▲宿の向かいの森の先にあるものは…。
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大曲の翌日。いつもなら軽く温泉でもひっかけて東京に戻るのだが、今回は温泉に1泊することにした。ということでゆっくり出発。宿泊費が余計にかかるので、移動は秋田新幹線ではなく、田沢湖線各駅停車で行く(3倍違うのだよ、これが)。
田沢湖駅で下車し、バスで乳頭温泉へ向かう。宿に向かう前にやっぱり軽く温泉をひっかけようと…。終点からさらに奥に行った蟹場(がにば)温泉へ。
乳頭温泉郷のポスターにはよく鶴の湯の混浴温泉(中の湯)が使われるが、次いで使われるのがこの蟹場温泉の露天風呂である(やはり混浴)。以前入ったことがあるが、鶴の湯よりもお湯が透明な分(日によって濁るらしいが)、羞恥度ハードルは高い。
今回は、そちらが目的ではなく、自称「白鳥の湯」へ(勝手に命名)
▲蟹場温泉「木の湯」
何年か前に来たときは結構混雑していたのだが、午後も回ったからか先客は2名のみ。その2名も早々に上がって行ってしまい、貸切になった。
勝手に「白鳥の湯」と別称しているのは、ここの湯の花がまるで羽が生えたみたいになるからである。
▲写真だとよく分からないかな~。白い湯の花が舞っている
この湯船に身を沈めると、ちょっと腕を動かすだけで、この湯の花が体の周りをふわふわと舞うのだ。もう、夢心地である。貸切ですっかり大満喫してしまい、隣の「黒鳥の湯」と勝手に読んでいる「石の湯」に入り損ねた(笑)
とはいえ、前に来たときにはなかった女性専用露天風呂を見つけて、とりあえず数分だけ浸かってみた。ウン、いいんだけどね、東屋がないと日焼けしちゃうのがちょっとなぁ…。
皆さん、露天風呂に東屋は必須ですよ。
▲宿の脇の流れる沢にはオタマジャクシがいっぱい。温泉が流れ込んでいて温かいからかな~
▲蟹場温泉の近くから鶴の湯までのハイキングコースがあるのだが、年々荒れていっているような気がしてならない。いつか歩いて行ってみたいのだけど…。
乳頭温泉郷は山の上にある。季節はまだ春の様相で、タムシバやミツバツツジ・ウワミズザクラなどが咲いていた。残雪の脇からはふうきんとう(秋田ではバッケ)がまだ芽出したばかりといった様相。
そんな中、バスに乗って山を下る。
▲車窓に映るブナの新緑が美しい
▲秋田駒ヶ岳。火山である。花の名山である。この日が山開きで、大勢の登山客を見かけた。ただ、雪渓で滑落した人が亡くなったらしい。合掌。
乳頭温泉郷は秋田駒ヶ岳を中心とする山々の裾にある。秋田駒ヶ岳の周辺には乳頭温泉郷以外にもいい温泉が点在している。
その温泉地を下って、水沢温泉のひとつ先でバスを降りる、バス停から宿までは約700m。宿からバス停まで迎えに来てもらった。
▲今夜の宿「駒ヶ岳温泉」。「鶴の湯」の系列である。
全部で9室しかない「駒ヶ岳温泉」が今晩のお宿。楽天で予約できた「かえでの間」はひとり泊できる部屋。トイレがなくたって平気さって思っていたんだけど…。
なんとお部屋のグレードアップ! トイレ付の「えんじゅの間」に変えていただきました(料金そのまま)。ネットの書き込みでも同じ対応をされた方がいて、ふーんそういうこともあるんだぁって思っていたら、まさかの待遇でいきなりテンション上がる! 日曜宿泊でお部屋が空いていたのが幸いだったようだ。
▲渓流沿いの眺めの良いえんじゅの間
ちなみにこの日の宿泊客は5組8名であった。
実は、蟹場温泉後の汗がまだ全然ひかず、しばしお部屋でクールダウン。この日から東京では酷暑だったようだが、渓流を渡る風は涼しく心地よい。
※ちなみに、夜全く静かじゃないと眠れない人にはお勧めできません。結構派手に渓流音が響くので。国道と鉄道と川に挟まれて育った私には何の問題もないのだけど。
最初は「鶴の湯」に泊まろうかと思ったのだけど(ここも一人で宿泊可)、部屋にテレビがないのがなんとも…。テレビを時計代わりにつけっぱなしにしているのよね、いつも。
ところがこのテレビ付きの部屋に入ってから結局夜遅くまでテレビをつけることはなく、テレビは不要だったんだな、これが。
部屋に備え付けの冷たい地下水をぐびぐび飲んで温泉へ向かう。
▲内風呂(夜版)。湯量たっぷりの100%源泉がかけ流し。
日曜の夕方、この広い温泉に先客は2名。壁の向こうの男湯でも音からおそらく1、2名程度の利用客。日帰り温泉はまだ受け付けているというに、こんなに贅沢に温泉に浸かっていいのだろうかという状態であった。
大きな浴槽に身を沈め、たっぷりの温泉を体にまとわせる。あふれたお湯も音なく流れていく。なんだかあちこちに気遣いが息づいている感じの浴槽だ。
▲内風呂(朝版)天井を高く取ることで湯気を逃がし、快適な空間を作っている。洗い場と浴槽の間にある大木はケヤキかな…。
ここは自家源泉を有し、湯口で初めて空気と触れるという湯の提供方法を取っているそうだ。温泉パワーがダイレクト! 泉質は、カルシウム・マグネシム・ナトリウム・硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉 と超長い(苦笑)。細かい湯の花はすぐに沈むタイプで、湯船の底で青白く光っている。水面にはその湯の花が反射して水白色に見える。
ちなみに、浴槽の縁には湯の花が固まってうっかり座ろうとすると「あいたたたっ」となることも。
▲内風呂併設の露天風呂。右手に打たせ湯もある。気持ち良い
渓流沿いの露天風呂。対岸は杉林で、お風呂を覆うように高いサワグルミの木が立っている。男湯の傍らにはホウノキもあった。花は咲いていなかった。残念。
ちょうどサワグルミの花の時期らしく、花が湯船に落ちている。
これ、事情を知らない女子が見たらちょっとした騒ぎだよなぁ…。要は見た目が毛虫っぽい花なのである。まぁ、今日はそんな女子がいないからいいかぁ。(夕食時にカップルで若い女性がいたことに気付くがお風呂で一緒になることはなかった)
▲内風呂の入口の広々としたホール。奥にマッサージ機が3台置いてあるだけ。あとキジのはく製もいます。
▲宿泊者専用貸切露天風呂。二つあって、カギがかかっていなければ使用可。脱衣場もしっかり木造りで気持ちよい
宿泊者専用貸切露天風呂がふたつある(無料)。入口に脱衣かごと足ふきマットがあり、これがあると空いているという合図。ちょうど一つ空いていたのでウキウキとかごを持って貸切露天風呂に向かうと…。
見知らぬおっさんがカギもかけずに「いい湯だな」状態。幸い、湯船に入っていたのでこちらも被害(?)なし。というか、おっさん鍵掛けろよな~。
どうやら日帰り入浴で来ていたおっさんが空いているからシメシメと入り込んだらしい。
▲一つのお風呂は六角形。やや深めな浴槽は好み。
時間を変えて再度チャレンジ。ちょっと脱衣場のカギが甘いのが気になったけれど、お風呂に飛び込む。ちなみに貸切露店風呂には洗い場はない。
解放感抜群である。背後は脱衣場で目隠しされ、目の前は渓流と森のみ。つい土仁王立ちしたくなる(笑)。涼しげな水の音と、優しげな春ゼミの声がいい感じである。
ひと休みして明るいうちに夕食。
一つ言っておきたい。秋田の温泉は腹が減る(笑)。
▲ブナの酵母を使用した日本唯一の秘湯ビール。店売りはしていないらしい。
前夜、2次会までだからと(自分の取り決め)むしろピッチを上げて呑んでいたから今日はアルコール抜きで行こうと思ったのだが、「秘湯ビール」の文字を見て誘惑されてみる(笑)。
▲イワナと田沢湖サーモンの刺し身…と言っていたような…
前菜、刺し身と進んで、焼き魚(銀むつと言っていたか)が出てきたところで、たまらずご飯オーダー。ご飯はいつでも自由にどうぞという言葉がありがたい。ところが、これが思わぬ事態に…。
その後、八幡平ポークの塩麹焼、最初に火をつけた海鮮のにんにくみそ焼き、そして山の芋鍋と出てきた。鍋の時点で結構おなか一杯に…。そして私の目の前には明らかにそば猪口に入った汁が…。
とどめの十割そば来た~! ご飯をパクパク食べた手前、おなかいっぱいで食べられませんとは言えず、無理やり啜り上げたよ。苦しかった~。
地元の人にもおいしいからって言われていたのに、もう食べ切ることに必死でそれどころではありませんでした。実はへぎそばの地の生まれなので、十割そはばあまり得意ではないというのもあるのだけど…。
▲〆は十割そば コニーもおいしいと言っていたのに…。
というか、ここの夕食メニュー、何も言わなければご飯出さないのだね。それでもおなか一杯と人は言うのに、私ったらご飯まで食べてはらくっちゃくて苦しい状態…。
さらに、手作りのリンゴのケーキとアイスが出てきたよ。はいはい、デザートは別腹ねっ! って結構傷口に塩を塗り込まれた気分だった…。
部屋に戻って、とりあえず休む。久々にこんなに苦しくなるまで食べた。
すこ~し寝て、夜8時近く。
むくっと起き上がり、湯道具を持って階下に向かう。これから鶴の湯温泉行である。
この駒ヶ岳温泉は鶴の湯系列。夜、入浴バスが運行されるのである。もちろん無料。
そりゃ行くでしょ。
▲夜の鶴の湯、昼の喧騒は消えている。
駒ヶ岳温泉の宿泊客多分全員を乗せ、山を上る。途中、やはり鶴の湯系列の「山の宿」で同じく入浴客を乗せて鶴の湯に到着。
入浴時間は約1時間。急いで温泉へ。
貴重な時間、あわただしく温泉に入るのも無粋である。ここは黒湯の露天風呂に狙いを定め、突入。満天の星の下、広々とした白濁の温泉にずぶずぶ浸かる。
ところがこの露天風呂がぬるい。あれ、確かこのお風呂ってお尻の下から直に温泉が湧く所だよなぁと辺りをウロウロするが、湧き出しポイントがほとんどないことに気付く。だいぶ経ってから1カ所ほど湧き出しポイントを見つけたのだが、昔ほど勢いがない。源泉枯れつつあるのだろうか…。
黒湯の内湯にも浸かり、やっぱり白湯にも入る(笑)。
▲鶴の湯の白湯。ここだけ貸し切りだった。
あっという間に時間となり、あわててバスに戻る。
宿に戻ったら、スタッフが変わっていた。夜番はおじさんらしい。そのおじさんがバスタオル変えますよってフロントで声をかけてくれた。すごいサービスいいなぁ~。
部屋でまたもや休憩タイム。
おそらくほとんどの人はこれで寝たのだろうが、私はしつこく夜中の温泉へ。頭を洗ってスッキリである。あの広い内湯が完全貸し切りであった。男湯にも誰もいない様子だったし、なんと贅沢な時間なのだろう。
そして就寝。
日頃寝つきの悪い私だが、すとんと落ちた。
起床! 朝から元気に温泉へ。間違いなくいちばん風呂であった。
部屋でひと休みして朝ごはん。
そしてチェックアウト前にもうひとっぷろ。最後まで温泉に浸かってきた達成感がある。
9時半ごろに宿を出る。お世話になりました。
帰路はバス停まで歩くことに。
まずは宿の向かいの滝を見に行く。友情の滝というらしいが、自然保護区表示では十丈の滝とも表示がある。これは同じ滝なのか別の滝なのか…(どうも別の滝らしい)。
▲友情の滝
緑に覆われた二筋の滝である。マイナスイオンたっぷりの飛沫がふわふわと周囲を舞い、木漏れ日にキラキラ反射する。
未舗装路をゆっくり下りていく。ブナの森と杉の森とがあり、その林床にはシダなどがびっちりと緑のじゅうたんを広げていた。空気まで緑色になりそうな感じである。
▲トチノキの花が咲いていた
▲アマドコロ見つけた。もう終わりかけで、これしか残っていなかったけれど
▲ようやくホウノキの花を見つけた
満開のタニウツギに見送られながら、バスで山を下りた。
▲秋田新幹線の車窓より。右に岩手山。そこから左に大松倉山、三ツ石山とずっと山の稜線が続いている。実は八幡平から岩手山まで山を歩く商品に関わったことがあるのだが、結局売れたのだろうか…。