「山口晃 昼ぬ修羅」 横浜能楽堂

横浜能楽堂
「山口晃 昼ぬ修羅」 
2019/1/19~3/23



横浜能楽堂で開催中の「山口晃 昼ぬ修羅」を見てきました。

かねてより能では、源平の武将らを主人公に、合戦の有様を描きつつ、人間の苦悩を表現した「修羅物」が演じられてきました。一方で現代美術家の山口晃も、中世の武士を現代に置き換えたような、時空の入り混じった合戦図などを制作してきました。

その修羅をテーマとしたのが、「昼ぬ修羅」と題した個展で、展示廊に留まらず、能楽堂の全体のスペースを用いてインスタレーションを展開していました。



梅の樹のオブジェの配された能舞台もインスタレーションの一環でした。見所、いわゆる客席に目を転じると、多くの弓が置かれていることがわかりました。



それらはまるで波を描くように弓は連なっていて、古くから日本に伝わり、能の装束にも取り入られた、青海波を意味していました。また耳を傾けると、能舞台では通常、聞き得ない音が響いていることに気づきました。元来、能舞台は屋外にあったとされていて、山口は見所を海に見立てたのかもしれません。



2階の展示廊では、山口の新旧の絵画が展示されていました。いずれも「洞穴の頼朝」や「西海」などの源平の合戦や武者、あるいは「波の結晶」といった水や波などをモチーフにした作品で、能楽堂の備品と入り混じるように置かれていました。



これらは山口が能楽堂の収蔵庫から取り出してきたもので、能面に榊、そしてお茶を入れるようなポットや盥、さらには館内案内板などもありました。



絵画と備品との関係は必ずしも明らかではありませんが、備品の一部がまるで武士の刀に見えるなど、時に相互に意味を持ち得ているかのようでした。



なお武士が波に揉まれ、海中に沈む姿を描いた新作の「入水清経」は、まだ完成していませんでした。会期中、随時、手が加えられ、会期末までには出来上がるそうです。



2階の休憩室のインスタレーションも見逃せません。タイトルは「与一の景」で、備品によるバリケードの向こうに、金屏風を背にしたテーブルセットが設えていました。そして煌々と明かりがついていたものの、宴席には人の気配がなく、終始、無人でした。



これは怪談の「耳なし与一」をテーマにした作品で、盲目の琵琶法師の与一が琵琶を演奏した場所が、実は鬼火に囲まれた平家一門の墓場であったことに由来していました。つまり無人のテーブルセットは墓場の宴席であり、バリケードは此岸と彼岸の境界であることを意味していたようでした。



受付に出品一覧と館内案内図が用意されていて、大まかな展示位置は分かりますが、キャプションは一切なく、ともすれば見落としてしまうような作品も少なからずありました。率直なところ、今でも全ての作品を鑑賞出来たのか自信がありません。



山口の作品世界をどう捉えるかについては、あくまでも見る側に委ねられているようです。何やら謎かけを目の当たりにしているかのようでした。

最後に観覧に際した注意事項です。会期は3月23日まで続きますが、開館日の全ての時間で自由に見学出来るわけではありません。



休館日はもちろん、開館日においても、有料公演が開催される際は、舞台のチケットが必要です。また施設使用時には、一部の作品が見られない場合があります。

公式サイトに入場可能な日と時間についての案内が掲載されています。必ず事前に公開日時を確認の上、お出かけ下さい。(現在のところ、2月15日までのスケジュールが公開中。)


「特別展 山口晃 昼ぬ修羅 ご入場可能な日と時間について」横浜能楽堂

会場の横浜能楽堂は、桜木町駅より紅葉坂を上がり、右手へ折れた、掃部山公園の中にあります。みなとみらいを一望出来る高台に位置し、正面が神奈川県立図書館でした。



桜木町駅から歩いて15分ほどでしたが、横浜美術館からもランドマークタワーなどを経由して、おおよそ20分強でした。横浜美術館へお出かけの際に立ち寄るのも良さそうです。



観覧は無料です。(ただし舞台有料公演時はチケットが必要。)3月23日まで開催されています。

「山口晃 昼ぬ修羅」 横浜能楽堂@YokohamaNogakud
会期:2019年1月19日(木)~3月23日(土)
休館:1月21日(月)、28日(月)、2月4日(月)、5日(火)、6日(水)、26日(火)、3月4日(月)、5日(火)、6日(水).
 *施設使用時には一部の作品が観覧不可。
時間:9:00~20:00
料金:無料。但し本舞台有料公演時は舞台チケットが必要。
住所:横浜市西区紅葉ケ丘27-2
交通:JR線・市営地下鉄線桜木町駅より徒歩15分。京浜急行線日ノ出町駅より徒歩18分。
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