20210926
ぽかぽか春庭ニッポニアにっぽん語教師日誌>日本語教師養成講座(3)音読み訓読み
日本語教師志望者に、春庭老師が伝授する中国語母語話者学習者への漢字教育。
音読み訓読みの区別について、中国人学習者は、「少し中国語に近い読み方、訓読みは全然違う読み方」という理解をしていることが多い。
「中」はチュン>チュウ、だから音読み。でも「なか」は「チュン」と全然ちがう発音だから、訓読み。漢字ひとつのときは訓読みだから「へやの中へどうぞ」は、「へやのチュン」ではなくて「へやのなか」。でも、「7月の中頃」は、漢字がふたつあるけれど、「チュウごろ」ではなく、「なかごろ」
やはり、漢字の読み方は難問です。日本語母語話者は、小学校中学校の漢字教育で、音読み訓読みを叩き込まれてきます。「小学校」の小はショウで「小さい」のときは「しょうさい」ではなく、「ちいさい」となることは、義務教育修了者は学習してきます。
しかし、「音読み」は「おんよみ」と読むのか「おとよみ」なのか、日本語学習者は迷います。なかには、「漢字がふたつあるから、オンドクみ、かな」と思う学習者も。「み」がつかない「音読」だったら「オンドク」なんですけれど。
音。「オン」「オト」どちらが音読みで、どちらが訓読みか。区別の仕方があります。日本語教師志望者のほとんどは、音読みと訓読みの区別方法をしりません。ひとつひとつの漢字を習うときに音読み訓読みふたつ同時に学習するので、身についており、ひとつひとつの漢字について、音読みなのか訓読みなのか、迷ったことがないのです。では、日本語学習者に「音」の訓読みは「オト」で音読みは「オン」であると、どのように区別させたらよいのでしょうか。
区別の方法、春庭の日本語コラムでは何度も書いてきたことです。
「ツキイチクンウ 月一君宇」が、音読みの2つめの発音です。「オン」の二つ目「ン」は、「ツキイチクンウ」にあるから、音読み、しかし「オト」の二つ目は「ト」ですから、訓読みです。
ただし、例外がいくつか。「月」は「ゲツ」「ガツ」も二つ目は「ツ」ですから音読み。しかし、訓読みの「つき」も二つ目が「キ」です。「つき」は訓読みとおぼえてしまうしかない。
「毎日、かわりないですが、今日は 特別な日、たんじょう日です。わたしにとって、祝日です」
「日」ひとつでも、「にち、(きょう)、ひ、び、じつ」と、読み分けること、いとも簡単にできている日本語母語話者って、どれだけ小学校中学校の漢字テストで叩き込まれてきたのか、すごいなあと思います。
ひとつの文字の発音が、文脈によって変わっていくこと、当たり前に思っていることが、世界の文字教育のなかでは特殊なことであり、このような日本語の読み方ができることは、すごいこと、ひるがえれば、日本語学習者にとっては、学習が困難な点なのだ、と、日本語教師志望者にもわかってもらうことが漢字教育の第一歩。
2021年7月の授業中。

2009年の授業中写真と、2021年授業中写真、自分では見た目変わりなく授業を進めていると思えるのですが、さて、11年の差はどこにでているのか。
中国では中国語の意味の「老師ラオシー」でした。現在は日本語の文字通りの「老師ろうし」であるのは確かですが、声のでかさは変わっていないと思います。
このクラスの学生に「思いのほか」という語で短文を作らせたら、「最初にハル先生を見た時は、厳しい先生かと思ったけど、思いのほかやさしい先生だった」と「お世辞交じり」の文を作った学生がいました。この程度の「思いやり」を授業で発揮できるのも、中級の学生ならでは。いえいえ、老師の指導がよろしいのです。
<つづく>