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切手シリーズ その37。今回は加刷をされた記念切手を取り上げる。加刷とは一度印刷した切手の上にさらに図案や数字・文字などを印刷を重ねることで加捺とも言う。
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加刷と一口で言うが、実はその理由は様々である。日本の切手で最初に加刷されたのは在外局の支那字入、朝鮮字入加刷切手で明治時代に発行されたもの。朝鮮字入は1901年3月、支那字入は1921年12月に発行を取りやめている。
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この発行の理由は日本と在外局で等価で切手を発行したところ、日本通貨より価値の低い現地通貨で切手を買い、日本で売る商売が蔓延ったため、これを規制する目的で菊切手などに加刷したものである。この種の切手には偽物が多く、注意を要する。( 他にも海外占領地で現地切手に加刷したものや軍事と加刷された軍事切手もある。青島軍事は偽物が多いことで有名。)
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では最初に加刷された記念切手はというと1900年5月に発行された大正天皇婚儀記念切手で先ほどの『支那』、『朝鮮』が加刷されたものである。
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つぎは有名な切手で1919年10月に発行された飛行郵便試験記念の切手。普通切手(旧大正毛紙切手)の1 1/2銭に赤の飛行機、3銭に黒の飛行機を石版加刷したもの。実はこの発行には飛行機は間に合わなかったのだが、1 1/2銭が5万枚、3銭が3万枚しか発行されたかったため、今も大変高額で取引されている。
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次は1942年2月のシンガポール陥落記念でこれは当時の普通切手に『シンガポール陥落 +1』と2銭の乃木大将の切手には黒で加刷、同じく『シンガポール陥落+2』と4銭の東郷元帥の切手には赤で加刷され、それぞれの数字の部分が寄付金で売価は3銭と6銭であった。
以上の二つはいずれも切手の新たな印刷が間に合わず、既存の普通切手に加刷したものである。
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他にも加刷されたものとして1948年4月発行の北斎100年祭記念切手が挙げられる。これは1947年11月発行の切手趣味週間の小型シートに赤字で加刷されたもの。この小型シートは当時としては桁違いの287万枚発行したが、売れ残り、その処理として北斎100年祭記念として12万枚発行されたが、前者はカタログ価格で600円だが、後者は3000円する。
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同じく1948年3月の三島切手展記念切手も1948年3月の大阪逓信展記念切手に緑で加刷されたもの。やはりこれも大阪はカタログ価格で1700円だが、三島は9000円もする。
当時は、全国の切手展で記念切手が発行されたが、乱発という批判が強かったが、特にこのケースは開催地にかなり失礼な気がする。
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あと記念切手ではないが、戦後初めての総選挙となった1949年1月の第24回衆議院議員選挙で候補者1人につき1000枚の選挙切手が交付されたことがある。当時の封書の郵便料金である2円農婦の図案の切手に赤で選挙事務と加刷されたものである。官製はがきに交換することもできたが、実際に使用することもできた。ただ、この制度はこの一回だけでその後は行われていない。この切手自体はあまり高価ではない(販売価格80円程度)が、実逓(実際に使用されたエンタイア)はかなり高額で取引されている。
実は日本で加刷された記念切手はこれだけであるが、いずれもあわてて発行したものが多いようである。