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ぽかぽか春庭「モーゼスおばあさんの絵 in 世田谷美術館」

2022-01-09 00:00:01 | エッセイ、コラム

20220109
ぽかぽか春庭アート散歩>2022アート散歩新年(1)モーゼスおばあさんの絵 in 世田谷美術館

 2022年最初の美術館訪問は、世田谷美術館で開催されているモーゼスおばあさんの絵を見ることにしました。
 ぐるっとパスだけでは入場できないので、見るか見ないかしばし悩みましたが、正月くらいケチケチせずに、、、、といっても、私はシルバー券1300円、娘はぐるっとパス割引を使ってやはり1300円。ふたり合わせて2600円の出費.
我が家にとっては「正月の大盤振る舞い」です。

会期:2021.11.20 - 2022.02.27 
「生誕160年記念 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生」

 85歳のときのモーゼスおばあさん。
 世田谷美術館エントランスロビーの肖像画は撮影自由


 世田谷美術館の口上
 絵を描くおばあさんとして知られ、アメリカの国民的画家といわれるグランマ・モーゼス ことアンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860–1961)。農場の主婦であった彼女が絵筆をとったのは、70歳を過ぎてから。農場をとりまく風景や生活を素朴な筆致で描いた作品により人気作家となりますが、生涯、農家の主婦としての暮らしをまもり、101歳で亡くなる年まで描き続けました。「始めるのに遅すぎることはない」ということばに象徴されるその生き方を紹介します。

 アップルバター作り1947


 村中が集まって、収穫したりんごを煮詰めて絞り、アップルバターを作る。村の食糧確保の仕事ではあるが、お祭りのように楽しいコミュニティの行事です。

 アメリカに生まれ育った画家の中でも抜群の知名度と人気を誇るモーゼスおばあさん。専門的な美術教育を受けたことのない「素朴派」にくくられる画家のひとりです。モーゼスおばあさんが1960年に101歳で天に召されてから60年たち、その人気はますます高まっています。
 私は新宿の損保美術館で何枚かのモーゼス作品を見てきて、いつかはまとまった展示を見たいと念じてきましたが、モーゼスおばあさんが70歳になって絵を書き始めた年齢においついて、ようやく画業の全貌といえる展覧会にやってきました。

 シュガリングオフ


 メープルの木の樹液を集め、村中総出で大鍋で煮る。冬の終わりに春を待つ楽しいイベント。

 同じ世田谷美術館で昨年末に見た素朴派の塔本シスコの作品は、その原色鮮やかな色遣いが娘の感性には合わなかったのですが、今回のモーゼスおばあさんの色遣いは娘も気に入り、「チケット代1300円かかったけれど、きてよかった」というので、私も娘を誘ってよかった。

展示室内


 娘が特に気に入ったのは、モーゼスおばあさんが長年続けてきた「毛糸刺繍画」の展示です。おばあさんは、家族のセーターなどを編んだ余り毛糸を大切に保存し、その毛糸を布に刺繍した絵を制作してきたのです。この毛糸絵はことあるごとに友人や世話になった人にプレゼントしてきたということで、残されている作品は少ないのですが、何点か見ることができました。

 毛糸刺繍画「海辺のコテージ」1941


 毛糸のひと刺しひと刺しの丁寧な針によって、出来上がった刺繍画です。
 モーゼスおばあさんは70歳すぎて手が不自由になり針仕事が難しくなりました。そのため、針を絵筆に持ち替えてはじめたのが絵画だったのです。

 村のドラッグストアに飾られた絵に画商が目を止め、あれよあれよという間に個展が開かれ、美術館に買い取られ、大統領に招待されるまでになって、モーゼスおばあさんはアメリカで一番有名な高齢者になりました。

 キルティング・ビー1950


 キルティング・ビーは、小さな布の切れ端をつなぐキルティングを皆で共同して作り上げ、仕事の終わりにはみなでいっしょにごちそうを食べる楽しい集まり。

 しかし、有名になってもモーゼスおばあさんはこれまで通り、りんごを絞ってジュースを作り、蜜蝋からろうそくを作り、孫のワンピースを縫い、日々の農家の主婦の生活を変えませんでした。孫のために作った服やポーチが展示されていました。きっと家族が大切にとっておいたものなのでしょう。

 そうして101歳のときまで絵筆を持ち続け、描きたいことをかいて大往生。ほんとうに見事な一生です。

 絵ハガキを買った一枚。「魔女」1950


 ハロウィーンのとき現れるという魔女を描いています。小屋のには前には、とりいれられたカボチャが積まれ、魔女への備えも万全。

 世田谷美術館には、絵筆をとる前の毛糸刺繍画から、70歳代の作品、100歳の作品までたくさんの絵が展示されていました。
 おばあさんが生きた時代の農家の暮らし、お祭り、家族の集まり、さまざまな出来事が生き生きとした表現の中に現れています。

第1章「アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス」
第2章「仕事と幸せと」
第3章「季節ごとのお祝い」
第4章「美しき世界」 

 素朴派の特徴ともいえる、細かいモチーフを丹念に描き込み、鶏も牛も馬車も、人々の暮らしの中で精いっぱいの生を謳歌しているようでした。構図としては、手前に動物や人物、なかほどに田畑、遠景に山、というモチーフが多く、美術学校などで遠近法とかを学んだ人の目からみると、手前と奥の動物や人物の尺度がちぐはぐなこともあるのでしょうが、おばあさんの目にはそのように見えて、そのように描きたかったのだから、いいんだと思います。


 娘はいつものようにクリアファイルを買い、私は絵ハガキを数枚買いました。モーゼスおばあさんのおかげで、よい正月になりました。


<つづく>
コメント (2)
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