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ぽかぽか春庭「顔真卿展」

2019-03-17 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190317
ぽかぽか春庭アート散歩>春咲アート散歩2019(3)顔真卿展 in 東京国立博物館

 2月9日夕方から夜まで、東京国立博物館平成館で顔真卿展を見ました。書道史にうとい私、中国の歴史的な書家の名は王義之を知るだけで、顔真卿という名、今回の展覧会まで知りませんでした。
 地下鉄のホームに顔真卿展の大きなポスターが貼られていても、「どうせ字を見ても読めないし」と、あまり行く気分ではなかったのです。招待券も手に入らないし。

 今年の春節旅行ブームのあり様、「爆買い」から少々変化した、というニュースの中、中国人観光客のインタビューが出ていました。行き先は第一に上野の東京国立博物館、なんだそうです。「中国人が顔真卿を見る機会は今をおいてない。台北故宮にに旅行しても、顔真卿をいつも展示されているとは限らないので、日本で見ておくしかない」

 あらま、爆買いより先に見ておきたい顔真卿とはなんぞや。私の美術情報源「日曜美術館」で特集していました。

 顔真卿(がん しんけい709-785)は、唐代の政治家・書家・学者。孔子の弟子顔回の末裔にして著名な学者一族の出身。唐の玄宗楊貴妃の時代の人です。楊貴妃の親族、楊国忠が絶大な権力をふるっている時代で、玄宗は楊貴妃に溺れて政治を放り出し、やりたい放題の楊国忠は、実直な顔真卿をうとんじて左遷します。
 
 756年、安禄山の反乱が起こると、左遷されている身ながら、顔真卿は唐朝のために兵をあげ、軍功なって反乱をおさえることができました。しかし、ともに戦った一族の犠牲は大きく、顔真卿の一族顔杲卿とその息子顔季明は、戦いのさなか殺されてしまいました。

 この親子の死を悲しみ、顔真卿が書いたのが「祭姪文稿(さいてつぶんこう)」です。「姪」とは、日本語では兄弟姉妹の娘をさしますが、ここでは顔真卿の甥をさしています。

 顔真卿は、こののちも不遇がつづき、反乱軍説得の任をにつきます。反乱軍につかまって、唐を裏切り、反乱軍に加わるように言われても唐朝への忠義を貫き殺されてしまいました。以後、歴史上「忠臣の代表」として歴代皇帝からも篤く敬われてきました。

 王朝が変わると、散逸してしまうこともあったさまざまな皇室の宝物のなかでも、「祭姪文稿」は特に大切に受け継がれて、清朝の故宮にまで伝わりました。
 中国で共産党毛沢東と国民党蒋介石の内戦が起きたとき、蒋介石は故宮の宝物を何隻もの船に乗せて台湾に運びました。

 顔真卿の「祭姪文稿」も現在は台北の故宮博物館が所蔵していますから、大陸の顔真卿ファンがどれほど焦がれても、おいそれと見ることはかないません。台湾政府が中国にお宝を貸し出すことは、まずないでしょうから。
 それが、上野で見られる、と、解説されて、ようやく「これは見ておかなくちゃ」と、チケット買って見にいきました。一般券1600円。会期:2019年1月16日(水)―2月24日(日)

 中国と日本の書道史の流れがよくわかるような展示で、いろいろな書体の違いなども解説を読みながら、進んでいきます。古来の名筆が並んでいるのですが、むろん私には猫に小判。どれも美しい書体だなあと思うのみで、一目見てこれは王義之、これは空海などとわかりはしません。でも、美しい字に触れて、いつかそのうち書道をやってみたら、きっと今日見た字が絵心の栄養になっているに違いないと思ってみました。

 会場内でこれだけは撮影OKだった大きな拓本。唐玄宗筆《紀泰山銘》唐時代・開元14年(726)東京国立博物館蔵


 李家の四宝など、貴重な拓本もたくさん出ていました。長い中国の歴史のなか、王朝もかわると前代の貴重な品がなくなることも多く、元の石碑が失われてしまい、「拓本だけが残された」という名筆も少なくありません。紙ではのこらないけれど、石なら永遠に残る、と思っていたけれど、石も残らないなら、拓本もまた必需品。
 
 目玉の「祭姪文稿」。混むことは予想されていたので、2月9日土曜日の夜間開館にねらいを絞りましたが、夜になってもやっぱり混んでいました。閉館30分前に入場締め切りの時間がねらい目です。
 夜8:30-9:00に、ようやく落ち着いてみる時間がありました。

 顔真卿「祭姪文稿」安史の乱で殺された甥とその父を痛む文章の草稿です。筆が乱れたり書き直したりの跡が、いっそう顔真卿の悲しみの極みの心をよくあらわしている、として、中国の名筆の中でも第一級の名品とされています。ガラス越しですが、生で見ることができてよかった。日本語訳は、会場にも出ていましたし、ネットにもいろいろありますから省略。
 

 中国台湾両国にとって大切な宝ですから、相互に見ることができるような交流が成立するといいのですが、今のところそうもいかないらしく、日本で見ることができた私はらっき~。

 平成館ロビーの顔出しパネル。顔出したかったけれど、今回は撮影できず。


<つづく>
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