは、落ち着いて聞いていられる度が違います。壁が音を反射吸収したりの音響効果は、他の新しいホールに比べれば、劣っているでしょうが、このホールで滝廉太郎も三浦環も演奏したと思えば、出演する若手音楽家たちも気合が入るのかも。
皇帝全曲を聞き終えて、最後は東京都美術館の1階アートラウンジへ。
普段置かれているテーブルと椅子がそのままなので、座ることのできる人数は限られていて、奏楽堂から回ってきた人は、みな立ち見。
二人掛けの椅子に女性がひとりで座っていて、わきにある荷物は席取りのためにだれかが置いたものなのかどうか、女性に「そこ、座れますか」とたずねてみたら、「はい、空いています」と、荷物を下ろしてくれたので、なんとか座れました。
ソプラノ澤井衣里、テノール 中嶋克彦。
ヴェルディ「椿姫」の乾杯の歌二重唱で始まり、テノール:「マリウ、愛の言葉を」ソプラノ:「私のお父さん」、二重唱ラ・ボエーム「愛らしい乙女よ」。アンコールにレハールのメリーウィドウ「唇は黙して」
おなじみの歌が選曲されていましたが、私は「マリウ、愛の言葉を」をはじめて聞きました。

アンコールのレハールだけ日本語で歌いましたが、客層を考えると、オペラ曲、全部日本語でもよかったのかも。旧奏楽堂での客は一曲が終わるまで静かに聞いていて、曲が終わってから拍手をしていましたが、科博でも東博でも、楽章がひとつ終わると何人かが「終わったのかと思って」拍手していました。私は、そういう「素朴に音楽を聞く」人たちが、クラシック曲を好きになってくれる、このような気軽に聞ける催し、大切だと思います。毎年毎年音楽学校を卒業した若者の演奏者は増えるけれど、クラシック曲を聞く世代は高齢化いちじるしく、私たち団塊世代がみないなくなったあと、クラシック聴衆はいなくなるんじゃないかと懸念されます。
私の娘息子もJ-popsを聞くのがメインで、クラシック曲は、フィギュアスケートに使われた曲以外は知りません。たとえば、ショパンのノクターンを聞けば「あ、真央ちゃんのソチの曲」、ヴィヴァルディ「 ヴァイオリン協奏曲四季より冬」を聞くと、「宇野昌磨のショート」という具合。スケーターと結び付けて曲を認識する。
日ごろクラシック曲を聞くことが少ないお客が「無料」で聞けるならと、会場をはしごしているのですから、なじみの曲でも初めて聞く人もいたに違いない。そういうとき、原語より日本語で聞かせたほうが「オペラの曲っていいな」と思う人が増えたかもしれないのに。
とまれ、4会場30分ずつで合計2時間弱のコンサート、費用は旧奏楽堂入館料300円だけ。
無料大好きババによい一日になりました。
<つづく>