死んだ父親と母親の遺品が今頃になってごそっと送られてきて整理をしていると、文才のあったお袋の詩や俳句、短歌があった。
油蝉
日なたくさい乾いた匂いにむせんで
すべっこい肩が栗色に焼けて光って
キラキラした目で油蝉をつかんで来た。
ギ・ジジジーと わめく蝉のほか
なんにも彼の目には入らないで
ただ 私を見上げて
生えかわったばかりの白い前歯を見せて
ニッと笑った。
長い敏捷な脚と傷だらけの細い腕だけで
雑木林を馳せ巡って枝を叩き
乾いた道に砂埃をけたて
余多の仲間を唖然とさせて 帰ってきた。
跳ねろ、
飛べ。
お前の少年時代は一度しかない。
羽ばたきする背をつまみ
じっと耳にあて 目を細くして
今。
恍惚悦にいる吾子。
☆☆☆☆
昭和46年だから、弟とのできごと描写だろう………。 こんな愛情に包まれてアタシ達は育まれてきたんだなあと、いい歳してホロリとしてしまったよ。
オフクロ、ありがとう。合掌……。