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ラグビーW杯が否が応でも盛り上がっている。もうラグビー観戦を初めて50年くらいになるが、見ていてこれだけ力が入り、声が出てしまう競技はあまりない。また、もう一つ言えることはサッカーや野球のように1対0の勝利がない。これは点数のことではなく、ラッキーな勝利がないということである。前半のスコアでは強いチームが負けていても最後にはやはり実力のあるチームが勝利を掴み取るということである。
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前回の東京大会とは随分ルールが変わった。攻撃では『50.22』、まだ試験実施のルールだが、攻撃側が50mライン(ハーフライン)より後ろから蹴り出したボールが敵陣22mより先に1バウンドで出た場合は攻撃側がラインナウトのボールを投入できるというものである。実際にゲームを見ていても中々成功しない難しいキックである。
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しかし、大きく変わったのは〝危険な行為への厳罰〟がある。元々ハイタックルには厳しかったり、ノーバインドにはイエローカードが出されてはいたが、やはり脳震盪など今後の生活に支障をきたす様なプレイの撲滅ということで『バンカー』というルールができた。
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これはイエローカードを受けた選手の行為がレッドカードに当たるかをレフェリー以外の審判が再検証するルールで日本vsサモアの試合でもサモアの選手がラブスカフニへの反則がレッドカードの適用になるなどかなり厳しい対応が為されている。
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当然、退場者が出た場合はかなり不利な戦いを強いられる。わざとやったわけではないが、サモアとの親善試合でリーチが前半30分レッドカードで退場、フィジー戦もラブスカフニが前半7分同様にレッドカードで退場している。この2つの試合の教訓が今回の試合では各所に生かされている。ハイボールを取りに行く時に空中でタックルとならない様に気をつけたり、ノーバインドのタックルは避け、また掛ける方は怖いが低いタックルを実践しているなど、規律が取れた試合となっている。
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もう一つはプレスキックの成功数と成功率である。サモア戦は日本の松田選手のプレスキックが6本中5本、3試合累計で16本中15本が成功している。サモアがSOのリアリーファーノのプレスキックが不調でキッカーを変更したのとは対照的である。結果としてみるとトライ数はお互い3、ゴール数も2だが、PGは日本が3、サモアが1とここでの差がそのまま得点差となったのである。
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個人の力を見ると1人での突破力はサモアの方が上かもしれないが、日本は組織力、練習量で勝利を掴んだといえる。
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アルゼンチンはFWの力がさらに上を行く。派手さはないが、オーソドクスな試合展開をしてくるチームである。チリ戦は予想通り力の差を見せつけた。
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日本はまずは序盤でスクラムを優位に立つか、少なくとも五分で組めるかがやはりキーになる様に思える。日本チームの第三列の活躍は素晴らしい。これをうまくバックスに繋ぎ、サモア戦では幻に終わったWTB松島のトライを見てみたい。