「2019 MOMASコレクション第4期 特別展示:瑛九の部屋」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
「2019 MOMASコレクション第4期 特別展示:瑛九の部屋」
2019/1/12~4/14



埼玉県立近代美術館で開催中の「2019 MOMASコレクション第4期 特別展示:瑛九の部屋」を見てきました。

1911年に宮崎に生まれ、画家や版画家、写真家としても活動した瑛九(1911〜1960)は、晩年、浦和に移住し、精力的に制作を行いました。

瑛九の重要な作品の1つに、浦和の地で描いた「田園」がありました。細かな色彩の点描の広がる抽象画ながらも、まるで空には太陽が輝き、下には大地が広がっているようでもあり、まさに長閑な田園を前にしたかのような趣きをたたえていました。


瑛九「田園」 1959年 *特別出品:加藤南枝氏蔵

そして現在、「田園」は、同美術館にて、ただ1つ、ある仕掛けを施した、独立の暗室にて公開されています。

その仕掛けとは、鑑賞者が、自由に明かりをコントロール出来ることでした。暗室の正面に「田園」があり、照明が当てられていましたが、手元の白いつまみを左右に回すと、それぞれ照明が暗くなったり、明るくなったりしました。つまりお好みの光の強さを調整して、「田園」を見られるわけでした。

これは「田園」を所有する、加藤南枝氏の発案で、1975年から1980年にかけ、日本とアメリカで企画した「ライト・デザイン」を引き継ぐものでした。

「私が長い時間をかけて発見した田園の魅力を、短い時間での劇的な経験として体験できるようにと考え出したのが、ライト・デッサンだった。」 加藤南枝 *解説より

私も実際につまみを動かし、照度を上げたり下げたりしましたが、当然ながら光の加減で作品の表情はかなり変化しました。明るいと色彩が華やぎ、より1つ1つの粒が飛び出してくるようでもあり、一方で暗くすると、色彩は沈み込み、何やら宇宙に瞬く星屑のようにも見えました。



さて瑛九に関した展示は「田園」のみに留まりません。さらに「瑛九と光春ーイメージの版/層」と題し、近年収集した瑛九の油彩、フォト・デザイン、コラージュのほか、瑛九の生涯の友人で、評伝を著した山田光春のガラス絵や素描も公開していました。

瑛九を中心に、両者の作品、資料を合わせると約80点にもおよび、1つの瑛九の企画展として捉えても差し支えないかもしれません。


ポール・シニャック「アニエールの河岸」 1885年 埼玉県立近代美術館

このほかにも、コレクション展として、新たに収蔵されたポール・シニャックの「アニエールの河岸」も初めてのお披露目となりました。シニャックが青年時代の1885年に制作した作品で、パリの近郊の町、アニエールを流れるセーヌ川を、ちょうど河岸の際に立って俯瞰するように捉えていました。川面のサーモンピンクが殊更に美しく、細かな色彩の筆触は、どこか瑛九の「田園」とも響きあうかもしれません。

なお同作は、昨年、埼玉県が2億9000万円で購入したもので、県が議決を必要とする7000万円以上の高額の絵画としては、1997年のシャガールの「二つの花束」以来のことになります。


「特別展示:瑛九の部屋」を含むコレクション展は、企画展の「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」のチケットでも観覧可能です。お見逃しなきようにおすすめします。

4月14日まで開催されています。

「2019 MOMASコレクション第4期 特別展示:瑛九の部屋」 埼玉県立近代美術館@momas_kouhou
会期:2019年1月12日 (土) ~4月14日 (日)
休館:月曜日。但し2月11日は開館。
時間:10:00~17:30 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般200(120)円 、大高生100(60)円、中学生以下は無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *企画展チケットで観覧可。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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