2019年2月に見たい展覧会【小原古邨/もうひとつの建築史/奇想の系譜】

1月を終え、関東では乾燥した寒い日が続き、インフルエンザも猛威を振るっています。私の周りでも体調を崩される方が少なくありませんが、いかがお過ごしでしょうか。

森アーツではじまった「新・北斎展」が、会期早々より人気を集め、土日を中心に30分程度の待ち時間が発生しています。また東京国立博物館の「顔真卿」も、入場待ちこそないものの、奇跡の来日とされる「祭姪文稿」の観覧に際しては、平日でも数十分待ちとなっています。会期も2月24日までと短いこともあり、後半はさらに混雑するかもしれません。


先日、入館者が60万名を超えた、上野の森美術館での「フェルメール展」が、間もなく閉幕を迎えようとしています。2月3日に東京展が終了し、作品を一部入れ替え、2月16日から大阪市立美術館で巡回展がスタートします。東京には出なかった「恋文」も公開されることもあり、大阪でご覧になる方も多いかもしれません。

2月に見たい展覧会をリストアップしてみました。 

展覧会

・「特別展 筑前左文字の名刀」 刀剣博物館(~2/11)
・「あざみ野フォト・アニュアル 長島有里枝展」 横浜市民ギャラリーあざみ野(~2/24)
・「第11回恵比寿映像祭」 東京都写真美術館(2/8~2/24)
・「ブラティスラヴァ世界絵本原画展 BIBで出会う絵本のいま」 千葉市美術館(~3/3)
・「江戸の園芸熱 浮世絵に見る庶民の草花愛」 たばこと塩の博物館(~3/10)
・「神に捧げた刀―神と刀の二千年」 國學院大学博物館(~3/16)
・「光悦と光琳—琳派の美」 畠山記念館(~3/17)
・「子どものための建築と空間展」 パナソニック汐留ミュージアム(~3/24)
・「石川直樹 この星の光の地図を写す」 東京オペラシティ アートギャラリー(~3/24)
・「小原古邨」 太田記念美術館(2/1~3/24)
・「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」 埼玉県立近代美術館(2/2~3/24)
・「闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s」 アーツ前橋(2/2~3/24)
・「生誕130年記念 奥村土牛」 山種美術館(2/2~3/31)
・「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」 高崎市美術館(2/2~3/31)
・「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」 サントリー美術館(2/6~3/31)
・「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」 東京都庭園美術館(~4/7)
・「太田の美術vol.2 生誕100年 飯塚小玕齋展―絵画から竹工芸の道へ」 太田市美術館・図書館(2/2~4/7)
・「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」 東京都美術館(2/9~4/7)
・「三井家のおひなさま」 三井記念美術館(2/9~4/7)
・「クマのプーさん展」 Bunkamuraザ・ミュージアム(2/9~4/14)
・「第22回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」 川崎市岡本太郎美術館(2/15~4/14)
・「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」 東京ステーションギャラリー(2/16~4/14)
・「ラリック・エレガンス 宝飾とガラスのモダニティ」 練馬区立美術館(2/24~4/21)
・「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」 国立西洋美術館(2/19~5/19)
・「六本木クロッシング2019展:つないでみる」 森美術館(2/9~5/26)

ギャラリー

・「ピアニスト 向井山朋子展」 メゾンエルメス(2/5~2/28)
・「GOTO AKI 写真展:terra」 キヤノンギャラリーS(~3/4)
・「ソフィ・カル なぜなら」 ギャラリー小柳(2/2~3/5)
・「ソフィ・カル MY MOTHER, MY CAT, MY FATHER, IN THAT ORDER」 ギャラリーペロタン東京(2/2~3/10)
・「マリオ・ガルシア・トレス」 タカ・イシイギャラリー東京(2/23~3/16)
・「絵と、 vol.5 中村一美」 ギャラリーαM(~3/23)
・「ポーラ・シェア:Serious Play」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(2/4~3/25)
・「光るグラフィック展2」 クリエイションギャラリーG8(2/22~3/28)
・「天明屋尚 国津神」 ミヅマアートギャラリー(2/27~3/30)

まずは日本美術です。昨年の茅ヶ崎の展覧会以来、再び脚光を浴びるかもしれません。太田記念美術館にて「小原古邨」展がはじまります。



「小原古邨」@太田記念美術館(2/1~3/24)

明治に生まれた絵師、小原古邨は、主に輸出を踏まえた版下絵を手がけ、花鳥風月を表した木版画にて、特に海外で人気を博しました。

一方、国内での知名度は必ずしも高くありませんでしたが、つい昨年、茅ヶ崎市美術館にて大規模な回顧展が開催され、会期終盤には入場規制が行われるほどに話題を集めました。


その小原古邨が、今度は東京でまとめて紹介されます。出展は全150点で、前後期での全点入れ替え制です。既に茅ヶ崎でご覧になった方も少なくないかもしれませんが、基本的に「出品作品が異なる別内容の展覧会」(公式サイトより)であるそうです。私も茅ヶ崎で古邨の作品を殆ど初めて知り、大いに引かれましたが、改めて見てきたいと思います。

続いては建築です。埼玉県立近代美術館にて「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」が開催されます。



「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」@埼玉県立近代美術館(2/2~3/24)

これは様々な条件によって完成し得なかった、あるいは提案の段階で留められた、アンビルト、つまり未完の建築に着目した展覧会で、約40人の建築家、美術家による「インポッシブル・アーキテクチャー」に関した資料が展示されます。


ザハ・ハディドや安藤忠雄、磯崎新をはじめとした建築家のみならず、岡本太郎にカジミール・マレーヴィチ、はたまた会田誠や山口晃らといった、美術家を複数取り上げているのも特徴ではないでしょうか。あえて不可能に目を向けた、異色の建築展と呼べるかもしれません。

今年前半の日本美術展の中でも、特に話題を集めるのではないでしょうか。東京都美術館にて「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」が行われます。



「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」@東京都美術館(2/9~4/7)

1970年、美術史家の辻惟雄氏が著した「奇想の系譜」は、当時の江戸絵画の傍流とされた画家を取り上げ、以来、人々に昨今の若冲ブームならぬ、新たな江戸絵画への関心を呼び起こしました。


今回の展覧会では、奇想の画家、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に加え、白隠慧鶴と鈴木其一を取り上げられます。新出や海外からの里帰り作も少なくなく、また新たに江戸絵画の魅力に接する絶好の機会となりそうです。

なお今月中に行けるかどうか未定ですが、群馬県内の3館の展示、太田市美術館・図書館の「飯塚小玕齋展」、アーツ前橋の「アジアの木版画運動 1930s-2010s」、高崎市美術館の「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」もあわせて見てくるつもりです。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
   次ページ »